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3DとWebで知財を共有するPLMツール―ENOVIA V6ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(1)(3/3 ページ)

製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。

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環境負荷物質をBOMで管理する

 ENOVIA V6では、さまざまな業界で適用可能なPLMアプリケーション群を提供しているが、その中でも自動車やハイテク業界のユーザーのコンプライアンスを支援するアプリケーションがMaterials Compliance Central(以下、MCC)である。

 今日の製品には、下記のように多岐にわたる環境関連の法規制が課せられており、これらを設計段階から考慮して製品作りを進めることが必須となっている。


規制の対象業界 規制名 説明
自動車業界 ELV(End-of-Life Vehicle Directive) 欧州における自動車を販売するメーカーに、鉛、水銀、カドミ、6価クロムの使用を禁止、リサイクル率85%以上などを課す
電気・電子業界 WEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment Directive) EUにおける電化製品に対するリサイクルと廃棄に対する製造者責任法
RoHS(Restriction of Hazardous Substances Directive) EU、中国、韓国における鉛(無鉛はんだ)、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB(ポリブロモビフェニル)、PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)の含有量制限
SB20/50(Restriction of Hazardous Substances Directive) 米国カリフォルニア州の電子廃棄物リサイクル法
REACH(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals) EUへの輸入、あるいはEU内製造が年間1トン以上となる製品の化学物質規制

 これらの規制をクリアしなければ製品を該当市場へ輸出できないのは当然として、もし規制物質が混入されていた場合のペナルティは、単に販売機会の損失にとどまらず、企業イメージを大きく傷つけることは、最近の中国製食品のメラミン混入問題でも明らかである。現段階では主にヨーロッパ市場の環境規制が先行しているが、今後は中国、韓国、オーストラリア、アメリカといった各国も独自の環境規制法を追加制定する動きを見せている。輸出に依存する日本の製造業にとっては、環境コンプライアンスは避けては通れない問題だ。

 企業としてこういったコンプライアンスを確立するには、製品ごとに禁止物質の不使用証明を用意するだけではなく、解体手順書、管理仕様といった各種の責務を果たさなければならない。これは「言うは易く行うは難し」の典型で、社内外から調達した部品の素材情報をすべて把握し、設計段階で仕向け地ごとに禁止物質を含まない部品を選んで設計するには膨大な手間が発生する。

 従来日本メーカーは、設計がある程度進んだ段階で、品質検査部門などで禁止物質含有の有無をチェックするといった分業体制で対応してきたという。それは手作業による禁止物質リストと部品表の引き合わせであったり、よくても手組みのアプリケーションを通常のPLM製品とは別に作っているというのが実状らしい。

ダッソー・システムズ ソリューションコンサルティング本部 宮川保明氏
ダッソー・システムズ ソリューションコンサルティング本部 宮川保明氏

 これに対してMCCは、ENOVIA V6のBOMにコンプライアンスに関する情報を保持できるようにした。このメリットについて同社ソリューションコンサルティング本部、宮川保明氏は、次のように語った。

 「設計の上流工程からどの部品にどれだけの環境負荷物質が含まれるか、設計エンジニア自身がリアルタイムで確認できます。これは、後工程で使用できない部品が含まれているのが判明して手戻りが発生するのを防げます。また、各国の法規制が多様化し、多くのバージョンに分かれてくると、企業単体ですべてを追跡するのはかなりの負担になるでしょう。ダッソー・システムズは規制を制定している各国の委員会に会員として参加しているので、最新の情報を常に製品にフィードバックできる体制を取っています」。

 BOMに入っている部品情報には、材料および物質に関する属性情報が格納される。これらの情報が関連付けられたうえで単一のデータベースで管理されている。設計の各段階で必要な環境負荷物質の情報は、図1のように分かりやすく表示されている。また、各規制に対応したレポート作成機能や将来追加される法規制にも対応できる拡張性も持っているという。

図1 ENOVIA V6のコンプライアンスBOM表示
図1 ENOVIA V6のコンプライアンスBOM表示
部品ごとに、REACH、RoHS、JIGなどの対応状況が色分けされて表示されている

 「設計者は通常、ある部品がどのような物質を含有しているかなど知らないし、それを知るためには別のアプリケーションを立ち上げたり、あるいは禁止物質の一覧表をめくって調べたりする必要がありました。ENOVIA V6であれば、CATIAのような通常の設計ツールが統合された環境でコンプライアンス情報を確認できます」(宮川氏)。

◇ ◇ ◇

 環境コンプライアンスは、対応したからといって売り上げが伸びるわけではないが、対応しないと市場から退場させられてしまう非常に厄介な問題だ。企業としては、できるだけコストを掛けず、なおかつ確実に対応したい分野だろう。今回紹介したENOVIA V6のほかに、ドイツに拠点を置くシーメンスPLMソフトウェアのPLM製品「Teamcenter」にも同様のコンプライアンス管理機能が搭載されている。今後はこういったコンプライアンス対応機能がPLM製品のトレンドとなりそうだ。

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