手探りからの脱却!? ESECで見つけたAndroid技術:組み込みイベントレポート(3/3 ページ)
ESEC2010の会場で見つけたAndroid関連技術にフォーカス。そのほか、3D裸眼立体視や仮想開発環境などの注目技術も併せてレポートする!
OpenGL ESの知識がなくても3D UI開発が可能に
エイチアイは、同社が開発したUIコンポーネントと3D描画エンジンで構成される「Smarty3D」に関する展示デモを実施。
同製品は、同社と韓国INNOPHILIAとで共同開発されたもので、標準のAndroidのUI開発フレームワークと組み合わせて利用することで、リッチなUI開発が可能になるという。「アドレス帳やホームアプリケーションなどで、高速で表現力豊かな3D演出を含むUI開発が簡単に行える」(説明員)。同社ブースでは、同製品を用い、3D空間と2D画像を組み合わせたリッチなアドレス帳アプリケーションのデモが行われていた。
通常Android環境における3D UIの開発は、OpenGL ESの知識が必須であり、かつ作り込みがJava実装になるため描画が遅くなるなどの課題がある。また、2Dと3Dを混在させた描画はさらに実装が面倒だという。
説明員は「同製品であれば3Dコンポーネントを配置するなどの簡単な手法でプログラミングが可能となる。短期間でUIによる製品の差別化が図れるほか、OpenGL ESの習得に掛かっていたコスト・期間を大幅に短縮できる」とアピールしていた。
また、描画速度の問題については、同社の3D描画エンジン「MascotCapsule eruption」を用い、OpenGL ESの制御をJavaアプリケーションからネイティブのレイヤに移すことにより、実行速度で約3倍の高速化が図れるとしている(参考記事:「Androidで3Dゲームを高速化、エイチアイがC言語でライブラリを実装」)。
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同社「MascotCapsule」による3D描画技術は、携帯電話/スマートフォンを中心に普及しつつある。最近では、先日発表されたばかりのNTTドコモの春夏モデルのスマートフォンに、UIの3D演出を実現できる同社ライブラリ「3DView package」が採用されている(プレスリリース)。3D関連技術で勢いのある同社が、組み込み機器のユーザーエクスペリエンス向上をさらに牽引しそうだ。
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メガネが要らない! 3D立体表示技術
前述のエイチアイは、同社3D描画エンジンMascotCapsule eruptionに、1組の3Dグラフィックスモデルデータ(ポリゴンデータ、テクスチャ、アニメーションデータなど)から立体視に必要な左目/右目用画像を自動的にリアルタイム描画することが可能な拡張機能を開発し、ESECの会場で初披露した。NEC液晶テクノロジーの3.1インチ WQVGA 2D/3D-LCDの試作機が用いられ、裸眼による立体視のデモを実演していた。「テレビのように複数人で同時に利用するものではなく、パーソナルユースの携帯型ゲーム機や携帯電話などで今後普及する可能性があるだろう」と説明員。
同じく裸眼立体視のデモを行っていたのがディジタルメディアプロフェッショナルのブース。組み込み機器でPCレベルの高度な表現を高速描画できる同社の3DグラフィックスIPコア「PICA 200」を搭載したGPU(製品名:NV7)をベースとしたリファレンスボードと、エイチアイと同じくNEC液晶テクノロジーの3D対応液晶を用い、裸眼立体視リアルタイム3Dデモを実演していた。応用範囲について説明員は「当社IPコアを搭載したチップはアミューズメント系機器で広く採用されている。今後、パチンコやパチスロ端末に、こういった3D立体表示技術が普及する可能性もあるだろう」と話す。
両デモで使用されていた、NEC液晶テクノロジーの3D液晶ディスプレイは、HDDP(Horizontally Double-density Pixel)方式が採用され、専用メガネなし(裸眼)で高精細な3D表示を実現し、2Dでも3Dでも同じ解像度で表示可能なほか、2Dと3Dを同時に表示可能という特長を持つ。詳しい紹介ムービーが同社Webサイトに公開されているので興味のある方は参考にしてほしい。
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仮想化が切り開く組み込み開発の新たな世界
アクロスゲートグローバルソフトウェアは、“Eco-Development”な仮想化ソリューションを提案。組み込みアプリケーションの開発・デバッグ・検査を仮想ハードウェア開発環境で行う「AcrossVT Developer」、組み込み教育環境として仮想ボードをベースとした実機レス実習型e-Learning環境「AcrossVT Education」、ネットワーク機器などの大規模負荷テストをPCのみで実現する「AcrossVT Evaluation」の大きく3つのソリューション・サービスに関する展示デモを行っていた。
AcrossVT Developerの利用例として、給湯器の操作パネル開発の展示デモを実演。通常の開発であれば、評価ボードや液晶パネル、デバッガなどを用いた実機ベースの開発となる。また、実際に実機ベースの開発環境で温度を設定し、追い炊き操作をしても給湯器本体が接続されていなければ、いつまでたっても水温は上昇しない。「つまり、今回用意したような実機ベースでの給湯器の操作パネル開発は、GUIの開発程度までしかできず、総合的な検証までは行えない」(説明員)。しかし、AcrossVT Developerを用いた環境であれば、PC上で開発対象のハードウェア環境を仮想的に再現できるため、「給湯器本体と連動した検証が容易にできるだけでなく、開発用の評価ボードが手元になくてもPCのみでロジックの検証ができる」(説明員)。さらに、検査自体もテストシナリオをマクロ化することが可能で、検査の自動化も実現できるという。
画像25 「AcrossVT Developer」を用いた給湯器の操作パネル開発のデモ。AcrossVT Developerは、他社のGUI開発環境やシミュレータ、ミドルウェア、統合開発環境との連携を実現している
また、AcrossVT Educationによるマイコンカー(AcrossVT Education 仮想マイコンカー)のプログラミング実習環境の展示デモも行っていた。PC上でハードウェア動作をエミュレーションし、外部環境であるコースの仮想化を実現しているのが特長。「実機のマイコンカーの走行状態を検証するには、実機にデバッガを接続し、走行する車の後を追い駆けながらデバッグする必要があるが、これは現実的ではない。当社の仮想環境を用いれば、実機やコースがなくても開発や検証が容易に行える。教育用途に最適」と説明員。現在、いくつかの教育機関での導入も進んでいるとのことだ。
仮想環境によるもう1つの利点は、コース状態などの変更も容易にできることだという。「滑りやすいコースでの動作検証をしたい場合、実環境であれば路面の素材を変えるなどの作業が必要になるが、コースの接地摩擦抵抗係数をマウス操作で変えるだけで、同じことが簡単にできる」(説明員)。そのほか、走行中にソフトウェアがハードウェア側に何を書き込んだのかを時系列でトレースする機能もあるため、「例えば、カーブの一番キツイところでなぜかコースアウトしてしまうといった場合、その時点でキー操作をするだけでトレース結果をすぐに確認、検証できる。実機ではこんなに簡単にはいかないだろう」と説明員はいう。
「組み込み開発の現場では『やっぱり、実機じゃないと!』という声もよく聞くが、環境条件の変更や特定条件でのトレース、異常・不具合の発生など、実機ではできない(もしくは難しい)ことが仮想環境でなら簡単に行える」と、説明員は仮想環境による組み込み開発の優位性について説明した。なお、AcrossVT Education マイコンカーの評価版が同社Webサイトで公開されている。興味のある方はダウンロードしてみてはいかがだろうか。
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