社内の対立を解消するツールとその使い方を伝授:ジレンマ解消! TOC思考プロセスの基本を学ぶ(2)(2/3 ページ)
TOCは工場の生産性を改善するだけの手法にとどまらない。相反するニーズの板挟みに悩まされる組織の「ジレンマ」を解消し問題解決を目指す体系的なアプローチ「TOC思考プロセス」を紹介しよう。
対立の裏に潜む「なぜ」を考える
白か黒かというジレンマは、白と黒に焦点を絞っている限り、二者択一か、中間のグレーという妥協策以外に解決策を見いだすことは難しいのです。そこで「雲:クラウド」では、白と黒の議論に陥らないために、対立の裏に潜む「なぜ」を考えようと教えています。
論理を成り立たせている「なぜ(仮定)」を洗い出して、その理由が必要ではない状態を作り出すことが「解決策」の第一の道です。例えば「生きていくためには……お金が必要」という論理を例に考えてみましょう。
確かに生きていくにはお金が必要ですね。なぜならばお金がなければ食料や衣服など生活に必要なものを買えません。またお金がなければ、人生のさまざまな楽しみも享受できませんし、もし病気になってもお医者さんに診てもらえなくなります。だから生きていくにはお金が必要なのです。……本当にそうでしょうか?(図2)
畑と田んぼがあれば食料は自給自足で何とかなります。人生のいろいろな楽しみもお金の掛かるものだけではありません。お金を掛けず楽しめる趣味はいくらでもあります。また医療の問題も、こういった自給自足の生活ならかえって健康になって医療費は掛からないかもしれません。それに自給自足の生活で多少余った作物があれば、物々交換をして必要なものを手に入れることも可能でしょう。このように考えて、生きていくにはお金は必要だと考えたその「理由」を崩してしまえば、生きていくにはお金が必ずしも必要でないことが分かります。
このように、目的を達成する行動には、その論理を成り立たせている「理由」があるのです。このような理由を残らず抽出し、じっと眺めてみます、そうすると、何となく「気に要らない」理由がいくつか見えてきます。その「気にいらない」理由を無効にする方法を考えてみるのです。
ここではあくまでアイデア出しに徹することが重要です。実行するための障害やそれを行った結果として起こる副作用などは、ここではまだあえて考えないようにします。
ウィン・ウィンを実現するアイデアは一見数多くの障害や副作用をはらんでいるように見えます。しかしここで実現可能性まで考えてしまうと、ほとんどすべてのアイデアが実現不能と切り捨てられることになるのです。ですからこの段階では、せっかく考え出したウィン・ウィンのアイデアが、いかに素晴らしい結果を生むかじっくり考えてゆきます。そして、アイデアが固まったその後に、障害や副作用を乗り超える方法を考えます。
2番目の視点は「雲:クラウド」のDとD'のジレンマそのものを「なぜ同時にできないのか、いったい何が対立しているのか」という視点で考えることです。DとD'の「そもそも何が対立しているのか」を考えることは、対立の本質を考えることであり、ジレンマを解くためにどのようなアプローチを取るべきかを教えてくれるものでもあります。
企業内での対立は通常5つ程度のパターンに収まります。
- 長期 vs. 短期
- 全体 vs. 個別
- 市場 vs. マネジメント(ルール)
- 集中 vs. 分散
- 結果 vs. プロセス
そして、これらの対立の結果、有限な経営資源を奪い合うのです。有限な経営資源とは、「お金」「時間」「人」の3つが典型的なものです。この対立の図式と奪い合う資源を明確にして議論することこそ、主張し合う2つの行動を、妥協ではない根本的なアイデアをもって解決するために必要なアプローチなのです(図3)。
ウィン・ウィンのアイデアをどう抽出するかについては、本連載の4回目にあらためてじっくり説明したいと思いますが、その前に複数のジレンマを1つの根本的な対立にまとめる手順を紹介しましょう。
問題解決を10倍楽にする方法
これまでの説明で、
- 問題とはジレンマである
- 問題を解決するとは、ジレンマを解くことである
という理解を得られたと思います。しかし皆さんの周りは問題だらけです。ということはジレンマだらけ、そのジレンマを1つ1つ解かなくてはいけないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。実は多くの問題は原因と結果の関係でつながっています。こう考えれば多くのジレンマの大本になっている中核的なジレンマを見つけ出し、それを解決すれば多くのジレンマを芋づる式にいっぺんに解決でき、非常に簡単になると思いませんか(図4)。
この原因と結果の関係は次回詳しく説明しますが、まず多くのジレンマを1つにまとめる手順を見ていきましょう。
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