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溶解度を基にした晶析の設計計算:はじめての化学工学(23)(1/2 ページ)

今回は、溶解度データを使って結晶の析出量と収率を計算し、連続式の晶析装置に必要なスラリーの保持容積を試算するまでを解説します。

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析出量を決める物質収支

 晶析において、設計計算の出発点となるのが溶解度です。溶液を冷却して溶解度が下がると、溶けきれなくなった分が結晶として析出します。冷却前の溶解量と冷却後の母液に残る量の差を物質収支から求めます。

 溶解度は、単位の種類に気を付けなければなりません。本記事で扱う単位は、溶媒1kgに溶ける溶質の質量[kg/kg-溶媒]とします。例えば硝酸カリウムの60℃での溶解度が110kg/100kg-水の場合、水100kgに硝酸カリウム110kgが溶けることを表します。溶液全体は210kgなので、溶液に占める溶質の質量割合は約52.4%です。

 ここで考えるのは、飽和溶液に対する晶析の物質収支式です。析出量は仕込んだ溶質と母液に残る溶質の差で表せます。図1の式は、溶質が反応せず、溶媒のみが蒸発し、なおかつ結晶が水和水を取り込まない場合を扱っています。水和物ができる系では、結晶に移る水も収支に入れる必要があります。蒸発がなければ、溶解度の差に最初の溶媒量を掛けるのみです。

図1.析出量の物質収支式。P:結晶の析出量[kg]、W:初期の溶媒量[kg]、c<sub>1</sub>:冷却前の溶解度[kg/kg-溶媒]、c<sub>2</sub>:冷却後の溶解度[kg/kg-溶媒]、E:初期溶媒量に対する蒸発割合[-]
図1.析出量の物質収支式。P:結晶の析出量[kg]、W:初期の溶媒量[kg]、c1:冷却前の溶解度[kg/kg-溶媒]、c2:冷却後の溶解度[kg/kg-溶媒]、E:初期溶媒量に対する蒸発割合[-]

 注意点として、この物質収支式は冷却前の溶液も飽和している場合の式です。不飽和の原料液に、温度だけを見て飽和溶解度を当てはめると、冷却前の溶質量を多く見積もってしまいます。

冷却晶析の計算例

 硝酸カリウム(KNO3)の水溶液を使って計算してみます。60℃で飽和した溶液100kgを、蒸発させずに20℃まで冷却します。冷却後の母液は飽和しているものとします。

表1. 硝酸カリウムの水に対する溶解度(Fertilizers Europe 2015年版を参照 Fertilizers Europe
Guidance for the Storage, Handling and Transportation of Solid Mineral Fertilizers),表1. 硝酸カリウムの水に対する溶解度(Fertilizers Europe 2015年版を参照:Fertilizers Europe, Guidance for the Storage, Handling and Transportation of Solid Mineral Fertilizers)

 まず仕込み溶液の内訳を求めます。60℃の溶解度を110kg/100kg-水とすると、溶媒に対する硝酸カリウムの比は1.10です。飽和溶液100kgの場合、水は47.6kg、溶質は52.4kgとなります。

 20℃の溶解度を31.6kg/100kg-水とすると、溶媒に対する比は0.316です。図1の式に、水の量と前後の溶解度を入れると、析出量は37.3kgになります。この析出量を仕込んだ溶質52.4kgで割ると、収率は約71%です。

 別の見方をすると、水47.6kgに対して、20℃ではその0.316倍、約15kgが溶けたまま残ります。最初の溶質52.4kgからこの量を引いても析出量の計算結果は同じです。母液は約62.7kgです(図2)。

図2.60℃の飽和溶液100kgを20℃まで冷却した場合の成分の内訳
図2.60℃の飽和溶液100kgを20℃まで冷却した場合の成分の内訳

 図3では、各温度の飽和濃度を比較しています。同じ仕込み量で40℃まで冷却する場合、溶解度が63.9kg/100kg-水のため析出量は約22kg、収率は約42%です。この例では、どこまで冷やせるかによって計算上の収率が変わります。ただし冷却の到達温度を考えるときには、用役の種類(冷却水、冷凍水、ブライン溶液)や条件も確認しなければなりません。

図3.硝酸カリウム水溶液の各温度における飽和濃度
図3.硝酸カリウム水溶液の各温度における飽和濃度

 今回の計算には、母液の付着や、ろ過/洗浄で生じる回収損失は含めていません。損失が生じれば、実際の回収量はこの計算値より少なくなります。

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