恐怖のケミカルクラック&ウェルドライン:甚さんの設計サバイバル大特訓(3)(1/3 ページ)
変身度が非常に大きい樹脂部品は、設計も加工も非常に難しい。その理由が、ケミカルクラックとウェルドラインだ。
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
こんなことがあるのでしょうか? ――第2回の冒頭を見てみましょう……。
いつも社告とリコールを出しているのは、自動車メーカーのA社とB社のほぼ2社。家電はC社とD社とE社の3社。OA事務機器はF社。企業によっては、人命をも容易に奪い、何度も繰り返しています!
また予言が的中してしまいました! 残念です。
2010年1月、これらの企業から社告・リコールが立て続けに発表されました。最近の社告・リコールは、企業名が特定化しているのが特徴です。また、その発生のインターバルが短縮化し、ますます被害が大規模化している傾向があります。
ある日、1人の韓国人留学生(大学院卒)から相談を受けました。この春にあこがれの日本企業に就職するそうですが、「日本企業に就職するのが不安。やはり、帰国すべきか」と。筆者は、アドバイスの言葉に詰まりました。
ここで、図1を見ましょう。
筆者は、中国、香港、韓国でも「超低コスト化手法」や「トラブル完全対策法」のセミナーやコンサルタントを実施していますが、これらの国々において、受講席は最前列から埋まります。しかし日本の場合は、部屋の後ろ、しかも、その両端から埋まります。その席は、心理学から「やる気にない席」として新人コンサルタントから真っ先に学ぶ知識です。
その前に日本ではそれらのセミナーを受講すらしません。どうして、このような事態になってしまったのでしょう?
日本企業は、コストも品質も興味がないのでしょうか?
一方、先ほどの諸外国では、帰国できないほどの質問攻めにあうのです。
「百年に1度の大不景気」なのに、「安かろう、悪かろう」の戦後の日本企業に戻ったような気がします。しかし、そのころの日本は、「やる気は満々」であったのです。しかしいま、「理科離れ」、「工学離れ」、そして、企業内部では「技術者離れ」が加速しています。良君の上司、“出世逃げ課長”のように……。
べらんめぇ! “出世逃げ”の成果主義か、直下の部下を育成せず、2階級昇格すれば、関係ない……よくできているなぁ! 感心しちまったぜぃ!
甚さん! 前回も同じことをいっていましたよ!大丈夫ですか? もう、朝食はとりましたか?
*「出世逃げ」については、前回をご覧ください。
あったりめぇだ! 食ったぞ。下町の朝飯は、なんたって、納豆かシャケだ。アジの干物でもいい。納豆食わねぇヤツは……日本人じゃねぇ!
甚さん、僕だって食べてますよ。ヨシギューの納豆定食、370円。ご飯大盛りで、ちょうど400円!
ヨシギューの朝定食ってか? ……ちょいと、オレサマはうるさいぞ。焼き魚定食に、『別納豆』を追加注文するのがツウってもんよ。牛丼並に『別納豆』……これも江戸の下町じゃ、グウ! だ。
牛丼のツユに納豆があうんですよねぇ! どうしてかなぁ?
ただし、ヨシギューで納豆を単品注文できるのは、朝10時までだ。3分ぐらいの遅刻ならよぉ、どうにか許してくれるってぇもんよ。その点、松屋はいつでも、納豆単品の注文がOKだ。ネギもいっぱい付けてくれる。
甚さん、どうして、そんなに牛丼屋の朝定食に詳しいのですか?
それは、聞くな! 武士は食わねど爪楊枝(つまようじ)……いいか、良君! 技術を学ぶのもいいが、それよりも、いい奥さんをもらえ!
“爪”楊枝!? “高”楊枝じゃないの? というか、いい奥さんをって、どういう意味ですか? 興味津々……。
さて前回も説明しましたが、設計と加工において、板金部品・樹脂部品・切削部品の中で、樹脂部品は最も難しい部品です。なぜならば、「変身度」が最大だからです。変身度に関しては、第2回の「図3 加工法別による変身の内容と変身度」で、もう一度復習してから、この先へ進みましょう。
最難関たるゆえんが、今回のテーマである「ケミカルクラック」と「ウェルドライン」です。
いいか、良君! まずは『恐怖のケミカルクラックから逃れる設計サバイバル術』を教えっからよぉ、耳の穴、かっぽじってよく聞きやがれっ!
その前に……、以下を確認しましょう。
設計サバイバル・ノート
【ケミカルクラックとは】
ケミカルクラックとは、「樹脂にケミカル(化学物質)が触れると割れる」と学校では習う場合がありますが、もう少し知識を深めておきましょう。
- ケミカルアタック
- ケミカルクラック
- ソルベントクラック
などと、いろいろな呼び方がありますが、筆者のコンサルタント先の皆さまは、「ケミカルクラック」と呼んでいますので、今回はそれに統一します。
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