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設計者CAE議論は終わらないメカ設計 イベントレポート(14)(2/2 ページ)

3次元CADユーザーたちが自発的に集い、長野で日本のモノづくりの将来を議論するイベントを開催。設計者CAEについても語られた

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導入はしたけれど……

 一応稟議(りんぎ)がとおり、導入はした。しかし、それから半年経過してみると……、誰も使っていなかった。そんな場合も大いにあり得る。

 SWCNのメンバーに、利用促進で障壁となっている点を尋ねたところ、以下が挙がったという。そのほとんどが、教育機会に関する回答だった。

  • 設計者にスキルアップの意欲がない。「なんだか難しそう」だと敬遠している
  • 利用者がCAEを難しく考え過ぎていて、利用したがらない
  • 運用が個人任せで、設計品質が個人のスキルでばらついてしまう
  • ソフトウェアの操作はできるものの、信頼に値する結果を出せない。人材が育たない。ノウハウが伝承されず、教育の機会がない
  • 解析対象を簡易モデル化できない。工学的な知識が不足しているが、教わる機会がない

 教育をしたいが、資金の余裕や人材リソース、時間に余裕がなくてできないということもある。

 また多くの人は、ベンダが提供するサポートを知らないという可能性も。南山氏が話を聞いた中には、自分の使うツールに関して、どの販売店に尋ねらいいか分からないという人もいたという。

 簡易モデルが作れないという問題については、解析をやるに当たる基礎技術(座学)が大きく欠落しているということになる。特にそのあたりのカバーは悩ましい。しかし自主的な学習を求めるのは、多忙な設計者には非常に厳しい。

 材料力学や有限要素法など、座学の習得の部分をみんなシェアできる仕組みが何かしらできれば、CAEはもっと広がるだろうと南山氏は述べた。

 SWCNのような、会社で縛られない集まりは、そんな状況を打開するのには有効だ。このような交流を通じて、教育に関する有益な情報や、問題解決のヒントを得ることもある。少なくとも「自分の使うツールの販売店が分からない」というようなことは回避される。それに、ときにはぽろっと愚痴をこぼし、「そうだよねぇ」と共感し、自分らの抱える問題を共有し、励まし合っていっていけるのもいい。

設計者は、どうしてか、こんなにも、忙しい

 できる範囲内でやろう――南山氏が提言する設計者CAEのスタイルだ。実際、そういうスタイルが、GAC社内のCAE普及の後押しをしたとのこと。

 「昔より設計は確実に高度になっているのに、設計者が忙しすぎて本来の設計と向き合えない」と、最近の南山氏は元上司に当たる技術部長とよく話すという。忙しい中、設計を効率よく流すため、設計はルール(マニュアル)化され、設計者はそれを正確にこなすことに、ただ一生懸命になってしまう。また、役職が付いた途端会議が増え、資料作りも増える。南山氏がヒアリングしたところ、とある設計者の1カ月の作業のうち、9割近くが会議と資料作りということになっていたという。そのうえ、残業を減らしなさい、といわれる始末……。

 とにかく設計者は、忙しい。そんな中、CAEを推進するにしても、CAEの理想像にとらわれることなく、あくまで“CAEをすることが目的ではなく、設計することが仕事の本分”だということを忘れないことが大事だと南山氏はいう。

「簡単にできる」は、ウソ?

 「すべての設計者にCAEを」「複雑なオペレーションは不要です」。設計者CAEでありがちなキャッチフレーズだ。

 ソフトウェアの売り手側のセールストークをうのみにしてしまう人は、結構たくさんいるという。例えばそんな状態の経営者が、設計者たちのCAEの活用状況を見れば、「せっかくCAEを買い与えたのに、何をやっているのか?」ともどかしく見えてしまう。

 確かに、そのセールストークどおり、操作は簡単に習得できるが、解析結果が正しいものか判断できない。あるいは、解析結果表示まで長時間かかることや、何度やっても計算エラーが出てしまうことで、結局実験に立ち戻ってしまうこともある。そういう人たちも、かつては「誰でも簡単にできる」と信じていたが、そういう経験を通して、「“誰でも”は、無理じゃないか……」という結論に至っていく。「CAEが自分の代わりに設計してくれる」と錯覚したことで起こる失望感。

 「CAEは、かしこい電卓にしかすぎない」。これが設計CAEの現実だ。間違えた数字を入力すれば、間違えた答えが出る。そんな、よく考えれば当然の法則が、案外、理解されていない。そして、そういうCAEの現実を経営層に説明するのも至難の業。……というか、それを地道に伝え続けるしか道はない、と南山氏はいう。


セールストークはうのみにしないで!

 また、設計者によるCAE活用においては、解析をすることそのものや、解析で精度の高い値を出すことを目指すことが正しいとはいえない。むしろ、ビジネスの状況に合わせCAEを使い分けていくことが大事だと南山氏は述べた。

「やらなければ見えなかったことが見える」

「やらなければ気付かなかったことに気付く」

「やらなければ考えなかったことを考える」

 そもそもCAEによる可視化がなければ理解しづらい現象もあるし、昔ながらの手計算で厳しかった計算が楽になっていることも事実だ。そういったことが、設計の可能性の幅を確実に広げていく。

 CAEで正確な答えを出すことが目的ではない。あらためて設計について考えるきっかけをつかんだり、別の視点を得たりするために活用していく。そういった1つ1つの気付きや思考が、設計を前進させる。それが設計者CAEのあるべき姿ではないかという。ひいては、それが真のフロントローディングへとつながっていく。

 多忙な中、マニュアルの順守に気を取られていると、設計者は思考をすることが少なくなる。その「考えない」ことが、製品に対するクレーム(リコールなど)につながっているのではないかと南山氏は指摘する。

 一方、そんな状況を何とか打開しようと動き出しているメーカーもあり非常にうれしいと同氏はいう。

 最後に、設計者CAEの壁を乗り越えるためのヒントをまとめたスライドを紹介し、本稿を締める。


CAEの壁を乗り越えるために「僕ら」ができること

 この議論に終わりはない。最終的な答えは、あくまで自分たちで考えるしかない。皆さんが“自分たちなりの”設計者CAEを展開するに当たり、この記事の情報が少しでも後押しになり、そして少しの勇気が与えられれば幸いだ。

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