成功する品質改善プロジェクト体制はここが違う:品質改善の王道を行こう(2)(1/3 ページ)
モノづくり現場で発生している品質不良を改善し、不良率半減を目指そう。品質改善のツールはあくまでもツールであって、それに振り回されてはいけない。本連載は品質改善コンサルタントによる品質改善の王道を解説する。
前回「品質改善プロジェクトに失敗は許されない」では、慢性不良がなくならない理由の1つとして、□小集団活動や技術者個人の取り組みは限界に来ていることを指摘しました。そして、しっかりしたプロジェクト体制を構築して、組織一丸となって慢性不良に取り組もうと提案しました。今回はプロジェクト体制をつくる王道を伝授しましょう。
品質改善プロジェクトを成功に導くマネジメント・ノウハウ
プロジェクトは前提条件や環境が毎回変わりますから、絶対に成功する方法は残念ながらありません。その会社の文化、事業環境、優先順位があり、一概に決め付けるのは難しいのですが、これだけは絶対に押さえたいマネジメントのキモが2つあります。
- 改善に必要不可欠なメンバーを選ぶ
- プロジェクトに関係者を巻き込む
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
改善に必要不可欠なメンバーを選ぶ
プロジェクトチームは3人以上で発足させます。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、問題点を議論するのに少なくとも3人のメンバーは必要です。2人だと議論が偏ったり、盲点が出たりします。
メンバーは以下のような3つの製造技術領域のスキルを持つ人から選ぶとよいでしょう。
- 製造プロセスに詳しい製造スタッフ、技術スタッフ
- 現場の実態に詳しい係長、職長、作業長
- 各種試験やシミュレーションに精通している研究スタッフ
リーダーは関係部門に押しが利くことと、メンバーに対してリーダーシップを発揮できる40歳前後の管理職クラスが理想です。メンバーが4人以上いれば、サブリーダーも選んでください。
やってはいけない人選は、人材育成をしたいからと20〜30代の若手をリーダーに任命したうえ、やはり心配だからと管理職クラスをメンバーにすることです。このように指揮命令系統が逆転していると、若手のリーダーが管理職のメンバーに議論で負かされ、日常業務でも命令され、とてもリーダーシップを発揮できません。リーダーはプロジェクト運営に無用なストレスを受けて、品質改善という本来の目的に力が割けません。やはり指揮命令系統はしっかりさせることです。
またプロジェクト終了まで(一定の成果が出るまで)、リーダーとメンバーは変えてはいけません。これをやると、プロジェクトが空中分解し、自然消滅することが多いです。逆にプロジェクトの足を引っ張るメンバーは変えた方がいいです。
プロジェクトに関係者を巻き込む
プロジェクトチームがコアになって品質改善を進めるのはもちろんですが、関係部門の支援が得られるか、否かはとても重要です。
例えば、ある工程の品質特性のデータが欲しいとか、細かな製造条件が欲しい、工程実験をしたいなど、プロジェクトメンバー以外の方々に手伝ってもらう場面が必ず訪れます。そこで、事前に関係者を巻き込む3つの仕掛けを作ります。
仕掛け1
改善対象工程のすべてに指示命令を出せる工場長や製造部長といった幹部クラスを最高責任者に担ぎます。
仕掛け2
プロジェクトを支援する人たちをあらかじめ指名しておきます。支援メンバーは常時プロジェクトに入るほどではないけれど、必要に応じて力を借りたいと予想される以下のような人です。
- 設備関係の担当者:設備改造を手伝ってもらいたい
- 品質管理の担当者:品質レベルの判断を仰ぎたい
- 生産管理の担当者:工程実験をする際に、生産調整をしてもらいたい
仕掛け3
プロジェクトの進ちょく状況を報告する場を設けます。メンバーは2週間に一度は関係部門に進ちょく状況の報告をし、2カ月に1度は最高責任者を含め、工場全体に報告することで、情報の共有化を図り、プロジェクトに巻き込んでいきます。
この報告会で困っていることがあれば、直接、最高責任者にぶつけ、便宜を図ってもらいます。なかなか協力してくれない人には、鶴の一声を出してもらいます(名指しで批判するのではなく、傷つかないよう婉曲(えんきょく)に)。一般的に非協力的な人でも上司の指示には従って、きちんと実行するはずです(会社によっては幹部の言葉を右の耳から左の耳……なんてこともありましたが)。
報告会はあと2つの側面があります。1つは中だるみしやすいプロジェクトに活を入れることです。報告会があれば、期限が切られるわけですから、下手な報告はできないし、嫌でも活動しなければなりません。活動しなければならない環境を作ることが大事です。2つ目は関係者(特に上司)に正当な評価をしてもらうことです。プロジェクトは個人の情熱や時間を多大に投入しなければ達成できません。大きな成果が出れば上司にきちんと評価してもらいたいものです。
多くの人たちが手伝ってくれるプロジェクトほど成功するものです。そのためにはどうしたらみんなに興味を持ってもらえるかを考えることが成功の要因なのです。
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