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熱い自作系! わたしのお尻が型になりました第8回 全日本 学生フォーミュラ大会 レポート(2)(1/5 ページ)

自らが型になってシートを作ったり、カーボンモノコックを自作したり……。今回もホットな学生モノづくりを紹介!

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 年に1回、学生の有志たちが協力し合い製作した自動車を静岡県袋井市のエコパに持ち込み、モノづくりの総合力を競い合う「全日本 学生フォーミュラ大会」(自動車技術会主催)。前回から引き続き、第8回大会当日の様子や、学生たちの車両設計を紹介していく。

編集部より:それぞれのチームで役職名称が異なるため、本記事では「プロジェクトリーダー」も「チームリーダー」と統一し表記します。



 今回のトップバッターは、車両製作で非常にユニークな取り組みをした工学院大学。続いて、カーナンバー順に東京大学、 豊橋技術科学大学、金沢大学、名古屋工業大学、東京工業大学と紹介していく。記事後半では、4日目の電気自動車試走会の動画や、エンデュランス走行で活躍した学生たちの車両の数々を紹介する。

大会結果に関するニュース(MONOist):
第8回 学生フォーミュラ大会開催――優勝は阪大 − @IT MONOist

 「工学院のクルマ、やばい!」――擦れ違う学生たちからそんな声が聞こえてきた。「やばい」は、いまどきな褒め言葉。工学院大学車両のカウル外観は遠目で見ても美しいが、近くで目を凝らしても凸凹や傷が非常に少なく見えた。同校の車両の外観の美しさが、ピットを行き交う人たちの目を引いていた。

人間型と6年目の意地と――工学院大学(No.45)

工学院大学

  • 総合得点:579.61/1000点
  • 総合17位
  • スポーツマンシップ賞
  • 日本自動車工業会会長賞(完走奨励賞)

工学院大学チームの面々

 今年の工学院大学チームの車両はエンジン部まですべてカウルで覆ったという。空気抵抗の削減を狙うとともに、カウリングの美しさも徹底追求した。何層かに分けてコーティングし、最後にクリアを噴いて仕上げた。塗装は、大会の2日前まで行っていたとのこと。

 “やばい”のは、ここだけではない。同校車両の今年のもう1つの目玉は、シート。


インテリア担当自らが型になったシート

 一見、何の変哲もないシートだが、この製作プロセスがユニーク。なんと、人間自らが型になっている。型になったのは、工学院大学 インテリア(内装)班リーダーの山内 洋貴さん。「加工機を使いコンパネ(コンポジットパネル)で箱を作り、その中に自分が入ってドライバーポジションを取って座ります。そこに発泡ウレタンを流し込んで固めていきます」。この発泡ウレタンは発熱しながら硬化するので、直接肌に触れては危険だ。

 「レーシングスーツを何枚か着て、その上からカッパを来て、さらに、発泡ウレタンが付着しないようにビニールシートをぐるぐるまきにしました。温度は最大で50度近くになり、ただひたすら耐えるのみ。もう汗ダラッダラで、周りにいた人たちに汗をぬぐってもらいました」(山内さん)。

 サウナに入り、さらに発汗シートを巻いているような状況。製作時間は1時間ほどとのことだが、さすがに、ずっとその中にいたわけではない。発泡ウレタンは少しずつ流し込み、それが固まったら脱出し……を繰り返したとのこと。型ができた後、何人かのドライバーに座ってもらい、形状を微修正。そして、ついにドライバーになじむシートの出来上がり。昨年もシートを自作しているが、いまいちドライバーになじまなかったという。

 製作過程を尋ねた後であらためてシートを見ると、妙に生々しいというか、肉々しいというか……。

 昨年の同校は、会場に車両はなんとか持ち込んだものの、車検で申し送り。出走できずに大会が終わってしまった。同チームは結成6年目だが、リタイヤしてしまったり、車検が通らなかったりと、何かと紆余曲折してきた。

 「これまでは、技術が……というよりは、チームマネジメントに苦労してきました。今年はとにかく、1日でも早く車両を作ることを目標としました。設計に凝ることばかりに時間をかけ、車両の製作時間がなくなり出来が悪くなるぐらいなら、多少安全率を多めに取り、作りやすくシンプルな車両設計をしよう、と。車両を何回も走らせ、トラブルが出たらその都度改善していく形を取りました」(工学院大学 テクニカルディレクター*注 久保 直紀さん)。*注 マシン開発をまとめるリーダー

 同校は今年、車検にも無事通り、動的審査も全種目完走! 総合順位は17位と大躍進。昨年同様、スポーツマンシップ賞も獲得。来年からはさらに高みを目指し、勝負していく。

動画1 工学院大学のエンデュランス走行


また優勝するための3カ年計画――東京大学(No.1)

東京大学

  • 総合得点:361.93/1000点
  • 総合29位
  • プレゼンテーション賞1位
  • CAE特別賞3位

 「今年リーダーを実際やってみて、昨年までのリーダーがいかにすごかったかを実感しました」と東京大学のチームリーダー 岡田あゆみさんはいう。


 今年の東京大学車両の一大事は、エンジンの変更。昨年までSkywaveという長いエンジンをドライバーの側面に配置していた。今年は新しいエンジンATR450を車両後部に配置し、割とオーソドックスになった。ただし、異端児といわれた(!?)東大車両のもう1つの特徴、CVTは今年も継承した。


東京大学のチームリーダー 岡田あゆみさん

 「エンジンを変えたことで設計も昨年までとは大きく変わり、『どうすればいいんだろう』という状態になりました」(岡田さん)。

 今年の東京大学の車両は、エンデュランス走行で残念ながらリタイヤ。走行中に、少し車両が滑ってしまったという。しかしタイムに関しては、予想以上だったとのこと。

 「3日目は、大会日程の中で最も忙しい日です。しかも、雨がいつ降るか分かりませんでした。雨と走行のタイミングがかぶらないか心配でした。そう簡単に読めないことですが……。今年は、天が味方してくれませんでした」(岡田さん)。

 ただし、天気のことがなくても、今回のような結果になっていたかもしれない と岡田さんはいう。「昨年の時点で、順位が落ちることも予想していました。今年は結果が振るわなかったものの、3年間かけて新生東大チームで再度優勝を目指すという計画になっています」。今後の新生UTFFの動きから目が離せない!


東京大学の車両

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