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ソリッド四面体1次要素は、デンジャラス!?設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法(5)(2/3 ページ)

ソリッド四面体要素を使うときの、大事な約束がある。それを守らないと、危ない結果が待っている!?

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 その唯一の要素――それがソリッド四面体1次要素なのです。

 理論解による変形量を「1.0」とすると、四面体1次要素では、ある程度要素を細かくしても1.0以下の変形量が結果として出てきます。理論解より少しだけ「下」で解が安定しています。これは、理論解よりも「硬く」評価されているということです。本当は、1.0ミリ変形するのに、「0.9ミリしか変形しないから、そのつもりで設計してね!」ということになりますよね。これは危険サイドということになります。

 実用可能な立体形状のメッシュの自動分割はソリッド四面体のみ。う〜ん、ジレンマですね。六面体で自動分割してくれれば、1次要素でも2次要素でも、大丈夫なのにぃ……。でも、四面体でも2次要素を使えば大丈夫です!

 というわけで、立体形状を自動的にメッシュ分割したときには、それが四面体の1次要素なのか、2次要素なのか、キッチリと確認しましょう。

 これまで四面体1次要素の悪口ばかりいってしまった気がするので、ここで少しだけ擁護しておきますね。メッシュを十分に細かくすれば、四面体1次要素でも実用に耐える答えが得られます。そもそも有限要素法による解析は近似解です。解析の条件によって結果も微妙に変化します。要素の特性を知っていれば、解析結果を補正して評価できます。

栗サンの「一休みコラム」:設計者向けCAEアプリ開発者さんへお願い

 要素の大きさ、すなわちメッシュサイズは、解析結果の精度に大きく影響します。メッシュサイズの大きさがいかに解析にとって重要かは、次回以降でキッチリ説明します。メッシュサイズは解析にとってそれほど大切なパラメーターなのに、設計者CAEアプリケーションは、その決め方が甘い気がします。自動的に決められるメッシュサイズは、「最大長さの何分の1」とか、「単位系によって固定」とか、何の根拠もない……。

 ある設計者向けCAEのアプリケーションで試してみたところ、自動的に使用される要素は四面体1次要素でした。そうであればメッシュサイズを十分細かくしておいてほしいところです。そのまま解析してみると、結果は理論解から大きくかけ離れたものになってしまいました……。

 設計者向けCAEアプリケーションを開発している皆さんにいいたい。デフォルトの要素は四面体2次要素にしておいてください。そしてメッシュサイズは何かしらの根拠を持って設定してください。

 僕からのささやかなお願いです。



2.三大要素のほかにも重要な要素がある

 三大要素のほかに知っておくと便利な要素があります。

 解析したい部品に対して、どんな要素を使おうか、どこまでの範囲を解析しようか、などを決めて、実際の部品や構造物を有限要素モデルに置き換えることを「モデル化」といいます。これから紹介する要素はこのモデル化のために威力を発揮するものです。

 有限要素は三大要素のほかにも実にさまざまなさまざま要素がありますが、設計者が使うCAEではその数は限定されます。これまでの経験の中でいろいろな種類の有限要素を使いましたが、これから紹介する要素はその中でも使用頻度が高いものでした。使い方は折に触れ説明するとして、今回は要素そのものについて説明したいと思います。

無限に硬い「剛体要素」

 この要素は極めて硬い棒状のもので、節点と節点の自由度をつなぐものです。つなぐ自由度を選択することによって、また解放する自由度を指定することによって、さまざまな状態を表現できます。

 剛体要素はまず構造の一部を表現するのに使えます。例えば、部品と部品とをつなぐボルトを剛体要素で表現したり、板と板とをつなぐ溶接を表現したりすることが可能です。剛体要素は「無限に硬い」ので、その特性を忘れないで使うことが必要です。

 さらに剛体要素は、構造物や部品の支持や荷重を掛けるときに重宝します。また変形させたくなく(変形するべきでない)部分を保持するために使うことが可能です。その実例はまたの連載の中で紹介していきたいと思います。

 剛体要素にはいくつかの種類があります。まずは1対1で節点をつなぐもの。次に、1対多で節点をつなぐもの。そして、“多対多”で節点をつなぐもの、などです(図3)。


図3 剛体要素の動きとバリエーション

 剛体要素は有限要素のモデル化にとても威力を発揮する要素です。皆さんの解析のセカンドステップとして覚えておいてくださいね。

重さはあれども姿は見えず――質量要素

 さて次は「質量要素」です。「集中質量要素」ともいいます。

 モータとかトランスとか密度が高いもの、すなわち重いものが解析の対象となる部分に存在する場合があります。正攻法では、それらを有限要素で分割することになりますが、解析で注目すべきポイントがモータやトランスなどでない場合は、重さのみを考慮することができる要素があります。それが質量要素です。

 特に振動解析にとって「重さ」というパラメーターは大切です。重さを考慮するかしないかで、解析結果に大きな差が出ます。

 もう20年以上も前、人工衛星関連の解析を行ったことがありました。人工衛星はロケットのほぼ先端付近に搭載され、宇宙まで行くわけですが、その間にさまざまな振動を受けます。人工衛星にとって振動は大きな課題となります。

 人工衛星の本体は、中型の冷蔵庫くらいの大きさに組まれたパイプのワクがあって、そのワクに機器を搭載したパネルが数枚、棚板のように取り付けられています。人工衛星という性質上、パネルは極限まで軽量になるようにチューニングされます。そのパネルに機器が搭載されるわけです。その機器の重心位置に一番近い節点に質量要素を定義します。このように解析モデルを作る手間と解析時間を節約しました(図4)。


図4 重い機器の代わりに質量要素を使ってモデルを簡略化する

 振動解析を行うときには質量がとても重要ですので、この質量要素のこと、忘れないでくださいね。

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