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車のリコールに学ぶ 命を吹き込む設計甚さんの設計分析大特訓(9)(1/3 ページ)

世を騒がせた自動車のリコール問題も、設計思想に問題があった。それもたった3円の小さな部品が原因だという。

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当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


 皆さん、第8回の「枕木に秘められた設計の神髄を伝授するぜぃ!」は、いかがでしたか?

 日本企業独特の合体商品や複合商品は、「何でもあり!」の設計品質を優先順位なく並べて設計していきます。この「何でもあり!」と枕木の設計に見られる設計品質の「両立設計」とは雲泥の差があることを理解してください。

 設計者の仕事は、技術計算する、実験する、図面を描くなどの時間は全体の2〜3割で、残りはドキュメント作りです。ですから、CAE(コンピュータ解析による設計支援)作業を除いて、3次元CADに向かっている時間は1〜2割程度のはずなのです。

 ましてや最近の自称・設計者は図面を描かない、もしくは描けない、読めない人も出現しています。もし皆さんの職業が「設計者だ!」というならば、長い時間、3次元CADの前に座っている人や、仕事のアウトプットに設計書がない人は少々疑問です。

 そして、自問自答してみてください。あなたのアウトプットは「何」であり、その「何」の対価として自分の給料が支払われているのかを……。

 それでは、恒例の「理解度チェック」です。3項目以上理解していた方は先へ進みましょう。そうでない方は、第8回を読み直してみてください。

理解度チェック

  1. 早速、駅のホームから枕木を見下ろし、ヒビ割れがないか観察した
  2. 観察中に駅員に「危ないですよ!」と注意を受けた
  3. 身の回りの商品に、「両立」の応用例はないかと探した
  4. 自分の業務でも「両立設計」もトライしたいと考えた
  5. プレ・ストレッシングの設計にCAEは不可欠と推定した
良

あれっ! 前の理解度チェックで『身の回りの商品に、「両立」の応用例』という文があるけど、実は僕もWebで検索してみたんです。でも、なかなか、これっ! というものがありませんでした。


甚

ドアホ! もっとよく探せ! もう、待ってらんねぇからオレがトットと答えをいっちまうぜぃ。それは『SMART(スマート)』さ!


良

エー? メタボの甚さんが、どうしてスマートなのさ。


甚

べらんめぇ! オレサマにプレ・ストレス掛けてどうするんだよ。


 近年で「プレ・ストレッシング(Pre-Stressing)」を応用した有名なマシンが、ドイツ製の小型車 SMARTです。その衝突安全性能は、メルセデスベンツの上級クラスと同等とのこと。その性能をかなえた技術こそが、第8回でも説明した、設計の上級技ともいえるプレ・ストレッシング構造です。

 「トリディオン・セーフティセル」というSMART独自の安全構造体は、一種のプレ・ストレッシング構造といえます(筆者の推定を含んでいます)。

 いずれにしても、ドイツ人らしい素晴らしい設計です。「何でもあり!」の日本人技術者には、なかなかできないことでしょう!?

オヤジ連中が、スカイネットからやってくるぞ

良

甚さん! 最近、おやじ系のダジャレがやたら多いのでは? 例の出世逃げ課長*第3回参照 もね、2007年問題絡みのオッサンどもはダジャレが多くて困るっていっていましたよ。しかも、笑わないと業務評価が落ちるって!


甚

もう2009年だぞ。2007年問題はもう勘弁しちくりー。役に立たねぇオッサン連中は、すでに職場を去ってるんだろうがぁ? あん?


良

甚さん! それが違うんですって。僕の会社には『ターミネータの再雇用』って制度があるんですよ。『あいつら舞い戻ってきやがった。せっかく送別会までやってやったのに!』と課長が怒っていましたよ。


甚

なるほど、シュワちゃんの映画のようだ。ひょっとしてオメェ、オッサン連中は、スカイネットで送り込まれたのか? オメェんとこの課長は、結構、おもしれぇやつじゃねえかい。今度、一緒にホッピーでもどうだといっておけ。


良

フンッ、そうですかね。出向という藁(わら)をつかんで離さないやつもいるともいっていましたが。そうまでしてしがみついていたいのですかねぇ?


甚

良君、もうやめろ! どちらが悪いか知んねぇがよぉ、そんなこと、いまはどうでもいいじゃねぇかい。若いオメェらが関知するな! それよりも自分を磨け!日々是決戦(ヒビ、コレ、ケッセン)、日々是自己研鑽(ヒビ、コレ、ジコケンサン)だ!


 ……ということで、今回の第9回は「車のリコールに学ぶ 命を吹き込む設計」と題して、「3円の電気抵抗にも命を吹き込め!」とばかりに設計の神髄を甚さんに伝授してもらいましょう(3円は筆者の推定額です)。

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