知っておきたいLINの基礎知識 その2:車載ネットワーク「LIN」入門(2)(3/3 ページ)
前回に引き続き、LINの基礎知識を解説。今回は「LINフレームの構造」「ネットワークマネジメント」「LIN記述ファイル」について詳しく見ていこう
2.ネットワークマネジメント
ウェイクアップシグナルフレーム/スリープモードフレーム
連載第1回の適用分野で説明したとおり、LINは主に快適装備品などに使用されるため、車両の状態によって通信を必要としない場合があります。例えば、キーレスエントリーでドアを施錠した場合、リモコンからのドアロック要求を受光するセンサECUは、次の開錠命令を受けるまでLIN通信は不要です。
この“通信が不要な状態”となったときに「省電力モード(ウェイクアップ/スリープモード)」に切り替えることで、LINノードの消費電力を抑えることができます。
この省電力モードの切り替えを行うのが、ネットワークマネジメントです。
図10 ネットワークマネジメント(※ベクター・ジャパンの資料を基に作成)
※「動作中」にバスアイドル時間が4〜10秒(LIN1.xでは2万5000ビット)、または「スリープモード」フレーム送受信で「スタンバイ(スリープ)」状態に移行。スリープ中に「ウェイクアップシグナル」フレーム送受信で「初期化」状態に移行。「初期化」状態は100ms以内に動作中に移行
- スリープモードフレーム(Go-to-Sleepコマンド)
スリープモードフレームとは、マスタータスク(マスターノード)がスレーブノードにスリープモードへの移行を要求するコマンドです。マスターノードは、マスターリクエストフレーム(フレームID 60)のデータバイトの1バイト目に0x00、2〜8バイトに0xFFを格納して送信します(LIN1.xでは、2〜8バイトに0xFFを格納することは規定されていません)。このフレームを検知したスレーブノードは、通信を停止(スリープモードに移行)します(図11)。
- ウェイクアップシグナルフレーム
ウェイクアップシグナルフレームとは、スレーブタスク(マスターノードまたはスレーブノード)が各ノードにウェイクアップモード(初期化/動作中)への移行を要求するシグナルです。ウェイクアップシグナルは、ショートドミナントバスレベルです。ドミナント状態は、0.25〜5msで0xF0バイト(LIN1.xでは、0x80バイト)となります(図12)。
マスターノードの場合は、Breakフィールドの送信でもウェイクアップモードへの移行を要求できます。
ウェイクアップシグナルのタイミング
ウェイクアップシグナルを送信してもスケジューリングが開始されない(Breakが検出されない)場合、スレーブタスクはウェイクアップ要求を繰り返すことができます。ウェイクアップシグナルの間隔(リセッシブ状態)は、150〜250ms(LIN1.xでは、最大128ビット)です。ウェイクアップシグナルが合計3回送信されてもスケジューリングが開始されない場合、1.5秒(LIN1.xでは、1万5000ビット)以上の休止状態の後に、4回目のウェイクアップシグナル送信が可能になります(図13)。
ネットワークマネジメントのタイミングパラメーターは、LINプロトコルバージョンによって異なります。LINプロトコルバージョンごとのタイミングパラメーターをまとめると以下になります(表1)。
LIN1.xでは、タイミングパラメーターはビット時間(TBit)で定義されています。つまり、LIN1.xでは、通信速度によってタイミングパラメーターが異なります(表2)。
3.LIN記述ファイル(LDF)
LIN記述ファイルは、LINネットワークを定義する標準形式で、LINの仕様書に規定されています。LIN記述ファイルには通信速度、ノード、フレーム、シグナル、通信スケジュールなどのLIN通信に必要な情報を定義します。
LIN記述ファイルのフォーマットは、テキストベースとなっておりLINの通信規格と同様、非常に簡易的です。
LIN記述ファイルは、各開発工程間や自動車メーカーとサプライヤ間の共通インターフェイスとして機能し、非互換性などの問題を軽減できます。またシステムジェネレータによるLIN通信ドライバの生成、解析・シミュレーションツールの設定に使用します。解析・シミュレーションツールでは、スケジュールに従ったヘッダー送信、スケジュールテーブルの切り替え、シグナル単位での解析や値の変更などが簡単に行えます(図15)。このように、LIN記述ファイルを使用することで効率的な開発が可能となります。
今回は、LINフレームの構造、ネットワークマネジメント、LIN記述ファイルについて説明しました。LINフレームの各フィールドの役割やLINフレームタイプの違い、LIN記述ファイル使用のメリットなど理解いただけましたでしょうか。
さて次回は、「ステータスマネジメント」「ノードコンフィグレーションと識別」など、LIN2.0、2.1で追加された仕様について解説します。ご期待ください! (次回に続く)
http://www.vector-japan.co.jp/
http://www.vector-japan.co.jp/vj_lin_solutions_jp.html
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.