サムスンになれなかった日本の製造業:戦略構築のためのライフサイクル管理論(3)(3/3 ページ)
自社の製品開発戦略をしっかり把握しているでしょうか? 製品開発・生産技術の効率化を追求していたとしても、しっかりとした戦略とマネジメント意識がなければ意味がありません。本連載では、マネジメント技術としてのライフサイクル管理を考えていきます。
明確な指標・明確な意思
もう1つ「弱い本社機能」を強化するポイントがあります。
本社機能を強化する=マネジメント機能を強化するには、評価指標を設け定量的に現場を把握できるようにすることです。
財務状況をマネジメントするときには、売上高やROA、純利益や棚卸資産回転率およびキャッシュフローなどの指標を用いています。一方、サプライチェーンの状況をマネジメントするときには、納期順守率や即納率、生産能力や歩留まりや在庫日数や在庫回転率を見て状況を把握しています。
では製品開発状況を把握するための指標として皆さんの会社ではどのような評価指標を用いていますか?
製品開発状況を把握する指標も財務やサプライチェーンの状況をマネジメントする指標と同じで複雑なものではありません。製品開発の指標として、部品や製品の開発期間や図面の作成時間がどれだけかかっているかを見るのも一つです。
また、設計効率を見るには設計変更の種類のうち、VE活動の設計変更(設変)と不具合対応としての緊急設変の割合を見ることで、設計の効率(手戻り)を把握できます。
ほかにも、新規開発されている部品の数と部品の再利用率を見ることで、流用設計の浸透度などを見ることが可能です。
このような製品開発評価指標はマネジメントが必要なときにすぐに見れるようにしてリアルタイムに経営判断を下せるようになっていないと意味がありません。
せっかくの仕組みを生かしているか
財務評価指標をすぐに見られるようにERPの導入が進みました。サプライチェーンの評価指標がすぐに見られるようにSCMシステムの導入が進みました。
製品開発評価指標を見るにはPLMシステムを用いてリアルタイムに製品開発状況の見える化を実現する必要があります。
PLMシステムを単なるCADデータ管理や部品表管理システムとして構築するのではなく、PLMシステムで管理されているコンテンツの情報を製品開発指標としてマネジメントが把握することで、日本企業の強みを生かし「強い本社機能で強い現場力」を持つ企業を作っていくことが可能です。
上市した瞬間にコモディティ化する製品ライフサイクルをどう切り盛りするか
デジタル製品は非常に短命になってきており、従来のように設計変更することなくワンショットで製品を作り終え売り切って生産終了なんて製品も少なくありません。
また年々小型軽量化されていくデジタル製品は部品のコモディティ化も進み、完成品の機能優位を長く持続することが難しくなってきています。
このような市場環境で競争優位に立つには製品開発業務を情報武装化し、現場とマネジメントが一体となってスピード、品質、コストで他社より優位に立てる業務プロセスを構築していく必要があります。
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過去の連載でたびたびプロダクト・ライフサイクル・マネジメントというビジネスモデルの重要性をアピールしてきました。次回はそのプロダクト・ライフサイクル・マネジメントのビジネスモデルとは何かを紹介したいと思います。
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