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ロボットがピラミッドを作る!――NHK大学ロボコン未来のロボット技術者の熱き戦い(2/2 ページ)

大学生がロボット作りの技術やアイデアを競う「NHK大学ロボコン」が開催された。エジプトの三大ピラミッドがテーマの今大会、制限時間内に素早くピラミッドを組み立てたのはどこの大学のロボットか?

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フィールドのカタチが非対称?

 この3つのピラミッド、真上から見ると四角錘(すい)の3つの頂点が一直線になっていない。これは今回ルールを考えたエジプトの人たちのこだわりで、実際の三大ピラミッドも同じようにずれているそうで、その様子を忠実に再現したいという思いからこうなったのだという。

 そのため、赤/青のフィールドの形が完全に対称ではないという、競技フィールドとしては異例の“非対称さ”をどう攻略するかが今回の大会のポイントの1つになっている。勝ち進んでいくと自陣が赤チーム側から青チーム側に変更することもあるため、フィールド形状の変化に柔軟に対応することが必要になるのだ。

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画像7 赤/青のフィールドの形が完全に対称ではない

 またこの第2ステージだけは、自動ロボットに任意の数のブロックを、試合開始前に載せることができる。実際にこの第2ステージでは2台のロボットに積めるだけのブロックを積んでチャレンジするチームが多かった。非対称の影響を考慮しつつ、2台の自動ロボットを駆使していかに素早く正確にブロックを積めるかを競うこの第2ステージが勝敗を分けるといっても過言ではない。

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画像8 ロボットに積めるだけのブロックを積んでチャレンジ

 学生たちは、ロボットの“体重制限”にも頭を悩ませたようだ。4台(手動1台、自動3台)のロボットは総重量を50kg以内に収めなくてはいけない。多くの大学が、軽いアルミ製のパイプ/板金や木材などでロボットを製作していたが、強度不足から何度も動かしているうちに調整が狂ったり、破損したりといったトラブルに見舞われるケースも散見された。

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画像9 軽量化と強度不足のジレンマに学生は悩まされた

予選での注目試合

 予選リーグで一番盛り上がったのが、Bグループの豊橋技術科学大学の試合だ。豊橋技術科学大学は、2008年と2009年の過去2年連続で優勝しているほか、これまでの優勝回数も6回という強豪チーム。予選リーグでも合計96ポイントと圧倒的な強さであっさりと決勝進出を決めた。予選リーグ2位の東京工業大学が69ポイント、同3位の金沢工業大学が44ポイントという得点から比べてみても、豊橋技術科学大学の高得点ぶりが分かるだろう。

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画像10 過去に優勝6回の強豪・豊橋技術科学大学は安定した試合で予選リーグを突破

 圧巻だったのが、予選第3試合。早稲田大学との対戦だったが、豊橋技術科学大学は開始わずか40秒で第1ステージ、そしてすぐに第2ステージもクリアして2つのピラミッドのゴールデンブロックを獲得。第3ステージでは今大会初の“ロボ・ファラオ”達成に期待が高まり、会場も一気にヒートアップした。残念ながら、ゴールデンブロック設置の一歩手前で制限時間がきてしまったものの、この試合だけで70ポイントという高得点を挙げた。

リーグ戦は組み合わせの運も

 予選リーグは抽選でグループ分けが行われるのだが、この組み合わせで決勝に進出しやすいグループと苦戦を強いられるグループがある程度決まってしまう。例えば、前述のBグループでの福岡工業大学などは“苦戦組”。大会史上初の3連覇を狙う豊橋技術科学大学と2008年の準優勝校である早稲田大学という強豪と戦い、豊橋技術科学大学との対戦では負けたものの24対13と善戦、早稲田大学には勝利を収めて1勝1敗だったが決勝進出はかなわなかった。

 またCグループでは、2002年に初出場してその翌年2003年にはベスト4、その後も2005/2006/2008/2009/2010年と大会出場の常連校になっている工学院大学が決勝進出をもくろんだものの、今回の優勝校である金沢工業大学と同じグループとなって善戦むなしく惜敗した。

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画像11 NHKロボコン常連校の工学院大学も優勝校と同グループで涙をのんだ

決勝戦は昨年と同カードとなる“因縁の対決”

 決勝戦には下馬評どおり、ベスト4以上の常連校である金沢工業大学と、昨年およびおととしの優勝校である豊橋技術科学大学との一騎打ちとなった。昨年と同カードとなる“因縁の対決”だが、第1ステージは金沢工業大学が先制。わずか45秒というスピードでゴールデンブロックまで積み上げた。第2ステージは豊橋技術科学大学が1段目まで先行したもののそこで自動ロボットがストップ。一方の金沢工業大学は第1ステージでためた持ち時間を有効に使い、慎重にブロックを積み上げていった結果、第2ステージもゴールデンブロックまで成功してカフラー王のピラミッドを征した。

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画像12 第1および第2ステージともに金沢工業大学(左奥)が先制

 なんと「決勝戦でロボ・ファラオ達成」というドラマチックな展開の可能性を残しつつ、最終の第3ステージに進むと会場内はその日最高の盛り上がりに。スタートすぐに金沢工業大学がロボットアームを瞬時に伸ばして先制するもゴールデンブロックがロボットアームから外れて審判にリトライを宣言。その間に豊橋技術科学大学もロボットアームを伸ばして一矢報いようとしたが、1段目のブロックは規定の位置に留まらなかった。

 その間に、アームをリセットした金沢工業大学が間髪いれずゴールデンブロックを置きにいくも穴に入らず微調整を繰り返すところに1段目をクリアしていない豊橋技術科学大学がゴールデンブロック置きにいってしまい、金沢工業大学は押しのけられてしまう。そうしている間に制限時間が過ぎてしまい、決勝戦でのロボ・ファラオ達成は見ることができなかった。

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画像13 豊橋技術科学大学(手前)がブロックを再セッティングしている間に金沢工業大学(奥側)がゴールデンブロックを置きにいくも穴に入らず

 それでも、今大会の最高点タイとなる70点を決勝で挙げた金沢工業大学が、昨年の雪辱を果たして見事優勝に輝いた。チームリーダーの中島 貴志さんは「ロボ・ファラオができなかったのが心残りだが、エジプトに行ける喜びと、日本の優勝を新たな目標としてまた頑張りたい」と、優勝の喜びと世界大会への決意を語った。

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画像14 優勝の喜びと世界大会への決意を語った金沢工業大学

 そのほかの大学の結果は以下のとおり。

NHK大学ロボコン大会結果

大学名
優勝 金沢工業大学 創天(ソウテン)
準優勝 豊橋技術科学大学 とよはし☆ロボコンズ
アイデア賞 名古屋工業大学 ロボコン工房(ロボコンコウボウ)
技術賞 東京工業大学 Maquinista(マキニスタ)
デザイン賞 鹿児島大学 薩摩Engineers(サツマエンジニアーズ)
特別賞(パナソニック システムソリューションズ ジャパン) 東京大学 RoboTech(ロボテック)
特別賞(トヨタ自動車) 崇城大学 崇城!ロボストロ(ソウジョウ ロボストロ)
特別賞(マブチモーター) 東京農工大学 R.U.R(アールユーアール)

 今回の大会は、前日のテストランで多くの大学にロボットの不具合や得点ミスが発生するなど、これまでになく難しい競技課題に学生は苦しめられたようだ。その中でも金沢工業大学は、試合の合間のわずかな時間を有効活用してロボットの調整を続けていたという。その努力が結果にも表れ、予選から着実に得点を積み上げていき決勝トーナメントでは準々決勝28点→準決勝50点→決勝70点と、試合を重ねるごとに尻上がりに得点を上げていった。まさに金沢工業大学の“調整力の勝利”といえるのではないだろうか。

 なお、大会の様子を収録した番組は7月19日の午後1時5分〜午後2時4分にNHK総合テレビで放送される予定だ(ニュースなどの状況で放送時間は変更の可能性有り)。

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