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「熱する・溶かす・流す」はんだ付けの極意イチから作って丸ごと学ぶ! H8マイコン道(5)(1/3 ページ)

今回は、はんだ付けの手順・ポイントを紹介しながらプリント基板に部品を取り付け、「H8Tiny-USB」を完成させる。

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前回のあらすじ

――プリント基板CADにすべての部品を登録し、回路図CADで生成したネットデータを取り込んでプリント配線を完成させた健一君。無事に配線チェックも通り、シルク印刷を入れたCADデータを基板製造サービス業者に送った。後はプリント基板の完成を待つだけだが……。前回へ

 さて、今回は基板製造サービス業者から送られてきた「H8Tiny-USB」プリント基板を使って、実際に部品をはんだ付けしていきます。はんだ付け作業があるので、作業には十分に注意してください。おっちょこちょいの健一君が一番心配ですが。

 おっと、噂(うわさ)をすれば……。


本連載の登場人物

矢崎 二三夫(やざき ふみお)
健一君の近所で、プリント基板を設計する会社を経営。いわゆる社長さん。「日本の電子産業を下支えしたい」という熱い志を持っている。

佐藤 健一(さとう けんいち)
電子工学を専攻している大学2年生。ロボットサークルに参加している。最近、やっと電子工作ができるようになったが……。



※注:本連載では、筆者が実際にH8Tiny-USBを制作し、動作確認を行った内容を掲載していますが、読者個人で作成したH8Tiny-USBの動作保証や、H8Tiny-USBを使用したことによる、損害・損失については一切保証できません。すべての作業は自己責任で行ってください。よろしくお願いします。


プリント基板に部品を配置しよう

――ガラガラガラ(トビラを開ける音)

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こんにちは!


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おお、健一君。


どうだい? プリント基板は届いたかな?


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うん。昨日、基板製造サービス業者から「H8Tiny-USB」の基板が届いたばかりなんだ。


ボクが作ったCADデータからプリント基板ができるなんて信じられないよ!!


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どれどれ……。


おお、よくできているじゃないか。


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へへっ。


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それじゃあ、今回は“はんだ付けのポイント”から説明してあげよう。


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よっ! 待ってました!!



――ついに、プリント基板作りもめでたく完了しました。ということで、今回は出来上がったプリント基板に部品をはんだ付けして、「H8Tiny-USB」を完成させます。それでは、最初にはんだ付けのポイントを解説します。

 まずは、工具をそろえましょう。

 「えっ、そんなことかい!」と思うかもしれませんが、プロの仕事は道具選びからです(画像1)。

 「はんだごて」は「20W」くらいのものと、「30W」くらいのものを使い分けます。20Wのはんだごてはチップ部品をはんだ付けするために使うので、先が細くとがっているものを用意してください。また、30Wのはんだごては「抵抗」「コンデンサ」「コネクタ」などの部品をはんだ付けするのに使用します。また、「リード線」を切断する際に使う「ニッパ」は小型のものを用意するとよいでしょう。さらに、ICチップをはんだ付けするために「ルーペ」を用意します。「H8Tiny-USB」では、「FT232RL」と「ADM3202」の2つの「SOP(Small Outline Package)」部品を実装します。特に「FT232RL」のピン間隔は非常に狭いので、はんだの仕上がりを肉眼で確認するのは困難です。

「H8Tiny-USB」の組み立てに必要な工具
画像1 「H8Tiny-USB」の組み立てに必要な工具

 次に、「はんだ」です(画像2)。チップ部品をはんだ付けするために、太さ「0.6mm」の比較的細いはんだを使います。抵抗やコネクタなどのはんだ付けでは太さ0.8mmや1.0mmのはんだの方が効率が良いのですが、予算に限りがあるときは今回のように細いものを用意してください。また、SOP部品をはんだ付けするために「はんだ吸収線」も用意してください。

「はんだ」(左)と「はんだ吸収線」(右)
画像2 「はんだ」(左)と「はんだ吸収線」(右)

 はんだ付け第一のポイントは、“はんだごての先と母体(はんだ付けする金属)をきれいにする”ことです。

 「こて台」のスポンジを水で濡らし、こて先を上から軽くなぞるように拭いてきれいにします。スポンジの水気が多いと汚れが落ちる前に冷えて固まってしまうので、適当に水を絞って使います。また、母体を汚さないように、プリント基板は端を持つようにしましょう。

 次のポイントは、“母体に十分に熱を加える”ことです。

 こて先を部品のリードと基板の「ランド」に広い面積で当て、こて先を動かさずに熱が伝わるのを待ちます。慣れないうちは熱で電子部品が壊れないか心配ですが、十分に熱を加えた方が母体にはんだがなじみ、流れやすくなるので、結果的に早くはんだ付けができます。

 はんだ付けの手順は以下のとおりです。

1.はんだ付けする部分にこて先を当て、十分に熱を加えます。はんだ付けする金属がはんだを溶かす温度以上にならないと、はんだは付きません。

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2.はんだをはんだ付けする部分に当てて溶かします。はんだが適量溶けて少し広がったところではんだを離します。

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3.溶けたはんだが流れ、広がったらこて先を離します。うまくいくと、はんだが“富士山”のような形になります。

図

電子部品を入手しよう

 はんだ付けの基本を理解したところで、次に「H8Tiny-USB」に必要な部品をそろえましょう(表1)。ちなみに「H8Tiny-USB」で使用する部品は、すべて秋葉原などで購入できます。

品名 品番 数量 部品番号
マイコンボード AE-3664 1  
IC FT232R 1 U1
AMD3202 1 U2
抵抗 1kΩ 1/8W 2 R2、R3
10kΩ 1/8W 6 R1、R4、R5、R6、R7、R8
集合抵抗(DIP) 1kΩ×8 1 RA1
セラミックコンデンサ 10nF 1 C1
0.1μF 8 C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、C10
電解コンデンサ 4.7μF 1 C4
FET 2SJ377 1 Q1
トランジスタ 2SA1015 2 Q2、Q3
LED 3mm 1 LED1
7セグメントLED(アノードコモン) A-551SRD 2 LED2、LED3
ポリスイッチ 0.1A 1 PSW1
USBコネクタ 基板用Bタイプメス 1 CN4
ピンソケット 26P(13×2) 2 CN1、CN2
タクトスイッチ 基板用 1 SW1
トグルスイッチ 3P基板用 4 SW2、SW3、SW4、SW5
ゴム足 φ16mm 4  
ビス・ナット φ3mm 10mm 各4  
表1 「H8Tiny-USB」の部品リスト

AKI-H8/3664タイニーマイコンの入手先:
秋月電子通商
千石電子
マルツパーツ
若松電子

二三夫流はんだ付けでSOP-ICも怖くない?

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部品もそろったことだし、早速はじめるぞ〜!


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気合が入っているね!


それじゃあ、背の低い部品からはんだ付けしていこう。


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エッ! それじゃ「FT232RL」と「ADM3202」から……。


これ、すごく難しそうじゃん。やだよー!!


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ハハハ。


でもねコイツを先に付けないと、後で厄介だぞ!


それじゃ、“二三夫流SOP-ICはんだ付け法”を伝授するとしよう。


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へーい(渋々)。



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