拠点との同期に強いモバイルDB「Ultra Light」:組み込みデータベースカタログ(2)(3/3 ページ)
組み込みデータベースカタログ第2回は、アイエニウェア・ソリューションズ(以下アイエニウェア)のUltra Lightを取り上げる。お話を伺ったのは、同社エンジニアリング統括部 システムエンジニアチーム シニアコンサルタントの森脇大悟氏である。
競合はフラットファイル
ASAないしUltra LightとMobile Linkの組み合わせは、携帯機器向けデータベースとしてはすでにかなり大きなシェアを握っている。ワールドワイドでのデータではあるが「2001年におけるMobile DBのマーケットでは、SQL Anywhere Studioが73%のシェアを握っています」(森脇氏)とのことで、比類ないソリューションであることは間違いない(注)。
では競合製品は? と聞くと、特にUltra Lightに関しては「フラットファイル」が最大の競合だという答えが返ってきた。
ここ1〜2年で、現場のレベルではデータベースのニーズ(というよりも必要性)がきちんと理解されてきたという。前述の暗号化(例えば携帯機器の紛失や盗難といった場合に、中身をファイルシステムレベルで盗まれることへの対策)もさることながら、トランザクションの保証を行うには、やはりファイルシステムをそのまま使うのは難しいという認識が一般化してきたのだそうだ(もちろんUltra Lightもトランザクションをサポートしている)。それでも問題になるのは、開発方針を決めて上に稟議を上げた段階で、「なぜフラットファイルでは駄目なのか?」という議論が再燃するのだという。「もう1〜2年はフラットファイルが最大の競合でしょう」(森脇氏)というのが現場の状況なのだそうだ。ただ、2005年ごろから組み込み向けのデータベース製品が増えてきたことで、次第に理解されやすくなってきているという。
ちなみに、競合する組み込み向けデータベース製品が増えてくると、当然どうやって差別化を図ってゆくかという話になる。アイエニウェアの場合はMobile Linkによる同期ソリューションが1つの武器であるが、加えて「柔軟な対応」が強みになっているとしている。例えば、現時点ではカタログ上はARMベースのWindows CEのみがサポート対象だが、日本ではSHやMIPSを使いたいという要望が多いという。こうしたケースに対しては、個別対応という形でそれぞれのプロセッサに対応した製品をリリースするという。
同社は、単なるサポートだけでなく設計段階からのコンサルテーションも行っている。といっても、データベース自体については“管理者要らず”のうたい文句にたがわず、実のところあまりやることがないらしい。
アイエニウェア製品の場合、データ同期に関する設計がキモになってくるのだという。出来合いのシステムに後から同期メカニズムを追加しても、うまくいかないケースが多いという。同期を行うには独特の注意点があり、同期を前提に設計することが重要となる。だが、これがなかなか浸透しない。そこで、プロジェクトの早期から「同期に対するコンサルテーションをさせてほしい」とむしろお願いする形で、設計レベルからかかわっているという。
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