3現観察法で不良原因の見える化を目指そう:品質改善の王道を行こう(3)(1/3 ページ)
モノづくり現場で発生している品質不良を改善し、不良率半減を目指そう。品質改善のツールはあくまでもツールであって、それに振り回されてはいけない。本連載は品質改善コンサルタントによる品質改善の王道を解説する。
前回「成功する品質改善プロジェクト体制はここが違う」では、プロジェクト体制を作るノウハウを紹介しました。そして本連載で取り上げる仮想の品質改善プロジェクトがキックオフしたのを受け、「品質改善の王道プログラム」に従って順番に、「1. テーマ選定」「2. 目標設定」「3. 活動計画の作成」について書きました。今回からはいよいよ本命の「4. 要因解析」に入ります。
要因解析では、慢性不良を起こしている原因を追究していきます。一般的に要因解析は個人の経験に依存していますが、これではいけません。品質改善を成功させるためには、要因解析を細分化して体系的に取り組む必要があります。
要因解析のアプローチ方法には、さまざまなツールや手法があるので、どれを選択するか悩ましいところですが、品質改善の王道は、慢性不良の現状実態を正しく把握することから始めます。敵を知らなければ、策は立てられません。あなたは慢性不良という現象を正しくとらえているといえますか?
プログラム4-1 測定の信頼性
要因解析の第一歩は測定の信頼性を確認することからです。良品・不良品の決定は、何らかの治具や機器を使った測定により、データを得て判断することが多いと思います。それらの測定方法は、
- 何回測定しても同じ評価になりますか(反復性)
- 誰が測定しても同じ評価になりますか(再現性)
という2つの確認ポイントがあります。
測定方法に信頼性がないと、良品を不良品と評価したり、不良品を良品と評価したりしてしまいます。不良品を良品と評価してしまうと、顧客に不良品が流出している可能性もありますから、企業の信頼性も揺らぎます。
こういった計量値データの信頼性を確認する方法として「ゲージR&R分析」(Gage Repeatability and Reproducibility:略してGRR、GR&Rとする場合もあります)があります。ゲージR&R分析では、データを統計的に計算して信頼性を評価します。
ゲージR&R分析を行った結果、「測定システム合格」となれば、ほっと一安心で次のステップに進みますが、「測定システム不合格」となれば測定方法の見直しを行います。一般的には、測定回数を増やす(N増し)ことで対処しますが、測定方法にもよりますので、品質保証部門の担当者と今後の対策をよく検討してください。
測定システム不合格の場合は、過去のデータに信頼性がないということですから、残念ながら過去のデータは使えません。しかし、品質改善を行う前に分かっただけでもよかったと思ってください。でないとつらいものがあります……。
今回はゲージR&R分析の計算方法の紹介は省略します。乱暴ではありますが、ゲージR&R分析の計算方法を理解せずとも、各種の統計ソフトを使えば、比較的簡単に答えが出ます。
ただし、どういうときにゲージR&R分析を使うのかだけは覚えておいてください。すなわち、
- 品質改善をするときは、最初に測定方法の信頼性を確認する
- ツールはゲージR&R分析を使う
ということです。
プログラム4-2 現状実態分析
測定の信頼性を確認し、測定システムが合格したならば、次に現状の慢性不良の実態を把握します。慢性不良というくらいですから、すでによく分析しているでしょうが、モレ・ヌケがあるかもしれませんから、ぜひ以下の視点で層別(データを分類すること)してください。
(1)製品別
慢性不良は、どの製品にも発生しますか、それとも特定製品に限られますか。特定製品に限られるのであれば、ほかの製品と何が違うのでしょうか。原料や部品、製造ライン、製造方式や製造条件、作業方法などに違いはありませんか。違いがあれば改善ポイントが見えるはずです。
(2)ロット内
例えば、10月1日にA製品100個、10月2日にB製品50個、10月3日にまたA製品90個……のように、A製品とB製品を交互に製造しているとします。ロット内というのは、あるまとまった1つの製造群をいい、A製品であれば、10月1日ロット(100個)と10月3日ロット(80個)になります。
ロット内では、製造条件がほぼ同じはずです。同じ製造条件で生産しているのに、10月1日ロットの中に、慢性不良が発生する製品と発生しない製品があるということはないでしょうか。
縦軸に不良率、横軸に時間を取って、ロット内のデータをグラフに描いてください(時系列分析といいます)。何か傾向がつかめれば、これまで管理していない未知の要因がありそうです(図1)。
(3)ロット別
ロット別に比較して、慢性不良に傾向がないか分析します。(2)ロット内では、10月1日ロットだけを時系列分析しましたが、今度は10月1日ロットと10月3日ロットを比較しましょうということです(図2)。製造条件はロットの違いで微妙に変わることがほとんどですから、ロット別に比較して、何か変化点があれば、その差異を分析します。
(4)慢性不良の発生場所
製品のどこで不良が発生していますか。傷の付きやすい場所、割れやすい場所、寸法不良が出やすい場所などの傾向を把握します。意外と発生場所をつかんでいないことが多いので、その場合はチェックシートを作成し現場にお願いして、発生場所別に不良数を集計してください。傾向が見つかれば、原因追究の参考になります。
製品別、ロット内、ロット別、発生場所別に慢性不良を層別したデータを集めたら、プロジェクトチームで集まって、データの内容をチェックします。メンバーで慢性不良の発生状況という情報を共有してください。そして、いくつか検討課題が出るでしょうから、検討項目を列挙して、担当者、締め切りなどを決めておきます。
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