OESF、軽量版「Android」への取り組みにも着手:組み込みイベントレポート(1/2 ページ)
ET2009 OESFブース・レポート(後編)。組み込み向けAndroidディストリビューションのデモや、軽量版Androidへの取り組み、そして中国のカーナビ事例などを紹介する。
――OESFはこれまでの活動成果を、2009年11月18から20日の3日間、パシフィコ横浜で開催された「組込み総合技術展 Embedded Technology 2009(以下、ET2009)」の場で披露した。
前編「組み込みシステムを革新する−Androidイノベーション」に引き続き、OESFブース・レポート(後編)をお届けする。
今回は、組み込みシステム向けAndroidディストリビューションへの取り組みや、軽量版Android、中国のカーナビ事例などについて紹介する(OESFブース・レポート前編はコチラから)。
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組み込みシステム向けAndroidディストリビューション「OESF Embedded Master」
2009年8月に取り上げたとおり、現在、OESFのDistributionワーキンググループは、Androidをベースとした、情報家電やSTB、ビジネスフォン、車載機器、医療機器などの組み込みシステム向けのAndroidディストリビューション「OESF Embedded Master(以下、EM)」の開発を進めている。
OESFブースでは、EMの最初のバージョンである「OESF Embedded Master 1(以下、EM1)」に関する展示・デモンストレーションが行われていたほか、Android 2.xベースの「OESF Embedded Master 2(以下、EM2)」へ向けた最新の取り組みについて披露された。
初披露! EM1のデモンストレーション
展示ブースでは、EM1への搭載機能の一部である「Pointing Device Extension(マウスやポインタ・カーソル対応)」「User Interface Extension(大画面向けのGUI作成用API)」「Bluetooth Extension(Bluetooth拡張機能:HID・SPP・OBEX機能など)」などが実装された、試作機によるデモンストレーションが行われた。
「テレビなどの大画面液晶で使用する場合、標準のUIとは違う見せ方が必要になるだろう。EMではこうした機能が実装される予定だ」(説明員)。
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そして、EM2へ−軽量版Android「Light-weight Android」−
さらに、OESFはEM2へ向け、軽量版Android「Light-weight Android」の策定・開発に着手している。この取り組みは、OESFのSystem Coreワーキンググループで行われ、主にアットマークテクノが中心となって進められている。
ここでは、OESFのミニ・セッションに登壇したアットマークテクノ 代表取締役 実吉 智裕氏の講演「組み込みシステム向け Light-weight Android/開発環境」を基に、軽量版Androidへの取り組みについて紹介する。
System Coreワーキンググループとは、組み込み機器にAndroidを適用するにはどうすべきか、何が・どんなツールが必要かを検討することを目的とし、現在、Androidの軽量構成の研究開発、組み込み機器向けAndroidの開発システムの構築を進めている。
「現在、Androidの開発環境というと、標準のAndroid SDKを使うことになるが、このSDKだけでは組み込みシステムの開発をすべて行うことができない。これをいかにして組み込みシステム開発で使えるようにするかについて、われわれは検討を進めている」(実吉氏)。
現状のAndroidは、無償のアプリケーション開発環境(Java)、携帯電話向けアプリケーションフレームワーク、WebKitなどの携帯電話向け各種ミドルウェアが提供されているが、これらを組み込み機器に適用できると“何が良いか”について、実吉氏は次のように語った。
「組み込みで、Javaによるアプリケーション開発が容易に行える。また、従来の組み込みLinuxの場合は、これまでカーネルより上部は、各自独自のカスタマイズを行い開発していたが、Androidであれば組み込み機器の共通プラットフォームとして使えるため、開発コストが抑えられる。そして、最も注目すべきは、Androidが標準で提供しているリッチなユーザーインターフェイス(以下、UI)を利用できる点が挙げられる」(実吉氏)。見た目の美しさや開発工数の削減など、QtやGDK、もしくは、フルスクラッチで一からUIを開発していた従来型のUI開発とは比較にならない恩恵が受けられるだろう。
また、現状のAndroidの構成について、「Androidは、携帯電話に必要な機能が盛り込まれている“集大成”。携帯電話以外の組み込み機器を開発する側にとっては、“必要な機能が入っていない”だとか、“余計な機能が入っている”という機能の過不足が当然考えられる」(実吉氏)。
さらに、開発環境について「現在、Android SDKで提供されているのは、アプリケーション開発部分だけ。これでは、組み込みシステムは作れない。自分でフレームワークやライブラリを直接触る必要がある」と実吉氏。また、携帯電話と同様に、タッチ・スクリーン、液晶画面の付いたデバイスは数多く存在するが、「“携帯電話”という単一のものとは異なり、機器によって求められる機能が大きく違うのが組み込みシステム。さらに、携帯電話以外の組み込みシステムの場合、CPU、メモリ、要求単価、UIの有無など、機器によって実装できるリソース、要求が大きく異なる。こうした違いに応えられる仕組みが必要だ」(実吉氏)。
このような考えのもと、System Coreワーキンググループでは、組み込み機器向けAndroidに必要なこととして、(1)限られたリソースでも搭載できること、(2)機能の追加・削除を簡単にできる仕組み、(3)Android SDKとは異なる組み込み機器向けの開発環境の3つを掲げている。
System CoreワーキンググループはEM2へ向け、現在、通常のAndroidの構成から、すべての組み込みシステムに必要となる機能を切り出し、Light-weight Androidとして定義するための調査・作業を行っているという。また、実現したい機器ごとにプロファイルを定義しておくことで簡単に必要なライブラリなどを導入できる仕組みや、パッケージ管理の仕組みについての準備を進めているとのこと。
「Androidの標準ビルドイメージを見てみると、ライブラリ関係だけで4割近く占めている。ここからサイズダウンを進めていくわけだが、APIがどのライブラリ、アプリケーションと依存関係にあるのかをきちんと調べる必要がある。簡単に“削除”とはいかないので、時間を掛けて依存関係の調査を行っている」と実吉氏。
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