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工場で大人気の“ムダ取り”は本当に効果ある?会社のムダを根こそぎ撲滅! TOCスループット(2)(2/3 ページ)

TOCでは「原価計算は生産性の最大の敵である」と主張する。現行の会計制度に存在する矛盾を明らかにし、企業の継続的な利益創出を支援するTOCスループットの基本を紹介しよう。

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キャッシュを垂れ流すムダ

 正しい状況判断をしないと、工場でどういうムダが発生するのでしょうか。多くの企業では、外作、内作の判断を行う際、現在の社内製造における製造原価(材料費+配賦費用)と外注費を単純に比較して、安い方を選択しようとします。しかし、これもムダの判断を誤らせる原因となります。

 この選択の際に考えなければならないことも、自社のスループットの増減です。製造間接費や本社費用などと呼ばれる配賦費用は、外注へ出しても出さなくても発生総額は変わりませんから、比較対象として考えてはいけません。

 よくある例で考えてみましょう。外注で作業をすると「分当たり単価:50円」、社内では「分当たり単価:70円」、だから外注に出す。よく聞く話ですが、もし分当たり単価が70円だとすると、時給:4200円、8時間勤務で日給:3万3600円、月間20日の稼働として月給に直すと、67万2000円になります。

 実は、この70円が問題なのです。通常工場で使われている分当たり単価は、フルローディング(注2)と呼ばれる固定費が配賦された費用であり、損得計算に使用すべき数値ではありません。例えばパート従業員でもできる作業ならば、時給1000円程度で十分であり、これは分当たりに換算すれば、たった17円弱なのです。それを50円で外注に出し、もうかったと考える。管理費用を計上したとしても、この判断が正しいとは思えません。

注2:フルローディング 年間に発生するすべての固定費や配賦費用を総就労直接工数で割って求めるのが普通のやり方です。


 本来このような状況では、スループット、在庫・投資、業務費用、それぞれの増減で判断し、生産能力が需要に対して、手不足か手余りかを見極めることによって容易に判断できます。

  • 手不足状態:製品に対する需要が供給を上回っている状態
  • 手余り状態:需要が十分でなく、供給能力が余っている状態

 手不足状態では、売れるまんじゅう屋と同じで、これ以上能力がないので受注があっても作ることができません。このような場合には、顧客から入ってくる金額よりも、資材費と外注費の合計が小さいなら、外注に出してもペイできます。逆に手余り状態では、コスト比較の結果がどうあろうとも、外注に出すことはしてはいません。なぜなら、何かをアウトソースしても社内の人員が減るわけではないので、人件費や管理費はそのまま発生し続けるからです。

 もし手余り状態で外注を使えば、まさにキャッシュの垂れ流しともいうべきムダといわざるを得ません。TOC的に考えれば、ボトルネック(制約条件)がどこにあるかによって取るべき手段は変わり、それによって得られる利益にも当然変化が生じると理解すべきなのです。

リードタイムを短縮するムダ

 現在の制約がどこに存在するかという質問に答えることは、常に正しい状況認識を行うことです。リードタイム短縮のための小ロット化を検討する場合を考えてみましょう。小ロット化による段取り回数増加で工程の生産能力が低下することは事実です。この場合の得失はどう考えたらよいのでしょうか。

 もし、需要が能力を上回った状態で、かつその工程がボトルネック工程ならば、段取り時間増加に伴う生産能力の低下は、直接売り損じという機会損失を引き起こしスループットの低下になります。このような場合にはDBRの方法論を上手に使い、制約条件工程はまとめ生産を行い、ボトルネック工程以外は運搬ロットサイズを縮小し、工程間のオーバーラップを行うなどして生産性とリードタイムを高い次元で両立させることが必要となります。

 改善をさらに進めて、制約条件工程の1回当たりの段取り時間が半分になった場合の改善成果はどう考えればよいのでしょうか。市場制約を短期的に解除できない(注3)ことがはっきりしている場合、ボトルネック工程といえどもこれ以上生産量を伸ばしても売り上げにはつながりませんから、この場合には段取り回数をそのまま増やしてさらなるリードタイム短縮、仕掛かり在庫(I)圧縮を行うのが正しい意思決定となります。反対に、工場内に制約条件が存在する物理制約の場合には、段取り回数はそのままにして、短縮された時間を生産時間に組み入れてスループット増大を図るということになります。

注3:TOCセールス・マーケティング手法を活用することで、現在ではこの制約を短期的に解除することが可能です。


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