競合CADベンダが集まり、設計者CAEを語る:ベンダさん、全員集合! 設計者CAE討論(2)(2/3 ページ)
設計者向けの解析ソフトウェア(CAE)について、関係者たちが一堂に会してとことん討論します。さてあなたの使っているソフトウェアのベンダさんは、出てくるでしょうか。
設計者のエンジニアリング力の現状とCAE
“「ミーゼス応力って何」「主応力って何」「どっちをどういうときに使えばいいの」って、本当に純粋で基本的なことで悩んでいらっしゃる。”
――「解析工房」という解析に関する教育プログラムを運営している栗崎氏。市場競争が激化していく一方で、設計者のエンジニアリング力の低下も感じているといいます。栗崎氏は、前回同様、今回もこのことについて述べたのですが……。
千葉 ミーゼス応力、主応力って……それぐらいなら参考書を読めば分かるのではないですか? 日ごろの業務にリスクを強く感じているのなら、なおさらかと……。
栗崎 「参考書や学校で勉強するべき」という考え方が、とにかく通用しないのですよ。それから、ひどい場合「上司にいわれたから、(解析工房に)来ました」という人も。実は、エンジニアリング力以前の問題で、人間力が欠けている場合も多いのかもしれません。その目に生命力がないというか……。
千葉 そうですか……。
栗崎 私はMONOistで材料力学とFEMの基礎について記事を書いてきました。最近、私の前の職場の先輩とお会いしたのですが、「あんな簡単な記事、誰も読まないでしょう」というのです。しかし、私の記事は現に読まれているし、解析工房のニーズもあるわけです。それをお伝えしたところ、「あそこまで説明しないと(設計者は)分からないのか……。それじゃあ日本の未来は、ないな……」と嘆いていらっしゃいました。ともかく、ソフトを提供する側は、そういう人たちもソフトを使う可能性が大いにあることを十分認識した方がいいと思うのですよ。
――御社では、エンジニアリング力がない方を支援する座学教育プログラムは持っていらっしゃいますか。
長谷川 代理店の担当者さんにも解析教育のプログラムを受講していただき、ユーザーさんには当社が用意した教育パック(1日間)と併せてツールを提案します。教育プログラムでは、材料力学から入り、解析とはなんぞや、メッシュとはなんぞやというところから学んでいただけます。設計者のエンジニアリング力アップ支援については、セミナーを開催するなどの活動を昨年からやってきました。
栗崎 Moldflowの「なでしこクラブ」(女性ユーザー限定の座学教育実習、前回参照)のような活動は、Algorではやっていないのですか?
長谷川 残念ながら、現時点では行っていません。
大澤 単にコマンドの操作教育ではなく、設計で直面している問題について解析ツールでどのように解決すればよいのかを導けるような、エンジニアリング力を向上させるための実践的な教育もユーザーさんやコンサルパートナーさんと一緒になって取り組むようにしています。
何 代理店のエンジニアさんに協力していただき、ユーザーサポートをしています。半日程度なのであまり深くは入れませんが、お客さんの要望に応じて材料力学など座学系のセミナーも不定期に開いています。また弊社主催で体験セミナーを毎月東京、名古屋で行っており、販売代理店さん主催セミナーも日本各地で行っています。
千葉 当社もソフトの販売を代理店のエンジニアさんに委託しています。当社で定期的な座学の教育プログラムを用意することはないのですが、代理店さんがそういったプログラムを持っている場合があり、ユーザーさんにはそちらを利用していただいています。有限要素法などの座学を含めたセミナーを不定期に行うことはあります。
芸林 当社は、座学教育に関しての定期的なプログラムは持っていません。ただ、コンサルティングの範囲になりますが、当社のサポートエンジニアが現場に入り、解析の導入や方法について支援しながら、ユーザーさんにはOJT的に座学を習得していただいています。
栗崎 座学教育について積極的に取り組んでいらっしゃるベンダさんは、やはり少ないのですね……。
――この件は前回もテーマとして挙がりましたが、CAEユーザーの座学教育について現実的にベンダや代理店がどこまで突っ込めばいいのか……それは、とても悩ましい問題です。このような現状に、例えばもしベンダがとことん付き合ったとしたら、ベンダの方がつぶれてしまう(!?)のかもしれませんし。「お客さんは神さまでしょ?」という前に、導入する側がまず、設計者のエンジニアリング力アップの施策について真剣に考えないといけないのでしょう。
エンジニアリング力不足な設計者と解析
――エンジニアリング力の不足した設計者が、非線形の解析をやってもいいものなのか。少なくとも、お集まりいただいた各社さんのソフトでは、そのようなことを受け入れていらっしゃるように見えると栗崎氏は問います。
長谷川 開発している製品でそれが必要ならば、やるべきでは。
栗崎 しかし、エンジニアリング力の不足した設計者が、その答えから何かが判断ができるのでしょうか。
長谷川 非線形かどうかに限らない話だと思います。解析ツールは、あくまで技術的な判断を支援するためのものですよね。
栗崎 それは逆にいえば、設計者自身のエンジニアリング力がなければ、使うべきでないということになりますか?
長谷川 もし仮にエンジニアリング力がなくても、モノが何とかできてしまっているならば、それは問題ですよ。
千葉 非線形だから、設計者の解析スキルではちょっと無理だろう、ということではないと思います。個々の技術者ではなく、企業としてのエンジニアリング力を考えるべきです。現場の人たちがばらばらに使っていると、個人のエンジニアリング力依存になってしまいます。
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