世界で勝てるのか!? 日本の鉄道インフラ技術:知財コンサルタントが教える業界事情(1)(2/4 ページ)
日本企業と世界トップ企業との違いがパテント調査で浮かび上がる。第1回は輸出競争が激化する鉄道インフラをリサーチ!
鉄道大国へ躍進する中国
まずは、図2の各国の鉄道関連特許件数推移(縦棒グラフ)をご覧いただきたいと思います(推移は発行年ベースで整理)。
まずは、グラフのうち、各国・地域の出願件数を見ていきましょう。ここ10年間、日本や欧州は年間1500件規模で推移しています。アメリカは日本や欧州よりも特許出願の規模が小さく、直近でも年間700〜800件です(図2-1)。残る3カ国を見ると、インド・ブラジルではまだほとんど特許が出ていないのに対して(図2-2)、中国はここ10年間で驚異的に件数が伸びています(図2-3)。
図2-3を見ると、中国の2000年の特許・実用新案発行件数は353件でしたが、それが2009年には2074件と約6倍の規模まで発行件数が増大しており、図2-1の日米欧における発行件数が横ばい傾向になっているのとは対照的です。さらに国別で2009年発行件数を比較すると、中国の2074件は日本の1595件、欧州の1272件を上回り、鉄道関連特許・実用新案件数ベースでは世界一です(実は2008年発行件数ですでに日本は中国に抜かれていますが、差はわずか40件程度でした。しかし2009年発行件数では500件近い差に広がっています)。
「発行件数が多ければ技術力が高い」という公式は必ずしも成り立ちませんが、発行件数の多寡は研究開発への注力度合いと、その対象となる技術の投資国としての魅力度の和であるといえます。
各国で鉄道関連技術に関する研究開発が活発になると、その成果として特許・実用新案出願件数が増えます。つまりこれまでは日米欧メーカーが鉄道関連技術の研究開発を積極的に行い、その結果として発行件数規模が大きくなっていました。
特許を含めた知的財産権は全世界共通で取得できるものではなく各国ごとに権利を取得する必要があります(これを“属地主義”(注)と呼びます)。つまり日本企業が自社の特許権を基に、アメリカ・ヨーロッパでも事業展開を図りたい場合、アメリカ・ヨーロッパへ特許出願を行う必要があります。つまりアメリカ・ヨーロッパがマーケットとして魅力的であればあるほど、他国企業から特許出願される機会が増大します。その結果として発行件数規模が大きくなります。
注:属地主義については「自社事業を強化! 知財マネジメントの基礎知識(1) 自社開発品が特許侵害に?! 身近に潜む知財リスク」で紹介しています。
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