ロボットが人間社会に溶け込むために必要なこと:次世代ロボット概論(3)(2/2 ページ)
もし今、アトムが完成したとしても世の中に出てくることはできない――ロボット社会に向けた現代の課題とは。
ビジネスとしてのロボットの必要性
ロボットは内閣府の発表でIPS細胞とともに国内の革新的技術の1つとして挙げられている。そうした中、「ではもし本当にロボットの時代が来たらどうするか?」という議論の中で研究者が懸念することの1つに「2020年問題」があるという。2020年問題とは、世界の人口増加がこのまま進んだ場合に、1人当たりの食料消費量と生産量のバランスが2020年を境に崩れ、食料が減ってきてしまう可能性があるという問題だ。
「現在は労働人口が減少傾向にあるために、それを補完する方法として工業生産のロボット化/省エネ・環境問題対応へのロボット化/食料確保のためロボット化が求められているが、実際に2020年を迎えたときに、本当にそうなのかというと、難しい話になってくる」
「例えば環境汚染問題が予測よりも深刻化した場合、それについて先行して考えなければならない。つまり食料問題も考えなければならないし、汚染問題も考えなければならないし、1人当たりの生産量についても考えなければならない。よって単純に労働人口と減るからといって、そこをロボット化するといっていると、あるところで、逆に労働人口とロボットを含めたときの労働力が余ってしまう可能性がある」
「そして労働人口のことだけではなく、いわゆる熟練者が不足するということの方が、実は社会的には問題になる。どういうことかと言うと、近年さまざまな事故が問題視されている。昔は熟練者がチェックしてプラントが壊れるのを防いでいたところが、熟練者がいなくなったことで起きている事故がある」
「特に生活支援ロボット(ヒューマノイドロボット)ついては、ロボットを扱うのが熟練者でなく一般の人が多くなるため、メンテナンスを簡単にできる仕組みを作る必要がある」
「よって長期的/持続的な発展とは、世の中を工業的に、汚染問題などを軽視する世界ではなく、促進し、ある意味それらの問題をアシストするような物理的システムがロボットであり、アシストする機能の中には情報的なアシストも入ってくると考えている。おそらくはこの部分をどう解決するかが一番の鍵になるが、ここを解決するためには、先ほど述べた安全基準がないと、どうしても解決してこない。これが現状のロボットのジレンマとなっている」
「そこで行き着いたのが、ロボットをディペンダブル(注)にしようという考えだ」
ロボットをディペンダブルに
「ディペンダビリティがロボットにとってなぜ必要か。それは先ほどの規格にもあったように、機能安全規格に準拠していなければいけないというのにも関係している。例として、いま電動車いすの事故が増えている。母数が増えたために事故数が増えたといわれればそうなのかもしれないが、産総研では、安全性、信頼性を考慮した線形手法と強化手法をいち早く体系化しなくてはいけないと進めている」
「企業の方々が注意しなくてはいけないのは、安全基準というのはあくまでも基準であって、別に保障してくれるものではないが、万が一事故が起こったときに、メーカー責任を問われるので、取らなくてはいけないということ。ロボットもそうだが、ロボットが安全基準をもしうまくできて、作ったロボットを世の中に出したいと思ったときに、ただ何も安全認証を取らずに出すことは可能だが、安全基準が通っていると何が良いかというと、メーカー責任がある程度回避される」
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