普及目前USB 3.0に暗雲? 下位互換性ない未認証品出回る:テクノロジー最前線(2)(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスがUSB 3.0の先行きに警鐘を鳴らす。“USB 3.0対応"をうたいながら実は未認証のUSB 3.0コントローラを搭載し、下位互換性が確保されていない機器が市場に登場。「USB 3.0は使えない」の風評が広がる恐れがある。(編集部)
iPodが認識されず、USBマウスも動作しない
コストパフォーマンスの高さを売りにするこの台湾製マザーボードは、一部のPC自作ユーザーで人気がある。この台湾メーカーは何機種ものマザーボードで問題のホストコントローラを採用しているが、インタビュー時に友田氏はその中の1つのATXマザーボードを用いて下位互換性の問題を実演して見せた。
このATXマザーボードは、3つのUSB 2.0ポートに加えて、仕様で「USB 1.0/2.0/3.0に最高5Gbpsまで対応」と記載された1つのUSB 3.0ポートを持ち、「Certified」の文字こそ省かれているが、USB 3.0認定ロゴと見紛うデザインがボードに刻印されている。ところが、一般的なUSB 2.0デバイスといえるiPodをUSB 3.0ポートに接続したところ、デバイス自体が認識されない。それどころか、USBマウスさえも動作しなかった。これでは「下位互換性がない」と判断せざるを得ない。
このATXマザーボードのレビュー記事を読む限り、USB 3.0デバイスを接続してのスーパースピード動作において、ホストコントローラはさしたる問題はないようだ(μPD720200と比べてデータ転送速度が若干劣るとの指摘はある)。そのうえでUSB 2.0ポートも用意しているのだから、実使用上は困らないとの見方もできる。だが、友田氏は「3.0と2.0でポートの違いは一見しただけでは分からないし、そもそもUSB 3.0デバイスしか動作しないならUSB 3.0対応とはいえない」と指摘する。
なおこのマザーボードメーカーは、Intel P55チップセットを採用した上位機種においてμPD720200を採用している。あくまでもコスト的な問題で下位機種に問題のホストコントローラを採用しているようだ。
※記事初出時に特定のチップベンダおよびマザーボードメーカーを記載しておりましたが、市場では認証されていないホストコントローラを使ってUSB 3.0対応をうたったマザーボードがほかにも複数存在するため、特定メーカーでの表記を改めました。
USB 3.0の正しい在り方を周知徹底
新しいインターフェイス規格に下位互換性の問題は付きもの、時間がたって規格が成熟すれば解決する。ただし、USBほど幅広い機器で汎用され、市中で膨大な数の対応機器が稼働しているインターフェイスはない。それだけユーザーの信頼は厚い。このまま下位互換性が担保されていない未認証のUSB 3.0機器が出回り続けると、ルネサスが懸念する通り、USB 3.0、ひいてはUSB全体の信頼が低下する危険性がある。特にユーザーがマジョリティ層に広がるこれからが問題だろう。
そもそもなぜ、仕様が公開されて2年近くたっても、認証ホストコントローラが1つしかないのか。シングルソース状態が好ましくないのはいうまでもない。USB 3.0ではコントローラ仕様が従来のOHCI/UHCI、EHCIからxHCIに一新され、これで4つの転送モードを制御する。つまり、過去の資産を流用できず、一から正しく実装しなければならない。これに手間取っているようだ。「3.0になっても2.0部分は既存回路で逃げられると甘く考えていたベンダが多い」(友田氏)。
ともあれ、認証コントローラの選択肢、供給量が増え、機器ベンダがあえて未認証品を採用する理由がなくなれば問題は解決する。それまでの間、業界を挙げてUSB 3.0の正しい在り方、認証ロゴをユーザーに周知徹底し、未認証機器によるトラブルを防ぐよういくべきだ。大きな可能性を持つUSB 3.0だけにスムーズに普及してほしいものだ。
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