ロボットが人間社会に溶け込むために必要なこと:次世代ロボット概論(3)(1/2 ページ)
もし今、アトムが完成したとしても世の中に出てくることはできない――ロボット社会に向けた現代の課題とは。
かねてよりロボットの技術開発を進めてきた日本は、すでにロボットを作るための要素技術がある程度揃っているという。しかし、ロボットが身近かと問われると、そうと答える人は少ないだろう。
(前回から)引き続き、ロボットを産業用ロボットとヒューマノイドロボットに分けて考えてみる。すると、産業用ロボットについてはすでに実用化されているが、お手伝いロボットや受付ロボットなど、おそらく大半の人がロボット像として描いているであろうヒューマノイドロボットについては、展示会場やテレビの映像上では目にするものの、いまだ私たちの日常生活に入り込んではきていない。それはなぜだろうか。
もし今、アトムが完成したとしても世の中に出てくることはできない
大場氏は、ヒューマノイドロボットが普及せず企業内だけで留まっている大きな理由の1つとして、「安全規格の担保」を挙げた。「よく自社技術でロボットを作ったというメーカーの方が来るが、世の中に出していいのかどうか分からない、という相談を受ける」(産業技術総合研究所 大場 光太郎氏)。
「産業用ロボットは基本的に操作者が限定される。当然、操作する人は熟練者であることが前提で、操作範囲も工場内に限られる。公道で動くものではない。そして人との接触も基本的にはないようにデザインするというのが、産業用ロボットの安全基準になっている。危険域と人間のいる場所をとにかく避け、万が一、危険域に入るのであれば、停止するようなシステムでなければならない」
「法制度はあることにはあるが、あまり関係しない。なぜかというと、産業用ロボットというのは企業の監督下で動いているため、企業内の独自制度が作られている。国の制度と国際基準もあるが、もし事故が起きた場合、例えば、A社の敷地内でA社の作業者が自社のロボットを動かして事故が起きてしまったというような場合以外は、ロボットがどうでなければならないというのは、いちいち査察していない」
「一方、ヒューマノイドロボットは、操作者も割と一般の人が多い。ガイドラインとしては、自動車に近い。いまは経済産業省が作った安全ガイドライン(次世代ロボット安全性確保ガイドライン)があるが、それ以外にも検討を始めている」
ヒューマノイドロボット関連の安全規格
A〜Cの3つに分かれている。機能安全規格(IEC61508)については大場氏は、「まずロボットとは何ぞやという定義がない状態で安全基準を作ろうとしてため、どういうものを、企業の方が持ち込んでこれを認証してくださいというのがよく分からない。そういう状態で(安全基準を)作らなきゃならないというのが、いま産総研が直近で抱えている問題」だと述べた
「もし万が一、ロボット技術が今後さらに発達して、莫大な研究費を投入し、鉄腕アトムが出てきたとする。すると、まずは外に出られない。外に出たら銃刀法違反に始まり、火気厳禁、そのほかさまざまな法令に引っかかってしまう。組み込みの世界でも同じだと思うが、世の中で、できても動かせないものというのは、はっきりいって価値がない。よって言いたいのは、ロボットというのは非常に定義があいまいで、単純に技術だけでできていくものではない。ということ」
関連リンク: | |
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⇒ | 「生活支援ロボットの実用化を目指したプロジェクトをスタート」(2009年8月3日、独立行政法人 産業技術総合研究所) |
本記事を執筆中に、独立行政法人 産業技術総合研究所(NEDO)は、ヒューマノイドロボットの実用化へ向けた安全基準確立と国際標準化を今後5年間で目指すと発表した |
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