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見えてきた!? ケータイ以外でのAndroidの適用例組み込みイベントレポート(3/3 ページ)

携帯電話向けプラットフォームとして注目される「Android」。その存在は“非ケータイ分野”の組み込み開発者にも大きなインパクトを与えている

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OESFが考えるAndroidの可能性とは

 ウェルビーン、モンタビスタソフトウエアジャパン、ルネサスイーストンの共同ブースでは、プレゼンテーションシアターが用意され、さまざまなテーマでセミナーが開催された。その中でも注目を集めたのが、OESF代表理事であるアイ・ピー・ビジョン 三浦 雅孝氏による「Androidが変える組み込み」と題したセミナーだ。

 三浦氏は、一般的な組み込み機器開発のプロジェクト予算の大半がソフトウェア開発費に当てられている状況を「エコロジカルではないシステム」とした。一方で、Androidプラットフォームを「適切な標準化とサービス・アイデアによる差別化の両方を実現可能とする機構」であるとし、さらに将来的には「Androidは新たなクラウドサービスのプレーヤーになり得る」と評価した(画像12)。

 本稿の冒頭でも紹介したがOESFは、Androidを利用した組み込み機器向けシステム・サービスについて、参加会員各社共同で研究やワーキンググループ活動を行っている。台湾にも拠点を置き、本稿公開時点で30社ほどの会員を持つという。

OESF三浦氏
画像12 T-Mobile G1を手にAndroidの可能性を語るOESF三浦氏
※本項執筆:@IT MONOist編集部 原田 美穂


RTOSとAndroid(Linux)のマルチOS環境

 上記で紹介した共同ブースの中で、特に興味深い展示を行っていたのがウェルビーンだ。同社は、マルチOS環境をRTOSで実現する仮想マシンモニタ「WB-VRT」を用い、ITRON上でLinuxを動作させるデモンストレーションを行っていた(画像13)。「RTOSであるITRONの1プロセスとして、Linuxを動作させることができる。もちろん、Androidも動作可能だ」と説明員。

 同製品は、ITRON上で起動させたLinux側のプロセスをITRON側に安全にブリッジする機構を持つ。この仕組みの利点は、リアルタイム性を重視する処理をITRON側に、処理がさほどクリティカルでなく開発効率性を要求されるアプリケーションをLinuxベースで開発するといった、アプリケーションのすみ分けが効率よくできる点にある。Linux側の起動・停止情報などはITRON側で管理できるため、Linux側で不具合が発生してもシステム全体に影響を与える心配がないとしている。

 「ITRON部分を含めてすべてを仮想化する場合、ITRON側のプロセススケジューラ制御に問題が出る可能性があり、現実的ではない。その点、『準仮想化』として、ITRONのリアルタイム性能を生かしつつLinuxを実行させるWB-VRTの場合ならこうした問題とは無縁だ」(説明員)。

WB-VRTのデモンストレーション
画像13 WB-VRTのデモンストレーション 
WB-VRTを使い、ITRONのプロセスとして動作させたLinuxの挙動を確認できた。CPU温度を計測し、OpenGLで表示させるアプリケーションだが、手動でファンを停止させると、ITRON側が問題を検知し、アラートが表示された。再び動作させるとLinux側はクラッシュすることなく、グラフ表示を継続する

 また、急きょ展示を決めたというAndroid携帯端末向け開発キットには、Androidアプリケーションのビルド環境一式と開発用端末が含まれる。開発用端末は、Marvellの「Monahans PXA310」を採用し、Bluetooth、GPS、3軸モーションセンサなどが搭載されている(画像14)。

開発キットの展示
画像14 開発キットの展示

 なお、同社では以前から組み込み技術トレーニングを実施しているが、2009年6月からはOESFのMarketing&Educationワーキンググループでの活動と連動したトレーニングも予定しているという。


※本項執筆:@IT MONOist編集部 原田 美穂


評価ボードへのポーティングサービスも

 日本システムウエアは、TIのアプリケーション・プロセッサ「OMAP3430」を搭載したLogic Product Developmentの開発プラットフォーム「Zoom OMAP34x Mobile Development Kit(MDK)」や、Freescale Semiconductorのアプリケーション・プロセッサ「i.MX 31」を搭載したArmadillo-500 FXにAndroidをポーティングするサービスを行っている。同社ブースでは、Androidを載せた両機器が展示されていた(画像15)。

 「Androidの取り組みとして、OSのポーティングからアプリケーションの開発までトータルに行っている。今回の展示では、AndroidをポーティングしたZoom OMAP34x MDKによるDVI(Digital Visual Interface)出力のデモンストレーションを用意した。今後、組み込み分野におけるAndroidの発展・広がりに大きく期待している」と説明員はいう。

「Armadillo-500 FX」(右)と「Zoom OMAP34x Mobile MDK」(左)
画像15 「Armadillo-500 FX」(右)と「Zoom OMAP34x Mobile MDK」(左)

 今回フォーカスした企業以外にも、グレープシステムがアイウェーブのAndroid向け開発プラットフォーム「iW-Rainbow G3」を展示していたり、アットマークテクノが自社のArmadillo-500FXでAndroidを動かすデモンストレーションを行ったりしていた。また、Androidの仮想マシン「Dalvik VM」をチューニングし、チューニング前とチューニング後の画像描画処理の比較デモンストレーションを行っていたイーフローなど、予想以上に数多くの企業がAndroidへの取り組みを披露していた。




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 ESEC開催期間中、NTTドコモから「Androidケータイ」が発売されるとの情報が各メディアで取り上げられ(参考:+D Mobile)、日本でもAndroidが本格的に普及していくことが見込まれている(本稿執筆中に行われたNTTドコモの新製品発表会でHTC製Android携帯「HT-03A」が正式発表された)。当然、携帯電話端末(スマートフォン)での利用が中心だが、その一方で、非ケータイ分野での利用も徐々に広まっていくことだろう。今回のESECで、その新たな息吹を確かに感じることができた。

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