ワーストケースと二乗和平方根って、何?:公差解析 基本中の基本(2)(4/4 ページ)
今回は、日本のメーカーに潜入! そこで出会った生産管理技術者・デイちゃんと一緒に公差積み上げの計算を実際にやってみた。
へへへ。お腹すいちゃった。この続きはご飯食べてからにしよう!
賛成! 俺も腹減っちゃった。食堂行こうぜ〜
一緒に食堂へ行かない? と声を掛けようとしてアズーが振り返ると、……おじさんの姿はもうそこにありませんでした。
おい! また、おじさんが消えたぞ!!
ちょっとアズー! アンタがお腹鳴らすから、肝心なところでおじさん消えちゃったじゃない! お腹をすかしている場合じゃないわ。どーすんのよ! デイちゃんの問題も片付かないままよ!
えっと……。まぁ、なんとかなるよぉ。ご飯食べたらおじさんがさっきいってた『ぶんさんのカホなんとか』を調べてみよう!
ほんっと能天気ねぇ……
ここまでのおさらい
公差解析を行う場合、片側公差はプラスマイナス公差に置き換えましょう。
- ケースの幅:10.0 +0.3,-0 → 10.15±0.15(mm)
- 部品A:φ4.9 +0,-0.1 → 4.85±0.05(mm)
ワーストケース
公差の最悪値を積み上げ、部品を組み立てた際に起こり得る最悪な状態を予測する方法です。
10.15−(4.85×2)±(0.15+0.05+0.05) → 0.45 ± 0.25(mm)
よって、スキマの範囲は0.2〜0.7(mm)!
二乗和平方根(Root Sum Squire)
起こり得る可能性の少ない公差の最大・最小領域の寸法を含めずに、それぞれの公差を二乗して積み上げ、平方根で返すことで得られるバラツキの予測値です。
よって、スキマの範囲は0.28〜0.62(mm)
ワーストケースと二乗和平方根、どちらの方法を計算として適用するかは、状況に応じます。おじさんが話していたように、生産数が少なく、どの寸法で出来上がってくるか予測がつかない場合や、製品の不良が人命につながるなど、ワーストケースを使った公差積み上げで保険を掛けるという方法もあります。しかしワーストケースを満たそうとすると、設定される公差の値も小さくなるため、結果として高コスト製造となる場合もあります。
片や、二乗和平方根は、ある程度の不良を了承したうえでの計算方法になります。大量生産を行う場合には、全てを要求範囲内に入れ込むか、もしくは1%未満の不良は許容するかによって、作り方も品質の守り方にも変化が出ます。
このように、コストと品質、要求される性能、何を優先させるかで適した方法を選択してみませんか。
次回は二乗和平方根の背景や制約についてアズーたちが学びます! デイちゃんのスキマの値はどう落ち着くのでしょうか!? (次回に続く)
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 公差がなぜ今必要なのか? 本当は日本人が得意なことのはず
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第1回はなぜ今、公差が必要なのかについて話をする。 - 複数次元の公差積み上げはとても疲れるよ
公差解析の例題を解くシリーズ。今回は3次元公差解析にチャレンジ。X方向とY方向の2成分で計算してみたけれど、とっても大変! - ど根性! 1つ1つの寸法の係数を計算しよう
今回はちょっと時間をかけて公差を計算してみた。疑いの目を忘れずに、くじけずに挑戦しよう。途中で居眠りしたら駄目っ! - 地球には重力があるからずれるのさ、部品が
組み立て図の世界には、重力がない。でも実際、部品を組み立てていくときには重力がある。その影響でどれくらいずれるのか計算しよう。