組み込みシステムを革新する−Androidイノベーション:組み込みイベントレポート(1/2 ページ)
ET2009 OESFブース・レポート(前編)。「あらゆる組み込み機器にAndroidを!」――ET2009に出展したOESFに注目し、各WGの取り組み、展示・デモの様子を多数紹介する!!
あらゆる組み込み機器にAndroidを! ET2009でOESFの活動成果を披露
ケータイ向けのソフトウェア・プラットフォーム「Android」を、非携帯電話分野の組み込みシステム向けに最適化し、広く普及させることを目的とする一般社団法人「OESF(Open Embedded Software Foundation)」が設立されたのは、2009年3月のこと。
――発足から半年以上が経ち、OESFはこれまでの活動成果を、2009年11月18から20日の3日間、パシフィコ横浜で開催された「組込み総合技術展 Embedded Technology 2009(以下、ET2009)」の場で披露した。
今回と次回で、OESFブースで披露された製品プロトタイプの展示・デモンストレーション、そして、各ワーキンググループの最新の取り組みについて紹介する。
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OESFのビジョン −Androidが変える組み込みシステム−
展示・デモンストレーションの様子を紹介する前に、あらためてOESFのビジョンについて、OESF 代表理事 三浦 雅孝氏の講演を基に整理してみたいと思う。
三浦氏は講演の冒頭、「iPhoneは、アップルが提供する世界共通のプラットフォームであり、App Storeというアプリケーションを世界中に配布できる仕組みを打ち出した。iPhoneの登場は、新しい流通のあり方を確立するとともに、モバイル端末とクラウドサービスとの連携を当たり前のものとした」と、iPhoneが巻き起こしたイノベーションについて触れ、さらに、Androidの登場について次のように語った。
「Androidはハードウェアの壁を壊す。オープンソースなので誰でも自由に開発が行える。Androidは、iPhone以上のイノベーションを巻き起こすだろう」(三浦氏)。
“共通プラットフォーム”という点では、iPhoneもAndroidも同じかもしれない。しかし、アップルからのみハードウェアが提供されるiPhoneとは、明らかに違う“オープン”な性質がAndroidにはある。
グーグルが主導するOHA(Open Handset Alliance)により、Androidはオープンソースで提供されており、世界中の機器メーカーが自由に改変し、簡単にAndroidケータイを開発できる。そのため、これまで携帯電話を開発していなかったメーカーでもAndroidを採用することで、短期間に携帯電話市場へ参入可能となった。「実際、Androidを採用した携帯電話開発に、現在、DELLやLenovoなどのPCメーカーが参入している。ある意味、PCの成長期と同じようなことが携帯電話分野でも起きはじめている」(三浦氏)。
そして、このAndroidが携帯分野でもたらした変化は、ほかの組み込み機器開発をも変えてしまう力を秘めている。
Androidのような共通プラットフォームがあれば、従来の組み込み開発のように機器メーカーは、1からソフトウェアを作る必要がなくなり、独自の差別化機能の開発に専念できるようになる。さらに、C/C++で実装されたソフトウェアもJNI(Java Native Interface)を利用することで、これまでのソフトウェア資産を無駄にすることなく有効活用できる。「こうした変化により、機器メーカーはこれまでにないスピードで製品を市場投入できるようになるだろう」(三浦氏)。さらに、ソフトウェア開発ベンダであれば、いっきに世界という巨大マーケットに対し、アプリケーションを販売・配布できるようになる。このように、Androidには、従来の組み込み開発/ビジネスを変えてしまう可能性が秘められているのだ。
こうした急速な変化に対し、三浦氏は「携帯電話以外の組み込み機器へAndroidを適用するには、“標準化”と“差別化”、そして“エコシステム”が重要不可欠である」と説明した。Androidは自由に改変できるため、機器メーカー自身が独自のAPI(Application Programming Interface)やアプリケーションを開発してしまうと、せっかくの共通プラットフォームとしての良さが失われてしまう。こうした事態にならないように、OESFが参加企業・業界を巻き込み、組み込み機器向けの標準プラットフォームとしてのあり方を検討しているのだ。
「Androidは、単なるプラットフォームとしてだけではなく、Android Marketやクラウドサービスとの連携など、これまでにない新たなビジネスモデル、マーケットの成長が期待できるもの。だからこそ、日本だけ、アジアだけではなく、ワールドワイドで標準化されたプラットフォームを使うことが大切だ」(三浦氏)。現在、OESFは、東京オフィスを中心に、ソウル、上海、台北へ活動拠点を拡大している。「近い将来、東ヨーロッパ圏へも展開していきたい」と三浦氏はいう。
こうした考えをベースに、OESFでは携帯電話以外の組み込み機器で必要となる機能や仕組みなどを各ワーキンググループで検討・開発を進めている。現在、10のワーキンググループが組織されている。
- STBワーキンググループ
- VoIPワーキンググループ
- Consumer Electronicsワーキンググループ
- Network & Securityワーキンググループ
- System Coreワーキンググループ
- Application & Serviceワーキンググループ
- Marketing & Educationワーキンググループ
- Distributionワーキンググループ
- IP Communicationワーキンググループ
- Test&Certificationワーキンググループ
次ページで、MONOist編集部がOESFブースで注目した、各ワーキンググループの最新の取り組み、展示・デモンストレーションの様子を紹介する。
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