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手探りからの脱却!? ESECで見つけたAndroid技術組み込みイベントレポート(1/3 ページ)

ESEC2010の会場で見つけたAndroid関連技術にフォーカス。そのほか、3D裸眼立体視や仮想開発環境などの注目技術も併せてレポートする!

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――昨年のESECでは、Android旋風が吹き荒れ、組み込み業界での注目度の高さがうかがえたが、今年は少し落ち着いた印象を受けた。ESEC2010では、Androidの注目度でアピールするというよりも、Androidのポテンシャルを信じ、着実に開発を進めてきた企業が、よりビジネスを意識した展示デモを行っていた。

 本稿では2010年5月12〜14日の3日間、東京ビッグサイトで開催されたESEC2010で、展示デモが行われていたAndroid関連技術を中心に、注目の組み込み技術・最新動向などをレポートする。


待機電力ゼロでAndroidを高速起動

 最初に紹介するのは、ニュース記事「Androidの世界最速起動をうたう『QuickBoot』発売」で取り上げたユビキタスのブース。同社は、シャープのモバイルインターネットツール「NetWalker」にAndroidをポーティングし、システムの高速起動を実現する同社ミドルウェア「Ubiquitous QuickBoot Release1.0(以下、QuickBoot)」を搭載したデモ機を展示。これまで何度か評価ボード(主にアットマークテクノの「Armadillo-500FX」)を用いたデモを展示会などで披露してきたが、今回のESECでは「最終製品を意識したデモ」(説明員)を行っていた。

シャープの「NetWalker」を用いたQuickBootのデモ
画像1 シャープの「NetWalker」を用いたQuickBootのデモ

 「通常のサスペンド・レジュームにわずか1秒程度を加えることで、待機電力ゼロの高速起動を可能にする」と説明員はいう。電源オフ状態からの高速なシステム起動を実現することで、その都度電源をオフにしても不便さを感じず、かつバッテリ消費を大幅に抑えることができるとのこと。

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 QuickBootは2010年3月にリリースされたばかりで、開発者向けにシステム状態を不揮発性ストレージに保存・復元する「QuickBoot Snapshot shell script」「QuickBoot Snapshot Driver」「QuickBoot BIOS」のほか、メモリブロックの優先復元を制御する「QuickBoot IRA(Intelligent Resource Allocator)」などが含まれる「QuickBoot SDK」が提供されている。QuickBootの応用例としては、今回のデモのようなモバイル端末以外にも、レコーダー、カーナビ、白物家電などが挙げられる。

画像2 QuickBootのシステム構成図
画像2 QuickBootのシステム構成図

 また、同社はDTCP-IP対応 DLNA DMP(Digital Media Player)を搭載したAndroid端末で、DLNA DMS(Digital Media Server)に保存されたコンテンツをDTCP-IPにより著作権保護をしながらネットワーク経由で再生するデモを行っていた。UPnPは「libupnp(portable SDK for UPnP)」を、動画再生はAndroid標準プレーヤーを利用し、同社「Ubiquitous DTCP-IP SDK」を追加・実装して実現しているという。「フリーで入手可能なDLNAスタックとAndroidを組み合わせることで、低コストのDTCP-IP対応 DLNA DMP開発が可能になる」(説明員)。

レコーダーに保存されたコンテンツをAndroid端末で再生
画像3 レコーダーに保存されたコンテンツをAndroid端末で再生。展示会場では、アットマークテクノの「Armadillo-500 FX」や米Googleの「Nexus One」を用いた再生デモが行われていた

 そのほか、コンパクトデジタルカメラへの採用が進む「Ubiquitous DeviceSQL(以下、DeviceSQL)」、DLNA対応ワイヤレススピーカーの参考出展、組み込み機器向けのネットワークソリューション「Ubiquitous Network Framework」の評価・開発キット「Ubiquitous Network Framework Trial Pack(開発ボードと各種ソフトウェアが同梱)」の展示が行われていた。

ALTALT 画像4(左) DeviceSQLを搭載したオリンパスイメージング、パナソニックのコンパクトデジタルカメラ/画像5(右) DLNA対応ワイヤレススピーカー。DLNA DMR(Digital Media Renderer)対応の無線LANモジュールがアンプ付きスピーカーに内蔵されている

「Ubiquitous Network Framework Trial Pack」の展示
画像6 組み込み機器向けのネットワークソリューション「Ubiquitous Network Framework」の評価・開発キット「Ubiquitous Network Framework Trial Pack」の展示

 なお、同社ブース内では2010年5月末にリリース予定のDeviceSQLの次期バージョン「DeviceSQL Release 4.3」に関する紹介スライドも流されていた。

次期バージョン「DeviceSQL Release 4.3」について
画像7 次期バージョン「DeviceSQL Release 4.3」についてのスライド
関連リンク:
ユビキタス

Android対応小型CPUボードによる各種デモを披露

 アットマークテクノのブースでは、同社が参加する「Open Embedded Software Foundation(以下、OESF)」のSystem Coreワーキンググループが中心となり開発した超軽量版Android「Light Weight Android(以下、LWA)」を、同社の小型CPUボード「Armadillo-440」に搭載した展示デモが行われていた。

 LWAの環境構築には、同じくOESF(System Coreワーキンググループ)が開発した組み込みシステム向けAndroid開発環境「OESF Platform Builder(以下、OPB)」が用いられており、デモ機では通常のAndroidで標準的に入っている機能やアプリケーションが省かれた最小構成のAndroidが動作していた。

「Light Weight Android」のデモ(1)「Light Weight Android」のデモ(2) 画像8 小型CPUボード「Armadillo-440」を用いた「Light Weight Android」のデモ

 また、前述のユビキタスのQuickBootと同社「Armadillo-500FX」「Armadillo-400」シリーズを組み合わせた高速起動ソリューションも展示。両社は先日(2010年5月10日)、QuickBootとArmadilloシリーズとを組み合わせ、中小規模の量産品での高速起動技術の普及促進に関する協業を発表している。QuickBootを搭載したArmadilloシリーズは、バッテリ動作の携帯型POS端末、ソーラー発電で動作する屋外装置、使用時だけ起動するようなICカード読み取り端末などに応用できるとしている。なお、QuickBootを搭載したArmadilloシリーズは、2010年秋から販売を開始する予定だ。

QuickBootを搭載した「Armadillo-500FX」のデモ
画像9 QuickBootを搭載した「Armadillo-500FX」のデモ

 さらに、先日リリースされたばかりの「Armadillo-220」の後継機種であるLinux対応のARM9搭載小型CPUボード「Armadillo-420」の展示デモも行われていた。同製品は通信・制御機器向けに機能を絞り込み、低価格を実現しているのが特長で、会場ではWebカメラを用いたネットワークカメラシステムのデモ(Linux-UVC互換のWebカメラ対応のストリーミングアプリケーション「MUPG-streamer」が用いられていた)が披露された。

 その横では、Androidにも対応する「Armadillo-440」に温度センサ、RFIDリーダ、Webカメラを接続したデモも実施(デモ環境はLinuxを使用)。「カードリーダを用いた入退出管理システムを意識。カードで情報を読み取ると同時にカメラで撮影するといった利用も可能だろう」と説明員はいう。

「Light Weight Android」のデモ(1)「Light Weight Android」のデモ(2) 画像10 (左)「Armadillo-420」によるネットワークカメラシステムのデモ。(右)「Armadillo-440」に温度センサ、RFIDリーダ、Webカメラを接続したデモ

関連リンク:
アットマークテクノ

Android搭載レーザー式モバイルプロジェクタ

 コンシューマ機器の中でも特に携帯電話開発で実績を持つNTTデータMSEは、「設計開発」「プロジェクト管理」「開発支援・品質診断」「人材開発」と組み込みソフトウェア開発におけるワンストップ・トータルソリューション「BizGrandist」を前面に押し出し、NTTデータグループのブースに出展。

 さまざまな要素技術、デバイス制御に強みを持つ同社は、テキサス・インスツルメンツの「BeagleBoard」に、米Microvisionの小型レーザー式プロジェクタ・モジュールを搭載したレーザー式モバイルプロジェクタの試作機を展示デモしていた。OSにはAndroidが採用されており、同社独自のユーザーインターフェイス(以下、UI)を追加し、マルチディスプレイ制御を実現しているのが大きな特長だという。

 試作機本体のタッチパネル液晶で、プロジェクタで投影したいデータを選択。そのまま指で画面上部に向かってスライドすることで投影されるというもの。「指で投げるような感覚を実現。できるだけ直感的に操作できるUIを意識した。また、標準のAndroidではデュアルディスプレイに対応していない。今回、手元でのUI操作とプロジェクタでの投影をAndroidで可能にした」(説明員)。

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Android搭載レーザー式モバイルプロジェクタの試作機1号
画像11 Android搭載レーザー式モバイルプロジェクタの試作機1号。動画2の試作機で4代目だという。開発には同社と業務提携を行ったキャッツの「ZIPC for Android(仮称)」が用いられているとのこと

 「レーザーモジュール自体は、現在、法規制(消費生活用製品安全法)があり、日本で販売ができない。しかし、今年中には規制緩和が進むといわれており、2011年以降の早い段階で“レーザー元年”を迎えるのでは?」と説明員は期待を寄せる。デジタルカメラやモバイル端末などにもプロジェクタ機能を搭載した機器が登場しはじめているだけにレーザー式のプロジェクタの登場に期待したい。

関連リンク:
NTTデータMSE
NTTデータ

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