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Blackfin、“柔軟性”によるマルチプラットフォーム戦略で差別化組み込み企業最前線 − アナログ・デバイセズ −(2/2 ページ)

デジタルAV機器の隆盛に歩調を合わせ、アナログ・デバイセズはDSPファミリ「Blackfin」を成長させてきた。マルチフォーマットでリッチなAVコンテンツがデバイス間を行き交う時代に入り、DSPへの性能要求は増す。それでも、Blackfinの本領であるプログラマブル性を徹底して維持し、柔軟性と高性能の両立を図っていく考えだ。

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車載、携帯へのアプローチも強化

 あらゆるフォーマット(コーデック)のAVコンテンツが機器間を自由に行き来するコンバージェンス時代では、「iPodの音楽データも家に帰ればホームシアターで聴け、クルマに乗れば車載システムで聴けるのが、ごく当たり前になる」(ウィラー氏)。そのためADIは、ホーム(据置型)だけではなく、オートモーティブやモバイルにも力を入れ、Blackfinファミリを拡充している。

 2006年末に発表した新製品「ADSP-BF54x」には、車載用途に特化して車内LANインターフェイスのCAN、MOST(注)を標準で備えるモデル(ADSP-BF549)もある。ウィラー氏は「クルマは、製品企画から出荷後の保守期間まで含めるとライクサイクルが十数年ある。これから13年間、技術がどのように変わるか、誰にも予測できない。だからこそ、オートモーティブでもBlackfinのプログラマブル性が生きる」と話す。

※注
CAN(Controller Area Network)は汎用の車内LAN、MOST(Media Oriented Systems Transport)は光ファイバを用いた情報系の車内LAN。

 一方、2007年3月にリリースされた「ADSP-BF52x」は、Blackfin初の90nmプロセス製品であり、携帯メディアプレーヤを中心としたモバイルアプリケーションを主に狙ったもの。ダイナミック・パワー・マネジメント機能をさらに強化し、「低消費電力版」「超低消費電力版」という2シリーズを用意する。超低消費電力版は、250MHz動作時で0.16mW/MHzというスペックを達成している。

 「BF52xは、モバイル機器はもちろん、消費電力に対する要求が厳しい据え置き型でも通用するシリーズ。動作周波数も300MHzから600MHzまで対応しているので(超低消費電力版は最大400MHz)、機器メーカーは、1つの商品シリーズの中でローエンドからハイエンドまで共通してBF52xを採用できるだろう」(ウィラー氏)。

「マルチコア」「高性能タイプ」、そして携帯機器向け「低消費電力タイプ」という3つのプロダクトラインで進化を続けるBlackfin
図2 「マルチコア」「高性能タイプ」、そして携帯機器向け「低消費電力タイプ」という3つのプロダクトラインで進化を続けるBlackfin

 また、BF54x/BF52xとも、「Blackfin Lockboxセキュア・テクノロジ」と呼ぶ独自のセキュリティ機能を搭載している点が目を引く。秘密鍵などを格納できるライトワンスのメモリ領域を用意したり、Blackfinに搭載したソフトウェアの暗号化を可能にしたものだ。最近のデジタルAV機器で必須となるデジタル著作権管理(DRM)技術との連携も作り込みやすくなるという。

 あらゆる分野のデジタルAV機器をカバーできるラインアップがそろってきたところで気になるのは、BlackfinのHD(High Definition)映像への対応。特に日本市場においては、デジタルAV機器で扱う映像がSD(Standard Definition)からHD、それも1080i/pの“フルHD”へ移り変わっている。Blackfinを含めDSP汎用品はどれも、現状では、HDの域にまでパフォーマンスが達していないが、前述したTIのDaVinciは、HD対応版が2007年中にもサンプル出荷される見通しだ。

 これに対して、ウィラー氏は「他社が対応を始めているように、HDはビデオ規格における次のステップになっている。弊社もHDに注目し、HD対応が弊社のロードマップに合うかどうか引き続き考えていく」と話している。

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