燃料集合体を「開閉」して原子炉の反応度を制御、新方式を発明:メカ設計ニュース
Blossom Energyは、原子炉の燃料集合体を機械的に開閉することで反応度を制御する新方式を発明した。CADで設計した形状を基に中性子輸送解析を実施し、燃料の総量を変えることなく、反応度を変化させて未臨界から臨界を経て超臨界に至ることを計算上で確認した。
Blossom Energyは2026年10月28日、原子炉の燃料集合体を機械的に開閉することで反応度を制御する新方式を発明し、同年8月25日に米国特許商標庁へ仮出願を行ったと発表した。
CADで設計した形状を基に中性子輸送解析を実施し、燃料の総量を変えずに集合体の開閉によって反応度を調整できることを計算上で確認したという。
一般的な発電用原子炉では、中性子を吸収する制御棒を炉心に出し入れすることで反応度を調整する。一方、小型炉や宇宙用原子炉では、中性子を反射する面と吸収する面を持つ円柱状の制御ドラムを炉心の周囲で回転させる方式も用いられている。いずれも燃料は固定したまま、吸収材や反射材を動かして反応度を調整する仕組みとなる。
制御棒の多くは緊急時に重力を利用して落下させるため、微小重力の宇宙空間や揺動する船舶では設計上の前提が変わってしまう。また、重力に依存しない制御ドラム方式でも、複数のドラムを駆動する機構や緊急時にドラムを回転させる機構が必要となる。
今回発明した新方式は炉心を構成する複数の燃料要素の配置や、燃料集合体としての形状を可逆的に変化させることで反応度を制御するものだ。燃料要素の配置を変えることによって、中性子の減速や漏れ方が変化する仕組みを利用している。
原理の確認に当たっては、8個の燃料要素を歯車状に組み合わせ、1つの駆動で連動して開閉する形状を採用した。この構造では、燃料の総量を一定に保ちながら、燃料要素の配置を変化させる。なお、燃料要素の形状や数、動かし方はこの構成に限定せず、原子炉の用途に応じて選択することを想定している。
新方式の検証には、オープンソースのモンテカルロ計算コード「OpenMC」と「DAGMC」を組み合わせて構築した中性子輸送解析環境を使用した。この環境では、可動部を含む複雑なCAD形状を、近似的な形状に置き換えることなく計算モデルとして扱えるという。
解析の結果、燃料の総量を変えずに、燃料集合体の開閉の度合いだけで反応度を変化させ、未臨界から臨界を経て超臨界に至ることを計算上で確認した。実際の燃料に近い装荷量を想定した計算でも、同様の効果が得られたという。
同社は、今回構築した解析環境を今後の遮蔽設計や臨界安全評価にも活用する考えだ。また、新方式は黒鉛減速材とヘリウム冷却を用いる同社の高温ガス炉(HTGR)の基本構成を前提に検討したもので、日本原子力研究開発機構(JAEA)の高温工学試験研究炉(HTTR)の運転実績や、その研究開発に携わった同社創業メンバーの知見を生かして設計を進める。
将来的には、宇宙空間や月面、船舶、深海など、重力条件や機器の姿勢が地上と異なる環境での応用を視野に入れる。宇宙用途では、燃料要素を対称的に動かすことで反作用トルクや角運動量の相殺を図り、宇宙機の姿勢制御への影響を抑えることを目指す。一方、海洋用途では、船体の傾斜や揺動に依存しない臨界制御方式の実現を目標としている。
今後は、実機に適した燃料要素の形状や駆動方式の検討、温度特性を含む炉心設計の最適化、実際の燃料装荷量に基づく設計点の確定を進める。2026年11月に米国アリゾナ州フェニックスで開催される米国原子力学会の冬季大会では、今回発明した反応度制御方式の原理検証について発表する予定だ。技術論文「Geometric Reactivity Control by Mechanical Fuel Rearrangement in HTGR Microreactors」は、同大会の技術セッションに採択されている。
また、学会発表で得られる知見を査読付き学術誌への論文投稿に反映するとともに、今回の仮出願を基に本出願を行う方針だ。
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