Imagine Cupで世界を経験した若者たちは何を思う:Imagine Cup 2009 イベントレポート(4)(2/2 ページ)
カイロで行われたImagine Cup 2009世界大会がついに閉幕。上位チームの取り組みから日本チームに足りなかったものが見えてくる
世界を経験した若者たちは何を思う
ここからは、Imagine Cup 2009の組み込み開発部門で初参加、世界大会進出(世界TOP20入り)を果たした国立 東京工業高等専門学校チーム「CLFS」のインタビューの模様をお伝えする。
世界大会で彼らが感じたこととは?
氏名 | 専攻/学年 |
---|---|
長田 学(おさだ まなぶ) | 専攻科機械情報システム工学専攻 2 年 |
佐藤 晶則(さとう まさのり) | 専攻科機械情報システム工学専攻 2 年 |
宮内 龍之介(みやうち りゅうのすけ) | 専攻科機械情報システム工学専攻 2 年 |
有賀 雄基(あるが ゆうき) | 情報工学科 5 年 |
表2 チームメンバー |
――第1ラウンドを戦ってみての感想と、自分たちに何が足りなかったのか「反省点」を教えてください。
長田さん 「練習時間が少なかったが、これまでの中で一番良いプレゼンテーションができたという手応えはあった」。「ほかのチームは本当に長い期間準備をして、大会に臨んでいることがよく分かった。実際、自分たちは3、4カ月で準備してきた。この短い準備期間で勝つことは難しいと感じた」。
佐藤さん 「プレゼンテーションとデモンストレーションは、思っていたより審査員の反応も良く、手応えを感じていたが、残念な結果になってしまった。自分たちのアイデアには自信があるので、もっと練り上げていけば次は勝てるのではないかと思っている」。「ほかのチームの取り組む姿勢。また、サポート体制というのが違っていたと思う。チームによっては企業をメンターに付けたりもしていたので、私たちも強力なバックアップが得られればもう少し結果も違っていたのかなと思う。もちろん、私たちがしっかりとしたモノを作るというのが前提ですが……」。
宮内さん 「時間のない中で、空き時間を見付けて練習を積んできた。短い練習期間ではあったが、良いプレゼンテーションができたと思う」。「自分たちに足りなかったものは、準備不足、調査不足……。それに尽きる」。
有賀さん 「プレゼンテーションを振り返ると、自分は練習どおりにうまくいかなかった。悔やまれる。デモンストレーションに関してはいつもどおりにできたという手応えは感じている」。「ほかのチームは“開発途上国で何が必要とされているのか”ということをきちんと調査しており、自分たちのソリューションを導入した際の効果や競合との差別化なども分析していた。その点が自分たちには足りなかった」。
――いきなり世界TOP20に入ったということで、自信もあったと思いますが?
長田さん 「世界大会の舞台に立つまでは、勝つ気マンマンだった。しかし、世界大会の第1ラウンドを振り返って見ると、現時点での自分たちの実力相当のところで負けてしまったという気持ち」。「企画力というか、テーマの掘り下げが甘かったという反省点がある。勝ち上がったチームのソリューションを見てみると、コンセプトなどしっかりしており感心してしまった」。
佐藤さん 「プレゼンテーションが格段にうまい。また、英語力がないと、やはりQ&Aなどで質問された場合に答えられないし、アドリブも利かない」。
――自分たちの企画力の浅さ、他国の深さの違いは何だと思いますか?
長田さん 「参加しようと思ってから、ゴールを決めて、それを解決するソリューションを作ろうというプロセスで作業を進めてきた。しかし、ミレニアム開発目標に挙げられている社会問題が身近にあるような地域からの参加チームは、私たちが考えもおよばないような発想を持っている。世界が抱えている深刻な問題を実感として体験していないし、正直分からないという点でアドバンテージがある」。
――Imagine Cupのだいご味の1つである世界中の学生たちとの交流については?
有賀さん 「いろいろな国の学生たちに声を掛けてもらった。印象に残っているのはメキシコのチームからパーティーに誘われたこと。本当に日本ではできないような良い経験ができたと思う」。
――この大会で得たものは?
宮内さん 「4カ月近く今回の準備を行ってきたが、普段、研究を除いてこれだけ長期間で1つのことに集中して取り掛かることがなかった。今回の取り組みで耐え抜く力みたいなものが得られたと思う」。
長田さん 「現段階で、何が成長したことなのかが分からない。しかし、きっとこの先の人生で、この経験が生きてくることは確かだと思う。また、今回英語の大切さがよく分かった。英語ができないとImagine Cupが始まってすらないというくらい必要性を感じた」。
佐藤さん 「世界大会に行けたことで自信を得ることができた。それなりに評価してもらえたことが素直にうれしい。Windows Embedded CEを使った本格的な組み込み開発の手法を学べたという点が一番の収穫」。
有賀さん 「複数人で1つのモノを作る経験がこれまでなかったので、コミュニケーション能力の大切さを実感した。また、世界大会の舞台に来て、やはり英語が本当に大切だと思った」。
――これからの進路は? また、再チャレンジを考えているか?
宮内さん 「ほかの3人とは違い、私は就職することになり、今回が学生生活の中で最後の大きな大会となります」。
長田さん 「大学院に進学予定。今回の大会への取り組みの中で開発の上流工程に興味を持ったので、ソフトウェア工学の勉強をしたいと考えている」。「開発力で見れば日本も負けていない。ただテーマに合ったソリューションを提案できなければImagine Cupでは勝てない。もし、よいテーマが見付かれば腕試ししてみたいとは思う」。
佐藤さん 「電気通信大学に進路が決まっており、人を介護するロボットなどの研究・開発をする予定。Imagine Cupでは、ロボティックス部門にも興味がある」。
有賀さん 「専攻科に進むことになっている。Imagine Cupの再チャレンジはメンバーが集まればチャレンジしてみたい。ただし、東京高専で集めることにはこだわらず、ミレニアム開発目標についてよく知っている人などを巻き込む必要があると考えている」。
彼らは今回のImagine Cupでチャンピオンベルトを手にすることはできなかったが、モノ作りに携わるうえで大切な「ターゲットと、そこにあるニーズをきちんと分析すること」の重要性を肌で感じ、学び取ることができたのではないだろうか。就職や進学……。彼らの進路は異なるが、Imagine Cupでの経験を生かして、それぞれの道で世界に通じるエンジニアを目指してほしいと願う。
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