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現場と意思決定者の分断はなぜ発生するか ―日本インフォア ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(5)(2/3 ページ)

製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。

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IFRS対策に見る大きなシステムの問題点

――2015年を前に、各社ともIFRSに対応した会計報告のための対策に奔走している感があります。会計報告という意味では、いままで行ってきたことと変わりがないように思いますが、科目の扱いや解釈など、細かな部分で内部の仕組みに手を入れる必要がありそうですね。

 IFRSへの対応は本社だけの問題ではありません。グローバルで展開している企業であれば、海外の子会社や関連企業との連結決算が必ず必要になります。

 現在、連結決算処理に頭を抱えている企業のご担当の方ならおそらく理解いただけると思いますが、まず、海外拠点から上がってくる数字が非常に大まかなものでしかない、という問題があります。ご存じのように、勘定科目1つとっても、どのように解釈して計上するか次第で評価が大きく変わってきます。

 加えて、従来のように明細が見えない数字を提供されたとしても、本当の意味で状況に即した戦略立案は不可能といっても過言ではありません。会計や製品戦略の話になりますが、例えば製品セグメント別、地域セグメント別の数字を得て今後の戦略に生かしたい、と考えたとしても、現地から粗い数字しか届かないようではそもそも算出できません。また、ひと言で決算といっても税務申告に必要なものと株主向けに開示するもの、経営戦略のために参照するものとは、大きな違いがあります。それゆえに、IFRS対応は単に制度変更に終わらず、企業のグループ経営、業績評価、管理会計までさまざまな視点でグループ経営の視点を大きく変えるものだと考えます。

 多くのERPベンダーがIFRSを、1つの大きなシステムの中で実現しようとしています。システムを統一するのはある意味で正解なのですが、大きなシステムでこれを実現する場合ですと、拠点が増えるごとに、または買収などにより企業が追加になるごとに新システムへの移管が必要になってきます。もちろん、その業態、現地要件に合わせたカスタマイズも必要になるでしょう。

 さらに問題となるのは、システムのアップデートです。単一の大きなシステムをIFRSなどの新要件対応のためにアップデートする場合は、世界中の拠点も同時にアップデートする必要が出てくる場合がほとんどでしょう。アップデートが発生するたびに、大きなシステム移行コストが発生することになります。

 当社ではIFRSへの対応は、パッチという、システムの設定を変更するプログラムを1回実行するだけで済みます。例えば関連企業の一部で異なるバージョンのシステムを持っていたとしても、システムのバージョンアップの必要はありません。無償で提供しているパッチプログラムを実行するだけですぐさまIFRS対応が実現します。

 ここまで説明すればご理解いただけるかと思いますが、大きなシステムでは、事業規模拡大など、企業活動の大きな動きに合わせて多額のシステム投資が必要になるのです。事業を大きくしたいのにシステム投資予算のめどが立たないので、事業計画を見直す、などという本末転倒な笑い話にならないためにも、個々のシステムは現場に最適化した状態のまま、柔軟に結合させていくというのがインフォアの考えです。

単純なデータ交換システムでは実現しない仕組みを提供する

――そうした課題を解消するためにSOAという仕組みを使った拠点間の情報交換の方法があります。それぞれの拠点間で共通した形式に即して情報通信を行うことで情報を結合しようというものですが、インフォアの提供するSOAの仕組み(Infor Open SOA)は、さらに一歩踏み込んだもののように見受けられます。

 昔からのSOAというと、どうしてもシステムや拠点間の情報をサービス単位でやりとりするだけの仕組みだとお考えになるかもしれません。しかし、現在当社が進めている「Infor Open SOA」は、もっと柔軟で賢い仕組みを提供しています。

 例えば、日本ではBaanを利用し、米国では違うシステムを使っている場合を考えてみてください。米国と日本とで情報連携を行うことを考えると、例えば米国の勘定科目ではこの項目、IFRSではこの項目にする、といったルール付けが必要です。また、通貨も異なりますから実際の通貨レートに合わせた数字を取得する必要があります。この点は単なる情報連携だけではカバーできないところです。

 当社ではInfo Advanced GL(AGL:複数元帳)というコンポーネントを提供しています。インフォアのOpen SOAの仕組みでは、このような単純なデータ交換では対応できない部分を、このAdvanced GLがOpen Application Group Inc.という標準化団体の規格に準拠したXML形式で提供しています。多くの製品ベンダーが参加している団体の規格に準拠しているので、他社のシステムとの親和性も高くなっています。

いまある仕組みをそのまま生かして最新の判断を可能にする

――現時点でさまざまなシステムが混在している場合でも、データの統合が可能になるということですね。ITシステムへの投資額を抑えたい場合にも有効そうです。

 先に、大きなシステムでは、各拠点ごとにすべての足並みをそろえてバージョンアップしなくてはならない、といいましたが、この点でInfor Open SOAの仕組みを採用すれば、個々の拠点のシステムはそのままに、データの交換を行うためのコンポーネントを導入すればいいことになります。

 このようにSOAコンポーネントを追加導入することで、来るべきIFRSへの対策も、その先に来るかもしれない新要件に対応するための機能拡張も、すべてまかなってしまえるわけです。制度上の制約からくるコスト増加を最低限に抑えることができますし、各拠点のシステム変更などは、純粋に予算上の都合などを見て計画的に実行できるというわけです。

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