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IGESが消える日がくるかもしれない?「技術の森」モリモリレビュー(6)(2/2 ページ)

IGESで3次元モデルのデータはきたけれど、読み込んだデータの状態があまりにひどく、結局、自分で一から作り直す。そんな経験はないだろうか?

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IGESのデータ交換で失敗しないためのお約束

 IGESのデータ交換について、栗崎氏に以下のようにアドバイスをまとめていただいた。

【その1】IGESパラメータの設定を合わせる

 IGESをエクスポート/インポートできるCADには大抵の場合、IGES設定のためのパラメータを設定する部分がある。たとえCADの種類は違っても同じようなパラメータが制御できる。パラメータの持つ意味を理解して、エクスポート/インポート双方のCADでパラメータを合わせるのが基本中の基本である。IGESデータそのものにパラメータ設定の一覧表を添付するなどのちょっとした工夫が重要になる。

【その2】IGESで渡す形状はできるだけシンプルに

 可変フィレットなどの連続した複合曲面はIGESのエクスポート/インポートでうまく渡らない可能性がある。複合曲面の修正は非常に時間がかかる作業となるので、フィレットは表現せずにピンカド(完全な角)でモデルを作成し、それをIGESで渡し、それを読み込んだ方のCADでフィレット処理をした方が時間的に早い場合がある。IGESで渡す形状を限定し、さらにできるだけシンプルにすること。特に製品の意匠面など、デザイン性の高い曲面はIGESの受け渡しによる再現性は低いと思った方がよい。

【その3】IGESにかかわる業務プロセスを見直す

 IGESに限らず変換されたデータはチェックする必要がある。IGESから読み込んだデータが複雑であればあるほど、その時間は長くなる。IGES形式でのデータの受け渡しは形状がシンプルであればあるほど受け取り側の作り込みが必要となる。この両者はトレードオフの関係にあり、どちらにせよIGESデータによる図面や形状の受け渡しには、時間が必要となる。IGESによるデータの受け渡しは50%程度の時間の節約と考え、チェックや手直しに時間を見込むように業務プロセスを考えるべきである。

Google Manufacturing、恐るべし!

 「ここ数年のうちに、中間ファイルという存在そのものがなくなってしまうかもしれませんね」(栗崎氏)。

 今回の本題から少しそれてしまうが、データフォーマットの話題から派生した興味深い話題ということで、以下に紹介させていただく。

 最近、栗崎氏が特に注目しているのは、グーグルの動向。同社は、3次元モデリングツール「Google SketchUp」(以下、SketchUp)の提供や、電気自動車(EV)のスマートグリッド構想にまで手を広げてきている。「このようにモノづくりの分野にまで進出してきたグーグルは、もしかして『Google Manufacturing』*1 なんていうものを生み出してしまうかも」と栗崎氏はいう。もしそのようなものが実現するなら、これまでCADベンダのビジネスは大きく覆されてしまうだろう。 *1 この名前はあくまで栗崎氏の想像によるものであり、実在しません。


 「例えばですが、もしグーグルがミッドレンジのCADベンダを買収したらどうでしょう? ミッドレンジCADをSketchUpのような感じで配布してしまうかもしれませんよ。もちろんフリーで、でしょう」(栗崎氏)。やがてグーグルが採用したCADのフォーマットが、おのずと業界標準となり、中間ファイルも不要となってしまう。

 この話を聞いた宇都宮氏も、大いに共感。「そうなると、加工業の人たちは、真っ先にそちらを採用してしまうでしょうね」。

 米ダッソー・システムズ・ソリッドワークスも先日、クラウド・コンピューティングを利用したシステムについて発表した。さらにWeb上(Webサーバ上)に同社の「SolidWorks」のプログラムそのものを置いてしまう可能性についても表明。


 “クラウドCAD”の可能性としては、以下のようなことも考えられると栗崎氏はいう。

 例えばスケッチや押し出し、フィレットなど基本的なモデリング機能は無料で提供し、可変フィレット(ところどころで半径寸法が変わるフィレット)のような少し高度な機能はユーザーが150円で買い取る。そうしたことが繰り返されることで、ベンダがそこに介在しなくとも、ある企業にとって使いやすいCADが低コストかつ自動的にできあがってしまう。また業界によってどういうCADが望ましいのかも、それによりはっきりと見えてくるだろう。

 「APIを公開して、可変フィレットのオプションもユーザー自身が作成できるような仕組みだと、ユーザー間の競争も生まれます。価格競争にもなるでしょうし。作成者がロイヤリティをもらえるような仕組みを作るなどもあり得ますね」(栗崎氏)。つまりオプション機能も、ユーザーたちの手によって向上させていける。

 また、ネジをモデリングしているとネジ関連の広告が、モデルにマテリアルを設定すると、その材料関連の広告が出るなどもあり得るかもしれない……。

 「IT業界は、やるリスクより、やらないリスクの方が大きいんですよ。技術の進化のスピードが速いですから」と栗崎氏はいう。自らもCAD関連の技術開発に携わる同氏の頭の中には、早速、新しいCADの仕組みの具体案があるという。いまは明かせないとのことだが、それが果たしてどういうものなのか、正式に明らかになる日が待ち遠しい。

 次回もお楽しみに!

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