命を吹き込む構想設計!:デキるエンジニアのCAD設計(2)(3/3 ページ)
設計の概念を勘違いしているならば、CADを使う意味もなく、残業続きの日々となる。20年のキャリアを持つ技術士が、あなたをデキるエンジニアにすべく、設計の考え方を根底からたたき直す。(編集部)
ポンチ絵の使い分け
構想設計でやるべきことを列記します。
機能検証
機能構造を紙の上にラフなポンチ絵として表現します。この段階では、2次元のポンチ絵でイメージを徐々に膨らませます(図3)。
- さまざまな構造アイデアを列記します。
- 比較表を作成し、Q(品質)C(コスト)D(納期)E(環境)S(安全)を考慮して最適な構造を論理的に選択します。
例1〜例3(図3)の順に、より具体的に設計者の頭の中のイメージが膨らんできていることが分かります。定規を使わず、フリーハンドで描きましょう。線が曲がっても、まったく問題ありません。不必要な手間を掛けずに良いアイデアを考えることに集中しましょう。
構造検証
選択した構造で、構成部品まで分解してポンチ絵を描いて整理します。この段階では3次元の立体イメージのポンチ絵によって、より具体的に形状を意識します。
- 構成部品の機能形状を概略決定します。設計上の注意点も洗い出します。
- 構成部品から概算のコスト見積もりを行います。
- 構成部品から組み立て順序を決め、組立性や組立治具を検討します。
- 構成部品のうち、重要機能部品の要求する加工技術を把握します。
立体のポンチ絵は、3次元CADのようにきれいに描く必要はありません。構想段階では、まだまだイメージですから「こんな感じの部品が必要だなぁ」程度にラフに描かないと時間の無駄です。細かな面取り形状や加工上の工夫は、詳細設計でCADの上で実現させればよいのです。
機能検証あるいは構造検証で使用したポンチ絵は、立派な技術構想書です。この資料を基に関連部門を集めて、第1回の記事で紹介したデザインレビューができるのです。また、このポンチ絵の技術構想書は、「なぜこの構造を選択したのか?」などの経緯もよく分かり、次世代機種の構想時に参考となるナレッジマネジメント資料にも使えます。
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このように、手書きの資料はCADで検討するより短期間で作成でき、かつ機動的でコスト把握もできます。立体イメージがあるので設計部門以外の担当者でも理解しやすく、デザインレビューではより建設的な意見が出ることも期待されます。
CADでほぼ完成状態になった後のデザインレビューでは、設計者は自分自身の設計にケチをつけられることを嫌います。そのため、他部門からの指摘をいかに退けようか、言い訳ばかりを考え、押し問答となり建設的なデザインレビューができません。
ところが、構想設計をラフなポンチ絵とすることで、設計者は、ある程度大きな変更があっても、まだ実際にCADで詳細設計をしていないため精神的なプレッシャーがありません。その結果、設計者自身もデザインレビューの中でより建設的な意見を述べ、他部門の意見も受け入れることができるのです。
そう、設計者の精神的な余裕こそが、良質な遺伝子を作り上げるポイントなのです。そのためにも構想設計はポンチ絵を使って、イメージ先行の検討を行わなければいけないのです。
◇
次回は、構想設計を終えて、詳細設計の中のツールとしてCADをどう利用するかについて解説します。(次回に続く)
◎併せて読みたい「CAD」関連ホワイトペーパー:
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