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RF測定器を駆使してZigBeeを知るZigBeeで知る物理層測定の基礎(3)(2/2 ページ)

ZigBeeの物理層であるIEEE 802.15.4と技適を測定の観点から解説。今回はZigBeeなど高周波の物理層評価に使うRF測定器を紹介

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2. FFTアナライザ

 FFT型はダウンコンバージョンの過程でLOを掃引せず、固定周波数において広帯域測定を行います。IF信号は、数十MHz以上の帯域を持つADCでそのまま時間サンプルとして取り込まれ、IQ分離、リサンプリングを経て、FFT処理を行いスペクトラムをして表示されます。ADCのサンプリング速度に依存して、測定可能な周波数幅が決まります。掃引型に比べてダイナミックレンジが制限されますが、時間ドメインと周波数ドメインを同時解析できます。

 以上が、2種類のスペアナの基本的な原理です。

 送信系の試験がメインになる技適(技術基準適合証明)では、ほとんどの項目で掃引型スペアナを使用します。またZigBeeの場合、IEEE試験でもスペクトラムマスク試験には掃引型スペアナを使用します。どの程度のスペックのものが必要かについては、次回からの測定項目の説明と交えて解説したいと思います。

 もちろんFFTアナライザでも一部の技適、IEEEのマスク試験をすることは可能ですが、掃引型とは動作原理が大きく異なるため、あくまで代替法です。また、FFTアナライザは、技適で要求されるスプリアス発射の強度の測定、つまり、ほかの無線通信を妨害しないように不要信号を広帯域で測定する用途には向きません。スプリアス測定には掃引型のスペアナを使用します。

 また、2.4GHz帯の技適における空中線電力(出力パワー)の測定には注意が必要です。2.4GHz帯の空中線電力は「1MHz当たりの電力」を測定するよう規定されています。技適の測定方法に完全に準拠するには、アナログタイプの掃引型スペアナとアベレージパワーメータを組み合わせて使用します。アナログタイプのスペアナは、設定したRBWに応じたIF信号を出力することが可能です。これを利用してRBWを1MHzに設定したときのIF信号を出力し、パワーメータで空中線電力を測定します。

 ただし、空中線電力の事前評価としては、デジタルタイプのスペアナを単体で使用し、ゼロスパンやマーカ機能で簡易測定を行うという方法もあります。デジタルタイプは、アナログタイプに比べて振幅確度がよいため、簡易測定でも信頼性の高い値が得られます。

変調解析ツール

 前回、紹介したとおり2.4GHz帯のIEEEのEVMなどを測定するには、O-QPSK信号を復調可能な変調解析ツールを使用します。変調解析ツールは通常、上記のFFTアナライザのような、ミキサおよび十分な帯域のADCを持ったアナライザと併せて使用します。

 ZigBee信号の解析には、ADCの帯域は10MHzもあれば十分でしょう。掃引型のスペアナの中には、変調解析の機能を併せ持つものもありますので、この場合、ハードウェアとしては1台で技適・EVMともに測定が可能になります。

 変調解析ツールには、アナライザ内蔵型のものや、PC上で動作するソフトウェア型のものなどがあります。内蔵型のツールは測定器と同じ感覚でコマンド制御ができ、ソフトウェア型に比べて、より自動化に向いているといえます。

 最近では、オシロスコープやロジックアナライザと使用できるツールもあり、ハードウェア選択の幅が広がっています。

信号発生器

 技適のほとんどの項目ではスペアナを用いますが、一部の項目(キャリアセンス機能やアンテナ内蔵デバイスの試験)では、2.4GHz帯の無変調信号が出力できるアナログ信号発生器を使用します。

 一方、IEEEの受信系の項目を試験するには、Golden Deviceか2.4GHz帯のZigBeeのパケット信号を出力できるベクトル信号発生器が必要です。ベクトル信号発生器とは、デジタル変調信号を出力可能な標準信号発生器のことをいいます。ZigBeeのようなパケット信号(フレーム構造になっている信号)を出力するには、ベクトル信号発生器に内蔵されている「任意波形発生器」を使用します。

 具体的には、あらかじめPCで作成したI/Q信号の波形ファイルをベクトル信号発生器のメモリにダウンロードし、任意波形発生器で再生します。波形ファイルは、IEEE 802.15.4-2003規格のベースバンド部分を参照し、シミュレーションツールなどを使って作成する必要があります(波形ファイルのフォーマットは信号発生器の機種によって違います)。この際、自分で一から作成する代わりに、ZigBee波形生成の専用ソフトウェアがあると非常に便利です。

 妨害波を用いた受信機テストを行う場合は、Golden Deviceに加えて妨害波用にベクトル信号発生器を使用するか、ベクトル信号発生器を2台使用します。

 アナログ信号発生器では、デジタル変調信号は出力できませんが、デジタル信号発生器は無変調信号を出力することも可能です。つまり、デジタル信号発生器があれば、技適・IEEEともに信号発生器が必要な項目はカバーできることになります。

 では、測定器選定の際のポイントをまとめます。

  • 技適には掃引型スペアナが必要
    (パワーを技適準拠で測定するにはアナログタイプのスペアナとパワーメータ)
  • 技適の一部の項目は、アナログ信号発生器が必要
  • IEEEの送信系試験には、掃引型スペアナに加えて変調解析ツールが必要
  • IEEEの受信系試験には、ベクトル信号発生器が必要

 次回からは、いよいよIEEE試験と技適の中身を解説していきます。

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