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ロジアナとMSO、違いと使い分けいまさら聞けないロジック・アナライザ入門(2)(1/2 ページ)

ロジック・アナライザをいつ使うべきか。オシロやMSOとロジアナを比較しながらそれぞれの解析モードについて紹介

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いまさら聞けないロジック・アナライザ入門
アジレント・テクノロジー
実機の環境はシミュレーションのように理想的ではない。実機で発生しているイベントをリアルタイムに観測できるツールはロジック・アナライザ(ロジアナ)だけだ。本稿では、これからロジアナを使ってみようと考えている読者を対象に、ロジアナの測定原理から、実機デバッグで役に立つテクニックまで順に解説していく。(編集部)

 連載1回目は、ロジック・アナライザの成り立ちを通じて、ステート(同期)解析モードとタイミング(非同期)解析モードについて説明しました。ロジック・アナライザは、もともと2種類の異なる解析のニーズに対応できるような測定器として進化したため(ステート解析機能とタイミング解析機能の両方の機能を備えているため)、ハードウェアからソフトウェアのテスト、さらにはシステムを統合したときのテストに至るまで、あらゆる局面において幅広く活用できる高い柔軟性を持っています。

 しかしながらロジック・アナライザをいつ使うべきか、イメージがわかないという読者の方も多いかもしれません。また、デジタルシステムの開発・検証において、どのような局面でロジック・アナライザ、オシロスコープやミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)などを使い分ければよいか、困ることも少なくないのではないでしょうか。

 「取りあえずオシロスコープ?」

 「MSOですべて検証可能?」

 「結局ロジック・アナライザはいつ使うの?」

 今後ますます複雑化するデジタルシステムの問題を迅速に解決するためには、それぞれの測定器の特徴を知り、状況に応じて使い分けることが重要です。連載2回目となる今回は、オシロスコープやMSOといった測定器とロジック・アナライザを比較しながらそれぞれの解析モードについて、もう少し詳しく説明していきます。

 まずは、それぞれの測定器とその解析機能を以下にまとめておきます(図1)。

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図1 測定器と解析機能

信号品質チェックと高分解能タイミング解析――オシロスコープによる解析

 ボードが出来上がってきて、まず何をするでしょうか。おそらく、オシロスコープを使って、信号がきちんと出ているか確認したうえで、立ち上がり、リンギングといった波形品質をチェック(波形解析)し、次に各信号間のスキューやセットアップやホールド時間などをチェック(タイミング解析)すると思います。

 オシロスコープは、通常2〜4チャネル程度のチャネル数ですが、ロジック・アナライザは数十〜数百チャネルもの信号を同時に解析できます。従って、信号数の多いシステムを解析する場合には、ロジック・アナライザを使用します。この場合ロジック・アナライザのタイミング解析モードは、「電圧分解能1ビット・多チャネルのオシロスコープ」といってもよいかもしれません。ただし、ロジック・アナライザの電圧分解能は1ビットですので、被試験信号の波形品質を観察できません。波形品質を観察するには、オシロスコープを使用する必要があります(図2)。

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図2 オシロスコープとロジック・アナライザの比較

 タイミング解析において、重要なスペックとなるタイミング分解能は、測定器内部で生成されるサンプリング・クロックの速度に依存します。つまり、サンプリング・クロックが速ければ速いほどタイミング分解能が向上し、デジタイジング誤差(実際の信号の遷移点とサンプリングポイントとの誤差。最大で±1サンプリング周期)の影響が減少します。また一般的にタイミング分解能は、ロジック・アナライザよりもオシロスコープの方が高い場合が多く、最近では80Gサンプル/secのオシロスコープもリリースされています。

 最近のシステムでは、パラレルバスから高速シリアルバスへの移行が進み、多チャネル解析の要求よりも波形品質も含めたタイミング解析の要求が高まってきたため、タイミング解析の局面ではロジック・アナライザよりもオシロスコープが使用されることが多くなってきています。

1台で波形もロジックも!? ――MSOによる解析

 デバッグの最初の段階では、オシロスコープを使用して確認することが多いと思いますが、システム全体の動作を検証するフェイズでは、オシロスコープだけでは厳しくなってきます。一般的なオシロスコープでは、ロジックの動作やバスを流れるコマンドやコードの値などは分かりません。

 すでに使用されている読者の方も多いかもしれませんが、最近のオシロスコープの中でも、ロジック・アナライザ機能が付いたMSOが一般的に使われるようになってきました。MSOは通常、1台でアナログ2もしくは4チャネル、デジタルが16チャネル程度の信号を同時にタイミング解析できるため非常に便利です。

 ここではMSOの便利な機能について、最近多くのシステムに採用されてきているDDRメモリの解析を例に説明します。例えば、コントローラから発行されるDDRメモリのコマンドはRAS、CAS、WEの組み合わせで定義されます。その場合、シンボル表示を使えば、“0”と“1”のロジック波形だけでなく、ReadやWriteといったシンボルで解析を進めることができます。さらにReadコマンドのパターンでトリガを掛けて、そのときのデータやアドレスの波形も容易にチェック可能です(図3)。これとは逆に、異常な波形でトリガを掛けて、その現象がどこの論理シーケンスで起こっているのかをチェックすることもできます。

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図3 Readコマンドでパターン・トリガを掛けたときの例

 また、MSOがよく使われる例として、リセット直後の波形を取る際に通常のオシロスコープではチャネルが足りない場合にも、余っているロジックチャネルをトリガ入力やタイミングの確認ができるため、いざというときに大変重宝します。

 以上のようにMSOは、アナログ解析に加えて、デジタル信号のタイミング解析までできますので、「MSO1台で十分なのでは?」……そう考えている読者の方も多いかもしれません。

システムの動きが手に取るように分かる! ――ロジック・アナライザによる解析

 それでは、ロジック・アナライザを使用するメリット、いい換えるとMSOにできない部分はどこにあるのでしょうか。ロジック・アナライザが多チャネルであることは前述したので除くとして、ここでは、大きく3つ挙げます。

  1. ステート解析ができる
  2. 豊富なトリガが掛けられる
  3. 長時間のトレースが取れる

 それではこれらの3つのポイントについて説明していきます。

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