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人海戦術よりスマートなSoC開発はないのか?SoC設計にモデリング手法を導入する(1)(3/3 ページ)

組み込み開発の主流となったSoC。そこではソフトウェアとハードウェアを1つのシステムとして考える設計が重要となる

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「UML for SoC」OMG標準プロファイルとして策定

 オブジェクト指向開発には、C++言語だけでは不十分です。というのは、C++言語のソースコードをほかの人が参照し理解するのは非常に困難だからです。そこでUMLのような誰にでも理解できるドキュメントが必要になってきます。しかしUMLはあくまでも分かりやすい表現にすぎず、どのような表現を行うか、どのように開発に適用するかが重要です。

 またUMLはソフトウェア開発用に考えられた言語であり、ハードウェア(SoC)開発に適しているわけではありません。そこでハードウェア(SoC)開発に適した表現が必要になってきます。その問題を解決するために2002年11月に、富士通、日本ラショナル(現在の日本IBM)とキャッツの3社で「USoCF」(UML for SoC forum)を立ち上げました。その後数社の方々に参加していただき、SoC開発にUMLをどう役立てるのか議論を行いました。そしてUMLをSoC開発に適用するための「SoC向けプロファイル」を策定し、2004年6月にOMG(Object Management Group)に提案を行いました。

 USoCFはOMGに提案を行ったことで活動を終了し、その後はUMTPと連携をとりつつ富士通がOMGにおける標準化のフォローを行いました。OMGに提案後は海外のメンバーも加わり、「SoC向けプロファイル」の内容もよりブラッシュアップされました。このような標準化作業は通常もっと長くかかるのですが、2006年4月に正式な標準として認められ、マイナーアップデートを経て「v1.0.1」が2006年8月にリリースされました。以下にUMLfor SoCプロファイルを記します。

図
UMLfor SoCプロファイル
図3 UMLfor SoCプロファイル

UMTP「SoC分科会」の活動

 USoCFは、UML for SoCの標準化を達成して開発を終了しました。しかし「UML(UML for SoC)」を策定したからといって、SoC開発にUMLが使用できるようになったわけではありません。そこで、USoCFの活動後、UMTPモデル共有部会のSoC分科会として活動を継続しています。

 主な活動目的は、SoC設計にUMLを利用する方法を明確にすることです。そのためにはUMLの改良やプロセス定義などが必要になります。SoC分科会は2005年度4月に発足し、2005年度は10回程度のワーキンググループを開催し、デジタルカメラを題材にモデリングを行ってきました。会員が増加した現在、3つのグループ

  • システム要求分析グループ
  • ハード/ソフト分割グループ
  • ハード設計グループ

に分かれて活動を行っています。

SoC分科会の活動内容
図4 SoC分科会の活動内容

次回より紹介する内容について

 次回からは、SoC分科会のグループごとに、研究成果を紹介します。

 第2回は、第2回は、SoCの要求分析にUMLが活用できないかをテーマに検討している「システム要求分析グループ」の成果を紹介します。

 第3回は、裏付けのあるソフト/ハードの分割をテーマとしている「ハード/ソフト分割グループ」の成果を紹介します。

 第4回は、あいまいな仕様を明確にして、さらに検証項目リストを生成することをテーマとしている「ハード設計グループ」の成果を紹介します。

 以前、UMTPの組み込み分科会の成果を紹介した際に「UMLはアプリケーション層のみで使用し、ハードウェア部に近いドライバ層では使用しない」という内容を紹介しました。有効性のある部分のみに使用する考え方はSoCでもまったく同じで、例えば

  • 「SoCの要求定義」に使用する
  • 「タイミングを考慮しないアルゴリズム部分」に使用する
  • 「検証項目リスト」に使用する

など各グループともUMLを使用して優位性があると思われる部分に着目してUMLの活用方法を研究しています。

最後に

 UMLからSoC開発を行うという文化はまだありません。そこには解決しなければならない問題があり、それを1つ1つ解決していくのは、新しい文化をつくっていくことで、いわば挑戦です。ソフトウェア開発の世界でUMLは定着しつつありますが、SoC開発ではこれからです。技術はお金で買うものではなく、自分たちの手で作っていくものです。新しい開発プロセス「UMLからのSoC開発」に新しい一歩を踏み出しませんか。ご一緒に……。(次回に続く)


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