パッチン! スナップフィットで学ぶベテランの設計:甚さんの設計サバイバル大特訓(6)(2/3 ページ)
樹脂材料のばね特性を生かした「スナップフィット」で、ねじを不要とする部品の締結法を学ぶ。これが“粋な設計”だぜぃ!
各種の穴に関するルール
これまで「R」「リブ」「ボス」の順に、樹脂加工側とのルールを説明してきました。そして、最後のルールは、図3に示す「穴」に関する樹脂加工側とのルールです。
そんじゃよぉ、……ここいらから、ちょいとベテランの『域』と『粋』に触れていくぜぃ!
えっ? 僕でもいいんですか? きっと、粋なベテラン設計者になれるのですね?
良君、遠慮は要らねぇ。すでに、エリカちゃんには先週教えたところだ。
……先週!?
スナップを効かせる設計サバイバル術でねじ不要
設計サバイバル術の小道具としていくつかの「粋」な事例を紹介しましょう。
例えば、樹脂材料のばね特性を生かした「スナップフィット」で、ねじを不要とする部品の締結法を学んでみましょう。
良君! もし、南国の島に遭難しちまったオメェがよぉ、漂流しながらその浜辺にたどり着いたとき、身に着けているものはなんだ?
恐らく、色鮮やかなライフジャケットではないでしょうか?
そのとおりだ、良君! 最近は随分と応答性が良くなったな、あん! どっかのハイブリッド車のブレーキみてぇだ!
それでは、図4に示すライフジャケットのベルトを観察してみましょう。「ワンタッチベルト」と呼ばれる安全ベルトのバックルに注目してください。
これが樹脂部品の締結方法でよく使われる「スナップフィット」で、まさしく、設計サバイバル術としては「小道具」の代表例です。
なるへそ! 図中の『戻り返し』という単語も覚えました。この『スナップフィット』なら、僕のウエストポーチやリュックにも付いていますよ。
そのとおりだ、良君! 次は、ちょいと高度な別の『スナップフィット』にへいるぞ!
おもちゃの電車に学ぶスナップフィットの例
図5は、安全性を設計思想の第一優先とする樹脂製おもちゃの電車です。ここから学ぶ高度な「スナップフィット」および、その応用例を見てみましょう。
まず、筆者設計における「従来タイプのおもちゃの電車」から、そのスナップフィットを紹介します。
図5のように、車両ボディ側にスナップフィットを持たせた場合を説明します。例えば、電池交換のときを想定しましょう。
- 図中の左上:ボディ両側にあるスナップフィット近傍を片手でわしづかみにする
- 図の中央部にある断面:スナップフィットを矢印の「すき間」の方へ押す
- 図中の右下:わしづかみで押しながら、ボディを垂直方向(Z方向)へ引き抜く
- 図中の右下:電池を交換する
となります。
わしづかみして、スナップフィットをリリースすることの「設計センス」に抵抗がありますが、一度コツを覚えれば、作業はとても簡単です。しかし、ボディを外すとパワーユニットや図示しない電極板が露出することに難があります。また、スナップフィットは、勘合しているときは、鋭利な角が露出しませんが、外すと露出します。安全第一といい切るには、まだ対策の余地がありそうです。
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