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CADに振り回りまわされるのは、もうたくさん龍菜の3次元CAD活用相談室(3)(1/3 ページ)

どんなCADを使おうが設計プロセスは同じ。つまり、CADの操作より最終形状に至るまでの設計プロセスを知ることこそが重要なのだ

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そんなモデル、触りたくなーい!

 設計や製図に関する「変なこと」についての話(前回(1)(2))を聞くうちに、ツールである3次元CADやモデリング作業に振り回されているであろう彼女の姿が想像できた。

 定規と鉛筆を使っていたころには「道具の良しあしが設計の出来・不出来に影響する」などという議論はなかったはずだ。しかし今日の、ツールの性能が設計品質を決めてしまうような風潮の中では、設計におけるツール(3次元CAD)選択の議論が始まってしまう場合も多い。

ゆみ「3次元CADを使うことばかりに振り回されていたのでしょうか、私は」

龍菜「ツールが高機能化するほど、そんな傾向があるね」

ゆみ「でも、使うこと自体に努力が必要なことは確かです。仕方ないですよ」

龍菜「そうかな? 2次元CADを使い始めたころは、それほどでもなかったと思うけどな」

ゆみ「うーん、確かに。でも、それは手書きの図形も2次元CADの図形も“紙に描く”というイメージが似通っていたからじゃないでしょうか?」

龍菜「『2次元CADと3次元CADは感覚が違う』とでもいいたいのかな? 何が違うんだろう?」

ゆみ「2次元の図形じゃなくて、立体のデータを作らないといけないので……」

龍菜「だから難しい?」

ゆみ「そうですよ。操作も考え方も……、人によっていうことも違うし」

龍菜「苦労しているみたいだね」

 時間がないので取りあえず形だけ作っておいてくれればOKという人もいれば、モデリングの順番まで細かく指示をする人もいる――それは、どちらのいい分も正しいけれど、どちらも正しく理解していないのかもしれない。「また、そんな禅問答のようなことをいって!」と、ゆみさんに怒られてしまいそうだが!?

龍菜「例えば、他人の作ったモデルを変更する作業はかなり面倒くさいでしょう?」

ゆみ「さすが! お見通しですね。『嫌だ、触りたくなーい!』なんて思うモデルがたくさんありますよ」

龍菜「ゆみさんは、フィーチャベースで履歴のある3次元CADを使っているんだよね?」

ゆみ「はい。ヒストリー系のCADですね」

龍菜「それだったら、こんなモデルをよく見掛けるんじゃないのかな? これは以前、海外のサイトで配布されていたモデルをダウンロードしたものなんだけど(図1-1)」


図1-1 修正できないモデルの例(3次元モデル)

ゆみ「これって、変更できないモデルでしょう? 私の職場にはこのテのモデルがゴロゴロしています」

龍菜「なぜ、変更できないの? いや、“触りたくない”か」

ゆみ「このモデルのように複雑な断面スケッチになっていたり、フィーチャ同士に変な親子関係が付いていたりで、変更のことなど何も考えていない、『ただ形を作ればいいや』という感じのモデリングなんですから」


図 1-2 修正できないモデルの例 (スケッチ)

龍菜「断面スケッチが複雑(図1-2)になっているモデルは、確かに変更しにくいだろうな。でも、設計者に対して『将来の設計変更まで考えてモデリングしろ』というのは酷な話だよ」

ゆみ「えっ、意外ですね。龍菜さんも、以前の会社では携帯電話の機構設計をしていらっしゃったと聞いていたので、設計変更しやすいモデルを常に意識しながら作業していたのかと思っていました」

龍菜「まったく意識しないわけじゃないんだけど……。CADを使う段階まで作業が進んでいるということは、基本的な形状にかかわる設計作業は終わっている状態なんだ。細かな形状を決めていく作業はたくさん残っているにしても、すでに基本形状が決定されているのに、将来の変更まで予想してモデリングするのは難しいな」

ゆみ「それは、分かりますよ。でも、“変更しやすいモデルを作ろう!”と提唱されていませんでした?」

龍菜「うーん、誤解がないように説明すれば……、どんな設計者でも、形を決めていく途中で、先の先まで設計変更を見通してモデリングするというのは、“どこまでの変更範囲を考慮すればいいのか?”が不明確になるからさすがに無理がある、しかし変更しやすいモデルを作る方法は存在するということなんだ」

ゆみ「えっと、確かに、私が作業していても変更しやすいモデルとそうでないモデルがあるのですが……」

龍菜「ゆみさんが『変更しやすい』と感じたモデルは、“設計者が将来の変更を予想して”モデリングした結果だろうね?」

ゆみ「ええっと……、それは設計者にできないことだといいませんでしたか?」

龍菜「ぐふふっ、設計変更を予想するのは難しくても、変更しやすいモデルを作ることはできる、ということですわ」

ゆみ「また大阪弁になったよ(“ぐふふ”!?)」

 さて、“先々の設計変更を予想せずとも変更に耐え得るモデリングが可能”とは、いったいどういうことなのだろうか? 読者の皆さんも一緒に考えてみてほしい。

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