検索
連載

じゃあTOCでどれだけ利益が出るの?利益創出! TOCの基本を学ぶ(6)(2/3 ページ)

モノづくり企業が継続的に利益を創出することを“ゴール”に定め、具体的な方法論を提供するTOC(制約条件の理論)について、初学者向けに基本的な思想、用語、理論などをコンパクトに解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

北越パッケージの事例

 それではTOCの考え方を活用して成果を挙げている事例を紹介してゆきましょう。日経ビジネスオンライン(2008年3月21日)では、北越パッケージ株式会社が「営業部門にTOCによる業務改革を導入、1人当たり売上高が前年比10%以上増加」と報じています。北越パッケージでは、食品一次容器などに使われる紙器、美粧性を重視した各種ラミボード(Lami Board)や複写伝票などのビジネスフォーム、牛乳やジュースなどに使われる液体用紙容器などの製品を製造販売しています。

 北越パッケージのTOC活動は2005年7月にスタートを切りました。設立30周年を見据えた活動の目的は、もうけ続けられる会社として存続する体質を創る、経営そのもの「革新」を目標として掲げています。

 原油高騰による原紙やインクなどの原料の高騰、少子高齢化やし好の多様化による牛乳離れなど、北越パッケージをめぐるビジネス環境は決して楽観できるものではありません。このような逆風下でも、全社一丸となってTOCに取り組み、増収増益を維持しています。当初は生産部門を中心に効果を上げていましたが、3年目となる2007年度からは営業部門でも成果が顕著になり、従業員1人当たりの売上高は2007年度は約3億1000万円と、前年度に比べて10%以上の伸びとなる見込みとなっています。

 紙パックの牛乳容器は私たちの生活にとって大変身近なものです。身近であるが故に、その生産も多種多様なパッケージをタイムリーに供給することが求められています。製造工程は図2のように大きく印刷、成形、包装の3つに分かれていますが、大半の製造工程は自動化され、徹底的な省人化と合理化が行われています。印刷と成形の間の中間仕掛かりは、自動倉庫で保管できる分に限られ、非常に少ない仕掛かり数量で回転しています。

図2 牛乳容器工場の製造工程
図2 牛乳容器工場の製造工程

 TOCを導入してまず取り組んだのが、生産から出荷までのリードタイムの削減と製品在庫を削減する活動です。ミルクカートン部門ではこれまで生産効率を重視するために、受注量の多い大手ユーザー製品を一度に大量生産していました。1カ月分の受注をまとめて、最も大きなロットは3日連続操業、200万枚もまとめて印刷していたものを、1回当たり25万枚に減らしました。また受注量の少ない製品は顧客使用量の数カ月分をまとめて印刷していたものを、最大でも1カ月分とすることで製品在庫量を大きく削減できました。

 また同時にさまざまな「サバ読み」を排除するために「出荷ヒット率」という概念を導入しました。これはユーザー・品種ごとに本当に必要な製品を必要なときに生産し出荷した比率を表すものです。図3は生産され倉庫に入庫した製品のうち、80%が出荷されるまでの日数です。2005年7月のTOC開始時点では80%のロットが出荷されるまで12日間かかっていたものが、2006年3月では9日まで短縮できました。このサバは連載中でも説明したように「何があるか分からないから、早めにやっておこう」というサバであり、営業担当者それぞれが独自の読み方をしていました。そこでTOCの活動メンバーは営業担当者別に出荷ヒット率データを作成し、製品在庫を大きく減らし、顧客への補充リードタイムを短縮したのです。

図3 生産から80%出荷までの日数
図3 生産から80%出荷までの日数

「造る」の強みを生かした「ミルクカートン自動補充システム」

 在庫削減や発注業務の効率化は、北越パッケージの顧客である飲料メーカーでも大きな課題となっています。北越パッケージでは、こうした顧客にニーズに応えるために顧客の作業負担を軽減する「ミルクカートン自動補充システム」を構築しました(図4)。

 このシステムは、顧客から日々ミルクカートンの使用実績数量の連絡を受け、短くなった補充リードタイムと需要予測によって、必要な数だけをタイムリーに配送する仕組みです。顧客の在庫数量については、上限・下限を設定し、その間で数量をコントロールすることで安全数を確保し、包装資材の不足を回避します。これによって、顧客の発注作業を簡素化できただけでなく、包装資材納品の効率化によるコストダウン、在庫率低減による残資材の減少といった効果を発揮し、導入顧客からも、作業の簡素化などの導入メリットについて高い評価を受けています。

図4 ミルクカートン自動補充システムの概要
図4 ミルクカートン自動補充システムの概要

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る