インテルCTOが見据える次のコンピューティングの波、NVIDIAの優位は崩れるか:組み込み開発 インタビュー(1/2 ページ)
インテル米国本社 CTOのプシュカー・ラナーデ氏が合同取材に応じた。同氏は、量子コンピューティングやニューロモルフィックコンピューティングなど同社が取り組む新技術について紹介するとともに、半導体業界におけるインテルの現在地をどのように捉えているのかなどについてコメントした。
インテルは2026年10月7日、「インテル株式会社 設立50周年記念式典」の開催に合わせて、東京都内でインテル米国本社 CTO(最高技術責任者)のプシュカー・ラナーデ(Pushkar Ranade)氏の合同取材に応じた。ラナーデ氏は、量子コンピューティングやニューロモルフィックコンピューティングなど同社が取り組む新技術について紹介するとともに、半導体業界におけるインテルの現在地をどのように捉えているのかなどについてコメントした。
「専用設計シリコン」「AIアクセラレータ」という2つの新たな事業
ラナーデ氏は、インテルの技術戦略および特別技術プロジェクトを統括するとともに、量子コンピューティング、ニューロモルフィックコンピューティング、フォトニクス、新材料などの先端技術の開発を指揮するCTOである。また、インテルの半導体製造プロセスの技術開発にも長く携わってきた。
そのラナーデ氏が最初に言及したのが、インテルの半導体製造部門であるインテルファウンドリーについてだ。「インテルは過去50〜60年主要なトランジスタ技術の革新の最前線に立ってきたし、現在もその伝統を受け継いでいる。最新プロセスの『18A』を用いた製品を多数出荷しており、今後数カ月のうちに18Aを用いた製品はさらに増えていくだろう。これと並行して、半導体スケーリング則に沿った次世代プロセスである『14A』の開発も進めている。14Aの開発は順調に進んでおり、2028〜2029年には量産に適用する準備が整う」(同氏)。
また、インテルファウンドリーでは、自社製品の生産にとどまらず、受託生産を行ういわゆるファウンドリー事業を拡大していくことも期待されている。このファウンドリー事業における新たな軸となっているのが、顧客からの要望に合わせてAIアクセラレータなどをカスタム設計する専用設計シリコン(purpose-built silicon)事業である。その強みとなっているのは、インテルファウンドリーのよる最先端の半導体製造技術である。
この専用設計シリコン事業で顧客のAIアクセラレータを設計/製造しているインテルだが、自社製品としてのAIアクセラレータの開発にも注力している。実際に、同社は2026年10月13日、これまで「Crescent Island」というコードネームで呼ばれていたAIアクセラレータ「Intel GPU D-シリーズ」を正式発表している。
ラナーデ氏は「このように、専用設計シリコン、AIアクセラレータという2つの新たな事業が加わったことになる」と述べる。
量子コンピューティングとニューロモルフィックコンピューティング
現在、コンピューティング技術の進化のけん引役となっているのはAIだ。NVIDIAのGPUを筆頭に、高帯域メモリやネットワーク、ストレージなどの技術開発はAIにフォーカスした形で進められている。ラナーデ氏は「現在のAIを中核とするコンピューティングの波はしばらく続くだろう。しかし、コンピューティングの歴史を振り返ると、およそ10年ごとにパラダイムシフトが起こっている。CTOとして、インテルを次のコンピューティングの波に備えさせるために、幾つかのプロジェクトに取り組んでいる」と説明する。
このプロジェクトのうち最初に挙げたのが量子コンピューティングである。量子コンピューティングにはさまざまな方式があるが、インテルは現行のシリコン半導体製造技術を生かすことができるスピン量子ビット方式を採用している。現在開発している量子チップは第4世代まで進展しており、設立50周年記念式典では18Aのプロセスを用いて量子チップを作り込んだ300mmウエハーを公開している(注:写真撮影は禁止だった)。
また、スピン量子ビット方式の量子チップの開発では日立製作所との協業が発表されている。日本政府による支援も受けており「日本と日立、インテルの間にはスバ来意協力関係が築かれている」(ラナーデ氏)という。
もう1つの次世代コンピューティング技術となるのが、人の脳を模倣するニューロモルフィックコンピューティングである。従来のコンピューティング技術は、クロックサイクルが固定されており、演算はその固定クロックサイクルに同期して行われる。このクロックサイクルが高速化することで、コンピュータの処理速度が速くなり高性能化してきた。
一方、人間の脳は、脳の各部は必要な時だけオンになる非同期コンピューティングと呼ばれる仕組みで動作する。ニューロモルフィックコンピューティングはこの人間の脳に似た動作をするため、固定クロックサイクルで動作し続ける従来のコンピューティング技術に比べて消費電力を劇的に削減できる。
ラナーデ氏は「今日、AIインフラの構築において、NVIDIAの新しいGPUは毎年800W、1000W、1200W、1500Wと消費電力を増加している。そのためデータセンターの隣に発電所を建設する必要が出てきている。この状況はしばらく続くだろうが、おそらく持続可能なものではない」と強調する。
現在、インテルのニューロモルフィックコンピューティングは第3世代まで進展しており、スピン量子ビット方式の量子コンピューティングと同様に18Aプロセスを用いてテストチップが製造されているという。
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