自社開発品が特許侵害に?! 身近に潜む知財リスク:自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識(1)(3/5 ページ)
技術開発戦略には知財管理が必須。ロボットアーム工業に降りかかる災難を例に、まずは知財リスクの確認を。
事例1:聞いたことのない企業から警告状が……
ここからは、このロボットアーム工業株式会社に降りかかるトラブルを題材に、実際に起こり得る知財リスクを考えていきましょう。
ご自身の会社で同様の出来事が合った場合、皆さんならどう対処するかを考えながら読んでみてください。
◇ ◇ ◇
〜ある日、ロボットアーム工業株式会社に聞いたことのない企業から手紙が届きました〜
社長!! 日本知財開発産業という名前も聞いたことのない企業から警告状が届きました!!
警告状?
はい、警告状です。日本知財開発産業の警告状によれば、うちの産業用ロボットアームUDEが、日本知財開発産業の保有している特許を侵害しているということです。ちなみに日本知財開発産業自体でロボットアームの製造は行っていません。
その日本知財開発産業の保有特許の内容は確認してみたかね?
はい、内容は確認しました。しかし……。
しかし、何だね?
あの、特許公報の表現が難しくて、いまいち内容が理解できないんです……。
ちなみに、日本知財開発産業からの要求は?
産業用ロボットアームUDEの販売数量に応じたロイヤリティを支払えといってきています。ロイヤリティは販売金額の10%です。
10%とは高いな!! ロイヤリティ10%となるともうけが吹っ飛んでしまうな。地西君、知り合いのDEF特許事務所の弁理士先生に相談してみてくれたまえ。
分かりました。
〜〜地西さんがDEF特許事務所を訪問して、弁理士の方と相談しています。〜〜
まず日本知財開発産業の保有特許と御社の産業用ロボットアームUDEについて、権利範囲に含まれるかいなか検討してみましたが、日本知財開発産業の保有特許が非常に広いクレームとなっているので、残念ながら御社の製品が侵害している可能性が高いといえます。
はぁ……(日本語なのか? 意味が理解できないが、取りあえず日本知財開発産業の特許を侵害していることは間違いなさそうだ)。
日本知財開発産業の保有特許に対する無効資料調査(注4)を別途行っていますが、なかなかいい結果は得られそうにありません。
となると、弊社はどうしたらいいでしょうか?
そうですね。裁判に持ち込んでも負けてしまう可能性が高いと思うので、直接日本知財開発産業と交渉するほかないでしょうね。
う〜ん、そうですか……。
〜〜地西さんがDEF特許事務所から戻ってきて、路保社長に報告しています。〜〜
社長、弁理士先生の見解では日本知財開発産業と直接交渉するほかないということでした。
そうか……、仕方ない、日本知財開発産業と交渉するか……。
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この場合はお金で解決するしか道はない
事例1のように競合他社ではなく、全く知らない企業から警告状が送られてくるケースもあります。競合他社であれば、自社と同様の研究開発を行っていますので、お互いに持っている特許を利用できるようにするクロスライセンスなどの手段が選べます。
しかし、今回の事例のように相手企業が特許だけ持っているようなケースでは、お金で解決するほかありません。せっかく事業を軌道に乗せても、他社に特許を取られてロイヤリティを支払わなければいけないと、その分自社のもうけが少なくなってしまいます。自社の事業を守るためにもしっかりと特許権を中心とした知的財産権を確保する必要があります。
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