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Androidビジネスの足音が聞こえた!!組み込みイベントレポート(1/2 ページ)

注目のAndroidや組み込みデバイスとして勢いづくFPGAなど、ET会場を回って印象に残ったベンダの取り組み・技術動向を紹介する。

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 ET2009の主役は、どの企業・団体でもなく「Android」だったことは衆目が一致するだろう。

 2008年のET2008からAndroidは“組み込みプラットフォーム”として頭角を現していたが、今回はその存在の大きさを見せつけた。Android関連技術を展示していた企業の担当者ですら、「ここまでAndroidばかりとは……」と驚きを隠さない。

家電への展開を狙ったAndroidソリューション

 特に、ET2008からAndroidを推していた企業は、一日の長があり、より現実的な提案を提示していた。その1社は、富士通ソフトウェアテクノロジーズ(以下、FST)である。家電への展開を意識したAndroidベースのDLNA(Digital Living Network Alliance)デバイス、地デジ(フルセグ・ワンセグ)デバイスを展示していた。

 FSTは、2009年春から「DLNAワンストップサービス」を手がけているが(詳しくはニュース記事を参照のこと)、今回はAndroidに富士通のDLNAミドルウェア「Inspirium HomeNetworkライブラリ for AV」を組み込み、DLNA対応AVプレーヤーを実現。説明員によると、Inspiriumが使用するLinux標準CライブラリとAndroid専用の「Bionic libc」の間に互換性はないが、移植作業は比較的に容易という。「コスト制約が厳しいDLNAクライアントでは無償のAndroidが注目され、試作の引き合いが増えている」と話す。

Androidソリューションを前面で訴求する富士通ソフトウェアテクノロジーズ
画像1 Androidソリューションを前面で訴求する富士通ソフトウェアテクノロジーズ。熱心に説明を聞き込む来場者が多かった

富士通マイクロエレクトロニクス製Socを組み合わせた基盤上にWeb・テレビ・写真再生のAndroidアプリケーションを実装
画像2 富士通マイクロエレクトロニクス製Socを組み合わせた基盤上にWeb・テレビ・写真再生のAndroidアプリケーションを実装

 一方の地デジデバイスは、富士通マイクロエレクトロニクスが開発した携帯機器向け地デジ受信モジュール「MB86A50」とカーナビ・ダッシュボード向けシステムLSI「MB86R01」(ともにプロセッサコアはARM)を基盤とし、Android上にWeb・地デジ・写真再生のデモアプリケーションを実装したものだ。

 これはさまざまな用途が考えられるが、例えば、市販カーナビの国内市場で台数の半分を占めるまでに成長しているPND(Personal Navigation Device)でフルセグ対応が進むかもしれない。



 アットマークテクノも前年からAndroidを訴求していた1社だが、今年はNFC(Near Field Communication)対応の院内情報機器「releaf」が目を引いた。説明員によれば、「納入先の病院にプロトタイプを示し、仕様を最終的に詰めているところ」と商用化が見えている。

院内情報機器「releaf」のプロトタイプ(据置型と携帯型)
画像3 院内情報機器「releaf」のプロトタイプ(据置型と携帯型)。NFCリーダ・ライタ機能はトッパン・フォームズが開発した

 releafは、液晶タッチパネル付き、W-SIM(PHSモジュール)対応のコンピュータ開発キット「Armadillo-500 FX」をカスタマイズしたハードウェアにAndroidアプリケーションを実装。NFCにより、据置端末と診療カードの間で患者情報をやり取りしたり、携帯端末にPHSデータ通信で待ち時間、呼び出し、清算などの情報をリアルタイム表示する。産学フォーラムで開発が進められ、NFCソフトウェア開発はトッパン・フォームズ、W-SIM・PPPデーモンを含めたAndroid移植はアックス、アプリケーション開発はブリリアントサービスが担当したという。

関連リンク:
アットマークテクノ

メンター、キャッツもAndroid市場に参入

 Androidについては、新規参入組も目立った。例えば、組み込み分野ではリアルタイムOS「Nucleus」で知られるメンター・グラフィックスもその1社だ。2009年7月に組み込みLinuxベンダのEmbedded Alleyを買収し(同社発表)、Linux/Android事業に力を入れはじめている。「幅広いプロセッサ・SoCへの対応に加え、ライブラリ・開発環境の品揃えで差別化する」(説明員)とし、すでにMIPS、PowerPC、OMAP35xなどへの移植実績があるとする。

Embedded Alley買収により組み込みLinux/Android市場に本格参入したメンター・グラフィックスに対しては、来場者の関心は高かった
画像4 Embedded Alley買収により組み込みLinux/Android市場に本格参入したメンター・グラフィックスに対しては、来場者の関心は高かった
関連リンク:
メンター・グラフィックス

QuickBoot
画像5 ユビキタスはAndroidの家電適用をにらみ、 Androidシステムを約1秒で高速起動させるミドルウェア「QuickBoot」を実演展示

 組み込み向けプロトコルスタック、ミドルウェアを手掛けるユビキタスは、Android端末を約1秒で起動するミドルウェア「QuickBoot」を実演。これは、PCの待機モードなどで使われる技術「ハイバネーション」を応用したもの。

 同技術は、外部記憶装置に待避させた動作イメージをRAMにすべて読み込んでから起動するが、QuickBootは起動に必要な部分を先に読み込み、起動しながら残りを逐次的に読み込む。そのためデータ量に左右されず、常に約1秒起動を実現しているのだ。「家電にAndroidを適用しようと思えば、起動時間は重要な要素になる」(説明員)。2010年早々の製品化を予定しているという。


関連リンク:
ユビキタス

 キャッツも組み込み向けCASEツール「ZIPC」でAndroid対応版の試作品を披露していた。C/C++版同様に状態遷移表により設計・検証し、ソースコードを自動生成する。エミュレータ、もしくは実機を接続すると、実行中の事象・状態が状態遷移表でハイライト表示され、仕様の不具合が見つけられる。説明員は「まだ、コード自動生成の効率が悪い。来年(2010年)のいまごろには製品化したい」と話していたが、組み込みCASEツールで国内トップシェアを誇るZIPCのAndroid対応はインパクトが大きい。

CASEツール「ZPC」の Android対応版(試作品)
画像6 CASEツール「ZPC」の Android対応版(試作品)。エミュレータを使い実行中の事象・状態を状態遷移図でハイライト表示している
関連リンク:
キャッツ

 ET2009を見て回って、Androidをサポートする動きが一気に吹き出した印象を受けた。もちろん、足りないツールやソリューションはまだ多いだろうが、環境は確実に整いつつある。あるメーカー説明員は「来年は水面下でAndroid関連のビジネスが進み、2、3年後には搭載製品が続々と登場してくる可能性がある」と話していた。

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