ASICとFPGAの対比で見る“転換点”:FPGA Watch(2)(2/2 ページ)
ASICとFPGAが迎えた本格的な転換点とは? 双方の特長を踏まえたうえで、半導体製造プロセスにおけるテクノロジ・ギャップについて解説する
ASICとFPGAが迎えた本格的な転換点
続いて、半導体の製造プロセスでASICとFPGAを比較してみます。
ASICの方は、デザイン・スタート(ユーザーによる採用)の数のマジョリティとなっているプロセス・ノードがどれかを調べた結果です。図2のように、FPGAが90nmプロセス・ノードを採用した2005年にASICとのテクノロジ・ギャップがはじまりました。そして、2007年にはギャップがプロセス2世代に、そして2008年には3世代に広がっていきました。
図3は、130nmプロセスによるASICのチップ・サイズと、130nmおよび40nmプロセスのFPGA(アルテラのStratixシリーズ)を比較したものです。ご覧のとおり、130nm ASICと40nm FPGAのチップ・サイズは同等レベルになります。そして、アルテラ独自のHardCopy ASIC手法を使えば、さらなる低コスト化、低消費電力化のためのASIC化を低リスクで達成できます。
今年(2010年)に入り、FPGA業界で28nmプロセスの波が訪れています。2月にアルテラが「28nm世代のテクノロジとイノベーション」を発表し、その後、ザイリンクスも28nmプロセスのプランを発表しています。ASICデザインのマジョリティは90nmに移行することも考えられますが、このギャップは維持されるか、むしろ今後も広がっていくことが予想されます。また、ASICデザイン・スタートの絶対数は、先に述べた理由で激減しており、その傾向も今後同様に続くと考えられています。
あらためて「ASICとは何か?」
ここまで、ASICとFPGAを対比させて話を進めてきました。本稿の最後にきて、この枠組みが果たして意味のあることなのか? という疑問が生じてきました。冒頭に書いたように、ASICは特定用途向けICです。もう少し現実的にいえば、特定用途向け(アプリケーション・スペシフィック)、またはユーザーの自分専用の目的向け(カスタマー・スペシフィック)のカスタム・ロジック・デバイスです。
一方、FPGAはフィールドでプログラマブルにするために、メーカー出荷時はメモリと同じように汎用品扱いになっていますが、用途から見ればアプリケーション・スペシフィック、あるいはカスタマー・スペシフィックなカスタム・ロジック・デバイスです。
ASICを分類すると配線層だけでカスタマイズする「Gate Array」と呼ばれるものと、チップのすべての層を専用に作る「セル・ベース方式」と呼ばれるものがあるのですが(実質的に、極端な狭義としてはセル・ベース方式だけを指す場合もあります)、これまで、ASICとは別のものとして扱われていたFPGAも、広い意味ではASICの分類のうちの1つだと考えてよいと思います。そして、ASSPに関しても、従来の狭義のASIC手法による開発から、FPGAを提供形態とした新しいASSPビジネスの増加が十分に考えられます。
今回は、ハイエンドな機能・性能に焦点を当ててASICとFPGAの関係について述べてきましたが、この話題はこれくらいにしておきます。もしかすると、このような話題になると「FPGAの設計は、ASICよりも難しくなっているのでは?」という印象を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。次回、そのあたりを詳しく紹介したいと思います。(次回に続く)
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