まず基本設計と1次元寸法を押さえよう:実務経験者が教える! ターボ機器の設計解析の勘所(1)(2/3 ページ)
遠心圧縮機羽根車を例に、性能予測を含む基本設計に必要な1次元寸法の設定について解説する
2-2 入り口ダクト(Inlet Duct)
入り口ダクトは、羽根車入り口まで流れを先導する重要な要素です。軸流方向から流れを導く軸流形式と、半径方向から流れを導く半径方向形式の2つが考えられます(図1.3)。
軸方向流入ダクトの形状は単純で、その断面は軸対称な流れを実現しやすい円形あるいは円環状になっているのが普通です。円形状の場合、その下流に90°の曲がり部があると軸方向の長さが長くなるという欠点を持っています。その一方、半径方向流入ダクトは軸方向長さに制限がある場合に適していますが、望ましい流れ分布の実現のためには流路設計に注意する必要があります。
流れは羽根車に近づくと、下流の影響を受けて流れはシュラウド(羽根の外周部)側にシフトします。さらに半径方向ダクトの場合、ダクトの曲率の影響を受けて、旋回のない流れであるなら、羽根車入り口では羽根車のバブ(中心部)からシュラウド方向に次の式で表される圧力分布を持つことになります。
このため、羽根車入り口ではハブからシュラウドにかけて速度分布を持ちます(図1.4、1.5)。
従って、入り口ダクトを選定した設計の初期の段階で、羽根車入り口において、2乗平均半径点と羽根車入り口先端(シュラウド)の子午面速度比(λ)を、いままでの実績から仮定して進める必要があります。設計が進み、羽根車の詳細設計段階となったとき、仮定したλの値が満足されるようにダクト形状を設計しなければなりません。
ダクト出口、すなわち羽根車入り口の子午線速度比が仮定した値になることはもちろんではあります。しかしダクト入り口から羽根車入り口まで損失の少ないダクトを設計するには、流れを減速させることなく滑らかな加速流にすることが必要であり、損失の点からは羽根車入り口近辺で加速することが望ましいといえます(図1.6)(参考文献8)。
2−3 1次元性能予測と3つのパラメータ
入口速度比(λ)と回転速度が決まると、次は圧縮機全体の性能を予測することになります。ここで性能を予測するためには種々のパラメータを仮定する必要があります。その中でも重要なのが下記のパラメータです。
- 羽根車入り口シュラウド径
- 羽根車出口直径
- 羽根車出口羽根高さ
これら3個のパラメータについて簡単に説明します。
(1)羽根車入り口シュラウド径の最適化(R1t)
軸受が決まると羽根車入り口のハブ径は決まりますが、空気のような圧縮性流体を扱う場合、羽根車入り口のシュラウド径は圧縮性の影響を受ける(音速として作用する)ので、羽根車入り口先端シュラウド部のマッハ数が、与えられた流量に対して最小になるシュラウド径が存在します(図1.7)。
すなわち回転数一定として、入り口ダクトの項で説明したように、選定したダクトに応じて子午面速度比を仮定したうえで、羽根車ハブ径を与えてシュラウド径を大きくすると、平均の子午面速度(2乗平均点の子午面速度)は小さくなりますが、その半面、シュラウドの周速度は大きくなります。そのため、羽根車入り口のシュラウド点(空気中を伝わる音の速度は大気中の音に依存すること)の相対速度、すなわち相対マッハ数(流速と音速の比で決まる無次元数)の最小値が存在します。このマッハ数は衝撃損失に関係しているのでできるだけ小さく抑える方が効率上得策でしょう。
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