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UMLと形式手法のハイブリッド仕様が鍵となるかETロボコン2009、挑戦記(9)(2/3 ページ)

SysML、VDMなど、新しいモデリング言語/方法論が多数登場した今年のETロボコン。審査員からの渇も含め、今年のトレンドを紹介する。

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RCXの統括とNXTの可能性

 パネルディスカッションは、本部審査委員 斉藤 司氏による「RCXの統括とNXTの可能性」から始まった。斉藤氏はUMLロボコン時代(2002年)からの歴代モデル(エクセレントモデルを中心に)紹介し、その後、RCXの製造終了に伴って、来年からは走行体がNXTのみになる旨を述べた。

 なお、2輪倒立型のNXTを採用した理由について斉藤氏は、「RCXのようなパスファインダー型も検討したが、モータ特性の関係でうまく走れず、さらに新しさと高度技術への挑戦が必要なことから、倒立型になった」と説明した。

NXT走行体、1年目としての到達点

 今年から採用されたNXTだが、「APIを限界まで使用して高速化を図るチーム」「モータの特性を調べ、高出力・特性のあった左右のモータを選択するチーム」など、移行の年としては、すでにできることは出尽くした感があるという。ただし、今後の可能性として、斉藤氏は以下の6点を紹介した。

  • 倒立制御ライブラリの進化、自作化による走行の高速化
  • マップデータとコースのズレの補正方法の工夫
  • RCXでの資源の有効活用、SPLEなどのスキル向上
  • 豊富な資源の有効活用 
    MDDのコード自動生成ツールの全面適用
  • ログ機能の高度化 
    パラメータチューニングの容易化 
    開発環境、シミュレーション環境の高度化

NXTの限界に挑戦しよう!!

 斉藤氏は最後に「ETロボコンは、組み込み開発におけるMDD技術の習得の場であり、新しい技術の実験・研究の場でもある。これまでRCXで取り組んできた技術をさらに向上させ、定着することに期待している」と述べ、MATLAB/SimlinkやSPL、SoftwareFactory、MDA、DSLなど、新たな挑戦・研究の成果を共有し合うことで、全体でのスパイラルアップを目指したいとした。

モデルに対する教育的指導

 次に、本部審査委員の太田 寛氏と久保秋 真氏からは「モデルに対する教育的指導」というテーマで、コンポーネント図とステートマシン図の使い方について次のような指摘があった。

クラス図かコンポーネント図か?

コンポーネント図とは
コンポーネント図とは

 「皆さんのクラス図を見ていると、コンポーネント図と取れるものがいくつかあった。何となく最近の傾向として、大きくクラス図を書いて、上から下に階層化/パッケージ化してというのが、王道になっている。ぜひ来年はコンポーネント図を使って、その辺をきちんと記述してほしい」(太田氏)

それって状態?

 「今回見た中でいろいろな状態遷移図、ステートマシン図があったが、難所への切り替えがイベントになっているものなど、気になる状態遷移図が多かった。イベントとは、ひとことでいうなれば、“そのことが発生しないと、自分たちのプログラムが前に進めない、次の処理に進めないもの”。例えば時間が経つのを待っているとか、外からのセンサの入力を待っているなど」(久保秋氏)

 久保秋氏は例として下図を挙げ、「これはライントレースをしていて、ラインから外れたら反転してまたラインを見つけたら戻ってとくるというものだが、このとき、ライントレース中という状態が、実はこのタイムアウトをするというイベントか、あるいはマーカーを検出するというイベントを待っている状態と見ることができる」と説明した。

ステートマシン図とは
ステートマシン図とは

 「各チームのステートマシン図を見てみましょう。何を待っているのか、その遷移に書かれているのは、本当にイベントか、間違ってアクションを書いてはいないか。もし順番に処理するということを書きたかったのであれば、そのときはステートマシン図ではなく、アクティビティ図を使うと良い。また、記法としては合っていたかもしれないが、書いている内容は意味が異なって使われる場合もあるので、記法として合っているかではなく、何を表したい図なのかをもう一度考えながら、状態マシン図なりステートマシン図を書いて欲しい」(久保秋氏)

複雑、未整理なモデルにもの申す!

 パネルディスカッション中盤では、関西地区 審査委員長の岩橋 正実氏から複雑なモデルに対して次のような意見が述べられた。

 「独自色を出したり、新しい技術を使うのはとても良いこと。しかし、審査員もすべてを知っているわけではないので、場合によってはセミナーなどに足を運んで勉強しないと審査ができないということがある。審査委員(読み手)のことを考え、まず何がしたいのかを明確にし、どういう戦略に基づいてどのような要求があるのかを、審査委員が分かるように表現して欲しい。また、役割ごとに分けて記述するのではなく、クラス図の配置を誰が見ても読み取りやすいように書いてほしい」(岩橋氏)

 ETロボコンはソフトウェアで他チームとの差別化を図るため、新しい技術は必ずと必要になる。よって共通のハードウェアでいかにソフトウェアで価値を生み出すかという点を審査員に分かりやすいように詳しく記載すると良いという。

 この件については本部審査委員長の渡辺氏からも「(審査員の)愚痴のように聞こえてしまうかもしれないが、モデルは見てもらってなんぼで、逆に審査委員が見て分からないということは、皆さんがもしそれを現場で使ったときに、モデルをあまり慣れていない方が見たらより分からない。よって、本当に分かりやすいモデルを書くことは非常に大切」とのコメントが述べられた。

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