「AIを使う」を目的にしない、ヤンマー建機と三菱マテリアルの現場発DX:ファクトリーイノベーション Week2026【秋】(2/3 ページ)
「ファクトリーイノベーションWeeK2026秋」において、特別講演「【DX推進・普及】現場発で組織を変える〜人とAIが実現する全社変革〜」が行われ、ヤンマー建機と三菱マテリアルが、それぞれのDXとAI活用について紹介した。本稿では、両社の講演を抜粋して紹介する。
熟練者の暗黙知を取り込む「職人インザループ」
データを集め、可視化する環境を整えたヤンマー建機が次に進めているのがAI活用だ。
「どのAIを使うかより、どんな業務に使って、どのように変えるか。AIツールの議論になってしまわないように『業務をどう変えたいのか』というのをメンバーには聞くようにしている」(田中氏)
その考え方を象徴するのが、生産順序の効率化だ。同社では2本の生産ラインで0.5〜10t(トン)クラスの建設機械を混流生産しており、サイズが約20倍も異なる製品を同じラインに流している。従来は2人の熟練者が毎日3〜4時間をかけて生産順序を決めていた。
そこで熟練者に判断基準を書き出してもらったが、「大型を生産する前にキャビン仕様を置かない」など、言語化できたルールは少なかった。それらをRAG(検索拡張生成)に取り込み、AIエージェントに生産順序を作成させたものの、「最初は30〜40点の出来」程度だったという。
そこでAIが作成した順序を熟練者に見せ、「ここが違う」と修正してもらい、その内容を再びRAGに戻す仕組みを構築した。
「職人たちは、自らが『こういうノウハウでやっている』とはうまく伝えられない。ただ、彼らはやったことに対する指摘は的確だ」(田中氏)
つまり、熟練者に暗黙知を一から言語化してもらうのではなく、AIが出した答えを「添削」してもらい、そこから知識を取り込んでいく。田中氏は、この仕組みをヒューマン・イン・ザ・ループ(Human in the roop)になぞらえて「職人インザループ」と呼ぶ。
「AIは、ベテランの知識を組織の力に変えるものではないか、と信じている」(田中氏)
三菱マテリアルは「循環×AI×人財」でDX推進
続いて登壇した三菱マテリアルの端山氏は、「われわれは今、『循環』という領域に力を入れている。そして『AI』は切っても切れない関係になっている。そして『人財』。これらを掛け合わせていくことが将来の姿になる」と説明した。
同社は2026年度からの中期経営戦略で「資源循環ビジネスで未来を創る企業」を基本方針に掲げる。その変革をデジタル面から支えるのが、2020年度から進める「MMDX(Mitsubishi Materials Digital Business Transformation)」だ。
「われわれは、あえてBusinessという言葉を間に入れている。そこにはDXで事業変革を進めていきたいという思いがあり、ビジネス部門と一緒になって展開していくという意味も込めている」(端山氏)
MMDXでは既存事業を強化する「今を強くする」、新たなビジネスを生み出す「明日を作る」、そしてそれらを支える人材育成を柱に据える。DXをデジタル部門だけの仕事にせず、事業部門と一体となって進めることを重視している。
2026年度からは「MMDX 2.1」へアップデートし、全社共通DXや基幹システムのモダナイゼーション、セキュリティ、内製化、データ活用なども強化する。
「外部ばかりに頼るのではなくて、自分たちでできることは、自分たちでとにかくやっていく方向に舵を切っている」(端山氏)
1工場で月間50億件、AI活用を支えるデータ基盤
AI活用の前提となるデータ基盤の整備も進める。ある工場では月間約50億件のIoT(モノのインターネット)データが発生しており、タイムスタンプなどをそろえて収集している。
「IoTのデータは1秒間に何件も出る設備もあるが、タイムスタンプが間違っていると何の使い道もなくなってしまう」(端山氏)
集めたデータはサイネージや予測保全、遠隔監視などへの利用を始めている。「これらにAIを活用していきたい。まだまだ集めることが中心で、活用はこれから」と端山氏は見据える。
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