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Androidビジネスの足音が聞こえた!!組み込みイベントレポート(2/2 ページ)

注目のAndroidや組み込みデバイスとして勢いづくFPGAなど、ET会場を回って印象に残ったベンダの取り組み・技術動向を紹介する。

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進化するマトリックス構造解析と静的解析

 組み込み分野で“品質確保”は大きなテーマになっているが、ET2009でも多くの最新検証手法が紹介されていた。

 例えば、テクマトリックスが販売を手掛けるアーキテクチャ分析ツール「Lattix」(開発元:米Lattix)が目を引いた。

 Lattixは「DSM(Dependency Structure Matrix)」手法を用い、プログラムを構成するタスク間の依存関係をマトリックス化するツールだ。


モデリングツールで設計したモデル図(UML/SysML)を「Lattix」に読み込み、DSM手法でアーキテクチャ解析
画像7 モデリングツールで設計したモデル図(UML/SysML)を「Lattix」に読み込み、DSM手法でアーキテクチャ解析を行う

 「新規開発だけでなく、既存資産の保守にも役立つ」(説明員)という。また、同社ではLattixを活用した“モデル検証”を提案していた。日本IBM「Rational Rhapsody」、テクノロジックアート「PatternWeaver」などのモデリングツールで作成したUML/SysML図を読み込み、構造を解析できるのだ。組み込みソフトウェアの大規模化に合わせて、モデル駆動開発が徐々に浸透する中で興味深い検証技術だろう。

関連リンク:
テクマトリックス

 ここ数年、静的解析ツールへの注目度は増しているが、ET2009では、富士通ソフトウェアテクノロジーズ「PGRelief」、コベリティ「Coverity Static Analysis」など定番の製品に混じり、米Klocworkが開発した「Insight」が注目を集めていた(国内代理店:シーイーシーなど)。

 Insightは、独自の静的解析手法(ビルドプロセス掌握、コンパイルと構文解析、データフロー解析、記号論理学)を駆使し、品質・セキュリティ・保守性を引き下げる不具合を網羅的に検出する。そのため、一般の静的解析ツールでは発見しにくいメモリやリソースのリーク、バッファオーバーフロー、デッドコードなども発見できるという。この分野は使い勝手のよいツールが次々登場しているので目が離せない。

関連リンク:
コベリティ
Klocwork Insight

高速トランシーバで適用領域広げるFPGA

 組み込みシステムに欠かせないデバイスとなってきたFPGA。ET2009でも二大巨頭のブースは人だかりが絶えず、FPGAの適用領域が広がっている様を感じさせた。

11.3Gbpsトランシーバ回路を内蔵するStratix IV GTの信号品質の高さを示すため、出力波形(アイパターン)を見せていた
画像8 11.3Gbpsトランシーバ回路を内蔵するStratix IV GTの信号品質の高さを示すため、出力波形(アイパターン)を見せていた

 日本アルテラ/アルティマは、最新のハイエンド製品「Stratix IV GT」、ミッドレンジ製品「Arria II GX」をデモ展示し、高速トランシーバ内蔵がもたらすソリューションを訴求していた。まず、40nmプロセス製品かつ業界最速となる11.3Gbpsトランシーバ回路を最大24個内蔵できるStratix IV GTの場合、「(10Gbps)光モジュールに直結できるのが最大の売り」という(説明員)。「シグナル・インテグリティ開発キット」により、10Gbps出力時における信号品質の安定ぶりを示していた。同様に40nm FPGAであり、3.75Gbpsトランシーバ回路を最大16個搭載できるArria II GXでは、PCI Express Gen1のハードIPを内蔵していることによる開発の容易さを訴えていた。

 FPGAに組み込むソフトプロセッサコア「Nios II」も“エコシステム”を着実に形成しているのが見て取れた。例えば、軽量なことで有名なユビキタス製TCP/IPスタックをNios IIに移植したことにより、FPGA上のOSレス環境でのTCP/IP通信を実現したという。ローエンド製品「Cyclone III」を中心にFPGAの採用先が広がりそうだ。

関連リンク:
アルテラ

 ザイリンクス/東京エレクトロンデバイス(以下、TED)も最新FPGAの「Spartan-6」「Virtex-6」を前面に押し出し、特定分野に向けた“プラットフォーム(開発・評価キット)”の提案に力を入れていた。

 例えば、低価格FPGAのSpartan-6では、ディスプレイ向けとしてTED製「高速シリアルインターフェイス評価プラットフォーム」(2010年1月に発売予定)が披露されていた。同ボードは、3.125Gbpsトランシーバ回路を内蔵する「Spartan-6 LXT」の最上位品を搭載し、FMC(FPGA Mezzanine Card)コネクタにより、多様なインターフェイスを介した画像処理を評価できる。「FPGA採用が進む薄型テレビを特に狙っている」(説明員)という。

ハイエンドFPGA「Virtex-6」に向けた評価キット「ML605」
画像9 ハイエンドFPGA「Virtex-6」に向けた評価キット「ML605」。評価ボード、FPGA開発環境、参照設計をオールインワン提供する

 一方、40nmプロセスを採用したハイエンドFPGAのVirtex-6では、分野を問わない基本プラットフォームとして評価キット「ML605」が展示されていた。ML605は、Virtex-6を実装した評価ボード、FPGA開発環境「ISE Design Suite」、リファレンス設計などをオールインワン提供するものである。なお、ML605に搭載されるのは、6.5Gbpsトランシーバ回路を内蔵する「Virtex-6 LXT」。アルテラのStratix IV GTと並ぶ11.2Gbpsトランシーバ回路を内蔵する最上位「Virtex-6 HXT」は展示されていなかったが、同社発表によれば、2009年12月からサンプル出荷が始まるようで、両者のしのぎ合いは当面続きそうだ。

関連リンク:
ザイリンクス

 国内では依然、FPGA(PDL含む)市場はASIC市場の10分の1程度と見られているが、ET2009を見る限り、FPGA陣営はますます勢いづいており、その差はどんどん縮まっていくのは間違いないだろう。

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