加圧式ボールペンを設計分析しようじゃねぇかい!:甚さんの設計分析大特訓(4)(3/3 ページ)
仰向けで寝ていても風呂に入っていても、スラスラ書けるボールペンの設計分析をしよう。シンプルに見えるペンにも素晴らしい仕掛けがひそむ。
今回のまとめ
今回も良く分析したじゃねぇかい、Good Job! オメェは、設計屋より分析屋に向いているかもしれねぇなぁ。どうせオメェは図面を描けねぇんだろう?
甚さん! そんなこといわないでください。しかしどうして僕が……実は図面を描けないこと、ばれちゃったんですかね」
検図もできねぇ、特許もチェックできねぇ、そんな課長の下で優秀な部下が育つわけがねぇってもんよ。設計屋の世界でも『鳶(とび)が鷹(たか)を生む』ってぇことはあり得ねぇんだよ。
だから甚さんの会社で働きたいと、さっきいったじゃないですか〜。
べらんめぇ! もっと修行を積め。オメェんとこの課長を「反面教師」として、成長しろってもんよ! 分かったら、さっさとまとめに入りやがれ。
ガッテン承知! もうまとめてありますよ!(表1)
どうだ! ただの3次元モデラーなら、『3気圧の圧縮空気の印加』と『指紋の形状を考慮したスリット』を設計思想に盛り込めるか? オメェ、きちんと理解できてるじゃねぇかい。
甚さん! 今回の設計分析で、さらに自信がついてきました。
そうか! それならこのオレサマも、うれしいってもんよ。
設計者なら、特許を出しなさい!?
今回はいかがでしたか? 「3000hPaの圧縮空気を封入」という技術は、設計部門ではいきなり開発できないと思います。大手の企業では設計部門ではなく、研究部門や技術開発部門が研究開発を担当しているでしょう。しかし 0.16mm幅のスリットの導入検討は設計部門の仕事でもいいのではないでしょうか。
ところで灯油ポンプのときもそうでしたが、やはりいま一歩、3次元モデラーから設計者へ脱皮するには何か1つ足りません。一体、それはなんでしょうか?
それは、特許なのです。
まず、技術者の3教科とは「Q」「C」「D」です。技術者の4教科とはさらに、「Pa」(Patent、特許)が加わります。 PaはQCDの総合力、いわゆる総合科目といえます。
以下は、加圧式ボールペンの特許です(図2)。ざっとでもいいのでながめておきましょう。
今回も、きつい言葉を残していかなくてはなりません。
「特許出さずは、設計者にあらず」「特許出さずは、3次元モデラー!」
設計者の3大成果物は「設計書」「図面」「特許」です。成果物とは、審査されるものです。設計審査、図面審査(検図)、特許審査……とありますが、とにかく審査されるから、報酬つまり設計料や給料などが支払われるわけです。ちなみに3次元モデルは、設計の成果物とはいえません。それは、設計過程のものでしかないからです。従って、これだけでは審査ができません。設計者として働いているつもりでも、ただモデリングだけしていては給料がもらえない、ということなのです。
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次回は、「特許出さずは設計者にあらず」に良君が反論するところから始まります。ご期待ください。(次回に続く)
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
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