京ぽんに採用されたインメモリDB「ENCIRQ DFF」:組み込みデータベースカタログ(3)(3/3 ページ)
組み込みデータベースカタログ第3回は、エンサークのENCIRQ Data Foundation Framework(以下DFF)を取り上げる。お話を伺ったのは、同社代表取締役の湯本公氏とアプリケーション・エンジニアリング マネージャの吉原忠史氏である。
アプリケーションへの適用
現状では、DFFの採用事例は全世界で7〜8件。そのうちサービスインしているものが4件ある。単に数値だけを見るとそう多くはない。ところが、個々の事例を見ると巨大なものが多い。
例えばアメリカでは、Delphiが開発したXMラジオ放送コンソールに採用されている。このシステムは多くのアプリケーションで構成されており、当初はそのうちの1つだけにDFFを導入する予定だったという。ところが実際に使ってみると非常に効果的であると評価され、ほかのアプリケーションも次々にDFFを使うように設計変更され、最終的に29テーブルをDFFで管理することになったという。
日本では、京セラのPHS端末(いわゆる「京ぽん」)の電話帳などでDFFが利用されている。京セラは、電話帳データの保存方法(データをすべてフラッシュメモリに置くのか、一部をメモリに置くのかなど)を数十通り試し、最終的に消費電力を数割削減できたという。アダプタを介してデバイスを管理するというDFFの特徴が生かされた事例といえるだろう。Delphiのコンソールと京ぽんに関しては、後継機種がすでに発売されている。どちらでも継続してDFFが利用されており、トータルの出荷台数は京ぽんだけでも100万台を軽く超える。組み込みマーケットとしては無視できない規模であろう。
注目は車載システム
さらに今後は、ストリームベースを生かしたアプリケーションへの展開も考えられている。ここでエンサークが注目しているのは自動車業界だという。最近は自動車の電子化が非常に進んでおり、カーナビなどのテレマティクスのみならず、エンジンやアクセル、ブレーキ、ハンドル操作、サスペンションなどの制御系もCANなどでネットワーク化されている。ただしこれまでは、制御系のデータは一時的に利用されるだけで、その後は放棄される運命にあった。ここにDFFを導入することで、ストリームとしてやって来る制御系のデータを解析可能になるという。例えばサスペンションや走行速度の情報をGPSやMAPのデータとJOINすることで、運転のプロファイリングが可能になる。このプロファイルを蓄積することで、運転の荒さに応じて保険料率を変えたり、予防メンテナンスの一環として荒い運転をする人には早めにメンテナンスに入るように指示するなど、まったく新しいサービスが可能になる。トラック業界などではすでに重要な問題になっているそうで、結果として自動車メーカーなどから注目を集めているそうだ。
なお、近々に発表される予定の新バージョンでは、Storage Managerと呼ばれる新しい機能が搭載される。ストレージに直接アクセスするのか、メモリに読み込むのか、それともデータはストレージ側に残したままメモリをキャッシュとして使うのかなどを、テーブル単位で選択できる仕組みである。長期的には、JavaやC++などへの対応も考えているようだ。
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