PLMシステム改善PJ担当者のための覚書: 戦略構築のためのライフサイクル管理論(5)(3/3 ページ)
自社の製品開発戦略をしっかり把握しているでしょうか? 製品開発・生産技術の効率化を追求していたとしても、しっかりとした戦略とマネジメント意識がなければ意味がありません。本連載では、マネジメント技術としてのライフサイクル管理を考えていきます。
企業力を高められるPLMシステム
PLMシステムの効用とそれを実現するためのフレームワークについてまとめると以下の3つのポイントが挙げられます。
ポイント1.情報を一元的に管理できること
PLMシステムを構築することで製品開発にかかわる情報を一元的に蓄積できるようになります。
このことは製品開発に関するノウハウを蓄積することと同義です。
製品開発の過去のノウハウを活用するということは、誰かが一度検討し完成させた設計内容を重複して検討することがなくなるため、余計な設計検討工数を削減し設計時間の短縮を実現できます。
また過去に実績のあるノウハウを使うということは品質に関してもある程度担保が取れていることになります。
PLMシステムを用いてモノづくりのノウハウを蓄積するシステムを構築するということは、設計業務の標準化や流用設計を推進する大きな仕組みを持つことになります。
ポイント2.蓄積された情報が活用できること
一方PLMシステムに蓄積されている情報を有効活用する方法も検討しなければなりません。
PLMシステムを使って、常に最新の(または適切な)バージョンにアクセスできるようするとともに、作業中の各データの作業進ちょくが一目で分かる仕掛けも必要です。
PLMシステムで管理されているデータはいくつもの世代に分かれて管理されています。よってPLMシステムに蓄積されているデータをノウハウとして活用させるためには、過去の情報と最新の情報とでは何が変更されたのかの差分を簡単に把握できるような仕掛けがあることも重要なポイントです。
情報の変更点や変化点が分かりやすくなることで、設計に関する問題点や影響範囲を気付かせるきっかけとなります。
日々多忙な設計業務をこなしている設計者に対し、"気付き"を提供する仕掛けを提供することは設計業務の効率化に大きく貢献できるポイントとなります。
ポイント3.ほしい情報がすぐ手に入ること
PLMシステムを使って管理されている情報が簡単に検索でき、探している情報に正確にたどり着けるようにしておく必要がありますが、検索機能というものは自分の欲しいものしか検索できません。
自分が知らなかったことに対しても関連情報として利用者に気付かせる必要があります。そのためにはPLMシステムが持つリレーションという機能を活用するのがいいでしょう。
製品情報がリレーションで関連付けて管理されていることで、自分の知っているキーワードを中心にほかの人がコンカレントに進めている作業内容を簡単に見つけることができます。
このような仕掛けを構築することでちょうどWebの世界が「リンク」という仕掛けで知識のネットワークが構築されているように、自社製品のモノづくりに関する知識データベースを構築していくことが可能となります。
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PLMシステムは製造業における製品開発において非常に有用なシステムプラットフォームです。
しかし、PLMシステムのノウハウに関する情報がまだ十分に開示でされていないため、PLMシステム構築は非常に難しく大変なイメージがあります。
ここで紹介したPLMシステム構築のポイントを参考にすることで、皆さんの業務に合ったPLMシステム構築のヒントになれば幸いです。
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